夏は夕立ちの季節。近年は“ゲリラ豪雨”といわれるような短時間に激しい雨の降る現象も増えています。そんなときに心配なのが雷。家の周囲で落雷があると、停電の可能性のほか、家電など電化製品に影響が出る場合もあります。雷の発生が増える夏だからこそ、対策しておきたい普段からの備えや停電時の家電製品の取り扱いについて、気象予報士の資格を持つ編集部Mが紹介します。
雷発生のメカニズムを知る
そもそも雷はどのように発生するかご存知でしょうか? 実は雷の元は静電気。
入道雲などの強い上昇気流により上空へと運ばれた水蒸気が雲を作り、その雲の中で氷の粒同士の摩擦が起こります。これによって発生した静電気が雲の中に溜まり、雷雲に変化。雷曇の中ではプラスの電気を持った氷の粒が上の方へ、マイナスの電気を持った氷の粒は雲の下の方へ溜まり、まるで巨大な磁石のように引き合います。
さらに、そのマイナスの電気につられて、地表にはプラスの電気が集合。雲の中のマイナスの電気と、地表のプラスの電気とが中和しようとして起こるのが落雷です。落雷時の電圧は200万~10億ボルト、電流は1千~20万アンペア、ときに50万アンペアにも達するといいます。
落雷で電化製品が壊れる仕組みって?
落雷によって家電が故障するのは、「雷サージ」と呼ばれる現象が原因です。雷サージとは、落雷時に一時的に発生する過剰な電圧・電流のことで、3つの種類があります。
地上の施設などの対象物に直接落雷した場合に生じる「直撃雷サージ」(家電は間違いなく故障するレベル。建物にも甚大な被害が出ると予想される)と、雷が落ちた時に周辺にある電線や電話線、アンテナなどに発生する大きな電圧が誘導電流を起こすことで生じる「誘導雷サージ」、そして建物の避雷針や地面などへの直撃雷が地面を伝い、アース線から建物へ逆流する「逆流雷サージ」です。
このうち、被害が多いとされるのが「誘導雷サージ」と「逆流雷サージ」。これらは落雷地点を中心に数キロメートルの範囲内に発生。電線や地面を伝わり、広範囲にわたって家庭の電化製品を故障させてしまいます。
では、「雷サージ」が伝わる電線とは具体的にどんなものか見ていきましょう。まずは電源線。いわゆるコンセントにつながる線で、ビルトインの電化製品だと壁の中で直接つながっていたりもします。
次にアンテナ線やCATVケーブル、電話線、冷蔵庫や洗濯機などのアース線、そして最後にインターネットをつなげるためのLANケーブル。このうち、電源線とアンテナ線から侵入してくる割合が半数以上とみられています。最近では、パソコンやテレビなどインターネット回線とつながったネットワーク家電が増えてきており、互いにさまざまな配線で結ばれています。このため雷の被害でインターネット接続ができない、電源が入らないといったトラブルが発生する可能性も高まっているといえるでしょう。
普段からできる雷対策とは
こうした雷サージによる電化製品の不具合を防ぐ方法はいくつかあります。まず思いつくのは、雷が近づいてくる前に電源やアンテナ線を抜くこと。ただし、この方法は実際に雷サージによる感電リスクもありますし、雷を予測してその都度抜き差しをするのは現実的じゃないですよね。ブレーカーを落とすのも有効ですが、家全体の電力供給が止まってしまうためなかなか難しいという人もいるでしょう。
そこで試したいのが雷サージをブロックする機能付きの電源タップ。過剰な電圧を吸収して家電の故障を防ぎます。テレビやレコーダーなどにはアンテナ線用のタップもあり、これらを取り付けることで、完全ではないものの、被害に遭う確率を軽減できます。
また、万が一のときのために保険への加入もおすすめです。落雷は天災にあたるため、家電が被害にあっても修理は有償になります。突然の出費は家計的にも大ダメージに。しかし、保険があれば修理や買い替えの費用を補うことができます。落雷被害は火災保険の中に含まれる場合が多いので、自分の契約している保険を再度見直してみましょう。
雷が鳴り始めたらどうする?
雷が鳴りはじめたら、すでに雷サージがいつ発生してもおかしくない危険な状態。先ほども述べましたが、家電やパソコンの電源には触れないでください。特に電話機やファクス、ネットワーク家電など複数のケーブルで接続されている通信機器は被害を受けやすくなっているので要注意。慌ててコンセントを抜くのは危険行為です。
万が一、停電してしまったら?
落雷で停電が起こってしまったら、まずは家電製品の電源プラグをコンセントから抜いておきましょう。これは、電源につないでいる家電製品が一斉に運転を再開してヒューズやブレーカーが飛ぶ恐れがあるため。特にエアコンや電子レンジなど電力を多く使用する機器を優先して対応すると良いようです。
冷蔵庫は、停電時も庫内の温度をできるだけ維持するために、ドアの開閉は控えめに。洗濯機は水道の蛇口を閉めておくと安心です。石油ファンヒーターは運転中に停電になると、白煙などが発生するケースもあるので危険です。万が一白煙が発生した際は、コンセントを抜いて部屋の換気を徹底してください。
まとめ
落雷は例年の傾向として、5月のゴールデンウィーク明けから増え始め、10月頃までが多いシーズンです。特に7~8月に集中し、年によっては100万回を超えることも。日本中どこでも発生する雷だからこそ、そのメカニズムを知り、家電を故障から守る備えが重要です。雷シーズン到来を前に、落雷対策はしっかりしておきたいですね。
(最終更新日:2019.10.05)