【見落としがち】「断熱材」が住まい選びで結構重要な理由

住まいの中で温度管理の役割を果たす「断熱材」。普段直接目にすることがないため、その存在に注目する人は少ないかもしれません。しかし、断熱材選びは快適な住宅のためには欠かせないポイントです。後悔しない断熱材選びのための基礎知識を紹介します。

断熱材が住宅に必要な理由と大まかな種類

断熱材があることで、家の中の温度が一定に保たれる

住宅の住みやすさについて考えるとき、どんな条件を思い浮かべるでしょうか。広さ、静音性、日照など快適な環境をつくる要素はさまざまですが、断熱性について考慮する人は少ないかもしれません。今回は住宅の快適さに意外に大きな影響をもたらす、断熱材について紹介します。

断熱材とは

断熱材とは、屋外の熱を屋内に伝えず、住まいを一定の温度に保つために必要なものです。壁や天井、床の内部などに用いられ、家全体の温度を管理するのに重要な役割を果たします。

住宅のほかには、凍結被害を防ぐため排水管に取り付けられたり、クーラーボックスに使われていたりと、日常的にも利用されています。断熱は適切な温度を維持したいシーンで活躍する技術であり、断熱材はそれを実現するための素材といえるでしょう。

断熱材が家を一定の温度にする仕組み

断熱材の仕組みを理解するために、熱の伝わり方について触れます。

熱の伝わり方は物の中を伝わっていく「伝導」、気体や液体が移動することにより熱が伝わる「対流」、電磁波の形で他の物体に熱が伝わる「放射」の3パターンに分けられます。そのいずれも、高温の物質から低温の物質へ熱が移動するのが特徴です。

この性質を住まいに当てはめると、暑い日は外の熱が家の中に移動し、寒い日は家の中の熱が外に出ていくことになります。家の中の温度を一定に保つためには、この熱の移動を防ぐ必要があります。

そこで、熱伝導率が低い空気を含む素材を壁や床に用いて、屋内外や部屋同士の温度変化を和らげる効果を持たせるのです。ここでいう「素材」を断熱材と呼びます。

断熱材を選ぶときのポイント

断熱材を選ぶときのポイントは、価格と断熱性、持続性、そして各素材が持つ性質です。

断熱性に優れた素材は厚さが薄くても十分な断熱効果を発揮しますが、そのぶん高価です。安価な素材は分厚くすることで断熱性を保つことができるものの、家の構造上すべてに対応することができない場合もあります。

住宅の面積や構造によって、薄い断熱材を使う箇所を判断し、快適な温度を保てる断熱材の量や種類を見極めることが断熱材選びのポイントです。

断熱材の主な種類

戸建て住宅では、「繊維系断熱材」を用いられているケースが多い

では、断熱材にはどのような種類があるのでしょうか? 素材によって細分化される断熱材の中でも、一般的なものを抜粋して紹介します。

繊維系断熱材

戸建てへの利用で広く普及しているのは、繊維系と呼ばれる断熱材です。繊維系は素材によって種類があり、下記の3つが一般的です。

  • ・グラスウール(ガラス繊維)
  • ・ロックウール(高炉スラグ)
  • ・セルロースファイバー(新聞古紙)

自然由来の素材を生かしており、人や環境に優しく、火災時も有害ガスを発生させないのが繊維系の特徴です。また、グラスウールとロックウールは価格もお手頃です。

発泡プラスチック系断熱材

発泡プラスチック系は、プラスチックが原材料の断熱材です。細い繊維の特性を活用して熱伝導率を下げる繊維系と違い、発泡プラスチック系は素材に無数の気泡を入れることで断熱します。発泡プラスチック系断熱材にもいくつかの種類がありますが、代表的なものは下記の3つです。

  • ・ポリスチレンフォーム
  • ・ウレタンフォーム
  • ・フェノールフォーム

ポリスチレンフォームの中には更に細分化された押出法ポリスチレンフォームやビーズ法ポリスチレンフォーム(発泡スチロール)があります。

繊維系と比較して一般的に水に強いなどのメリットがあります。また、同じ厚さで比較した場合、発泡プラスチック系断熱材のほうが繊維系より熱伝導率が低い傾向があります。

それぞれどんな素材なの? 断熱材の特徴

一般的に、高額な断熱材のほうが高い断熱効果を発揮

では、これらの断熱材はそれぞれどのような特徴があるのでしょうか? 断熱材を選ぶときの基準として分かりやすい「コストと断熱性」「その他の性質」を比較しながら紹介します。

コスト面で選ぶなら? 費用別に見た断熱性

断熱材のコストを考えるとき、その断熱材のパフォーマンスを発揮するために必要な厚さが種類によって異なります。

繊維系断熱材のロックウールやグラスウールは他素材より比較的安価です。発泡プラスチック系は、フェノールフォームを筆頭にややコストがかかります。一般的に、価格が高い断熱材であればあるほど、薄くても満足な断熱効果を発揮します。

素材によって適切な厚さが違うため、一番コストパフォーマンスが良い断熱材を選ぶことは難しいのですが、断熱性能あたりの価格指標を比較した実験<マグ・イゾベール社「断熱性能あたり価格指標比較」>ではグラスウールが最安値という結果が出ています。

不燃性、吸音性、耐久性

断熱材を選ぶとき、断熱性とコスト以外にも比較したいポイントがいくつかあります。

まず、不燃性はチェックすべき点です。断熱材の素材によっては、火災に強い断熱材とそうでない断熱材があります。その点、ロックウールやグラスウールは不燃性に優れた断熱材です。

周辺の環境によっては、吸音性についても検討しましょう。グラスウール、ロックウール、コルクなどの繊維系断熱材は吸音性が高いものが多く、ホールの反響防止などに使われることもある素材です。これらを用いることで、周辺からの騒音をカットするだけでなく、上下階の生活音を気にせず暮らすことができるでしょう。

一方、発泡プラスチック系のビーズ法ポリスチレンフォームやフェノールフォームは水に強く、強度があるため、繊維系断熱材では難しい基礎部分での断熱に適した耐久性を持っています。

施工方法によって断熱効果が失われることも…

断熱材を比較するためのポイントを紹介しましたが、断熱材が適切な断熱効果を発揮するためには、施工が正しく行われることも重要です。

防湿が不十分だと結露が発生する

壁の中が結露すると、躯体の腐朽を招きやすくなります。したがって、断熱材には防湿のための処置が必要です。

気密性を保持する

隙間があると断熱効果は失われてしまうため、高い断熱効果を求めるならば気密性の追求が必要です。特に、シートを切るタイプの断熱材の場合、隙間ができないように断熱材を入れなければなりません。

とはいえ、この点については実際に施工する担当者に任せるほかありません。もし可能であれば、施工担当者の技術レベルについて事前に相談してみるとよいでしょう。

施工方法は断熱材の種類によって異なり、シート状の断熱材を入れるタイプと、直接吹き付けるタイプがあります。一般的に後者のほうが気密性は優れており、セルロースファイバーなどにこの施工技術を用います。

断熱材の特徴は一長一短、基礎知識をもとに最適な選択を検討しよう

このように、断熱材には種類によってさまざまなメリット・デメリットがあります。単純に価格を比較するだけでなく、断熱効果やほかの性質についても理解しておくことが大切です。

断熱材の適性は、住まいが建てられる場所の気温、湿度だけでなく、周辺の環境や住まう人の生活スタイル、間取りによっても異なります。そういった環境の事前リサーチや分析と併せて、今回紹介した断熱材の種類について検討してみてください。

取材協力/マグ・イゾベール株式会社

(最終更新日:2021.01.05)
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