私たちの最近のライフスタイルはかなり洋風化しています。食事はテーブルとチェアのダイニングセットですし、テレビを見るときはソファでくつろいでいるし、寝るときもベッドでしょう。でも、やっぱり和室が落ち着く、という人も少なくありません。海外では、日本の伝統的な和のスタイルに注目が集まることも。今回は、落ち着く空間を作るための和室インテリアを、その使い方から考えて整えるアイデアをご紹介します。
正しい和室の使い方って、あるの?
日本人は長らく、畳敷きであれ、板の間であれ、和室で暮らしてきました。「起きて半畳、寝て一畳」という言葉がありますが、その深い意味はさておき、実際、布団を毎日上げ下ろしすることで省スペースでの暮らしができたり、続き間があれば部屋同士をつなぐ襖(ふすま)を開け放して風が抜けるようにしたり、使い方が非常にフレキシブルなのが和室の特徴。最近は和室に馴染みがない人も増えてきて「正しく使わなければ」と難しく考えてしまいがちですが、そもそも自由な使い方ができるのが和室なので、一般家庭なら、どのような使い方をしても問題はありません。
とはいえ、ルールはあるんでしょう? という疑念もぬぐえないかと思います。確かにランク付けはあり、格式の高いほうから順番に「真」「行」「草」と分類されます。
真は、床の間と床柱、天袋や地袋と呼ばれる小さな収納、違い棚、かつては武士が読書などの際に机にしたという付け書院を備えたタイプ。
行はそこからやや簡素な作りで、違い棚や付け書院を省き、収納が押し入れになっている場合もあります。
草は最も自由な和室で、柱などを表に出さず、部屋を面で構成するようなスタイル。といった分け方はあるものの、形式にとらわれすぎるのは御法度です。格式が高い和室だから……と気軽に使えずに余らせる、というのが最ももったいないパターン。そのときには、和の暮らしはそもそも自由なのだ、ということを思い出してください。
新築の場合は、家全体の雰囲気に合わせ、どの格式にするか、ということを考えて設計するのが良いかと思います。既に和室がある家の場合は、格式を念頭に置きつつ、そのスタイルを突破するのか、本来のスタイルに沿わせるほうが自分に合っているのか、を検討しみてはいかがでしょうか。
リラックス重視の「和」のスタイル
自由に使っていいんだ、と気づいたところで、さてどう使いましょうか。リラックスのための部屋、と位置づけてみるのも一案です。畳敷きの和室の最大の特徴は、ごろりと横になるのが楽なこと! フローリングだと寝転がるのは痛いのですが、畳ならば優しく身体を受け止めてくれます。
また、い草の香りも心を落ち着かせてくれますね。フローリングにソファの組み合わせだと、誰かがソファに寝転がると他の家族の居場所がなくなりますが、和室ならそんなことはありません。くつろぎを重視するなら、そういった視点で和に寄せるのも悪くありません。その場合は、寝転がってやりたいことを思い浮かべます。本を読みたいなら、体を預けられる座布団やクッションが必要だな、と考えて部屋を整えるのがおすすめです。
現代の暮らしと和のテイストを馴染ませるには
(1)ナチュラルな北欧家具と組み合わせる
和風住宅と北欧家具の相性は、とても良いと言われています。どちらも自然に寄り添う暮らし方をしてきた歴史があり、ナチュラルな仕上げが好まれるのも共通しています。北欧家具の名作と言われるYチェア(デザイナー:ハンス.J.ウェグナー)や、S プライウッドチェア(デザイナー:アルネ・ヤコブセン)などは、和室によく合います。
象徴的に、1脚だけ導入してみるのもおすすめです。京都の有名老舗旅館のライブラリーでは、床はカーペットながらも和の空間に北欧の家具を入れて、落ち着いた雰囲気を作っています。センスのいい先行事例があると、自宅で同じ手法を取り入れるにも安心できますね。
(2)和モダンスタイルの家具と組み合わせる
洋風のライフスタイルと和のテイストを、ちょうどいい感じでミックスしたい、という場合には、両方のスタイルをつないでくれそうな家具を選びましょう。伝統工芸的な和風の家具を作っているメーカーでも、現代的なデザインを取り入れた家具シリーズを展開している場合があります。
岩谷堂箪笥生産協同組合の「くらしな」シリーズは、伝統工芸の趣がありながらソファとも組み合わせられる雰囲気があり、スタイリングしやすく、絵になる家具が見つかります。
(3)ラグと組み合わせる
面積が広いラグは、和室に限らず、部屋の雰囲気を変える効果が群を抜いています。和室にラグを敷き、ソファを置くスタイルの実例は、小規模でラグジュアリーな宿泊施設で増えています。ラグの場合はナチュラルに寄せるのではなく、一般的な和室ではあまり見ないような、青や赤などを基調としたラグを取り入れるのがコツ。モダンな雰囲気が強調できます。
ラグを敷いてしまえば、その上にはクッションを置いて、トレーを持ち込んでお茶するなど、より自由に使えます。チェアなどの家具を持ち込んでもいいし、持ち込まなくてもいい。自由な部屋にアレンジできるのが魅力です。落ちつく和室、という意味では、3つのアイデアの中でも最もくつろげるので、イチオシです。ラグは畳の上にカーペットを敷くことに衛生面で抵抗がある場合は、市販のダニ取りシートを使い、丁寧に掃除機をかけることで問題を回避できます。
自由に使えるとなると、様々なインテリアに挑戦できそうですよね。和に寄せるもよし、洋風に寄せるもよし。日本人には馴染み深い和室ですから、ぜひ有効にお使いください。
(最終更新日:2019.10.05)