「今住んでいる自宅が手狭になった」、「便利な場所に移りたい」、「マンションから一戸建てに住み替えたい」などさまざまな理由で、自宅を売却して新しい住まいを購入しようと考えている人は多いのではないでしょうか。
自宅の買い替えをするときに、費用面のことが最も気になるという人も多いと思います。この記事では、自宅の買い替えをするときに押さえておきたいお金について解説します。
住み替えのパターンによって変わる費用
住み替えにもいくつかのパターンがあり、それぞれの進め方により費用も大きく異なります。
まず、すでに住宅ローンの支払いを終えているケースです。
このケースでは、現在の年齢や収入に合わせて買い替え物件の購入予算を立てればよいので、よい物件さえ見つかればスムーズに買い替えを進めることができます。住宅ローンはすでに完済しているので、現在の自宅は新しい住まいに引っ越した後で売却すれば良く、仮住まいをする必要もありません。また自宅を急いで売らなければならない場合、買い叩かれることもありますが、そのような心配も少ないので、買い替えのハードルは最も低いと言えます。
その場合でも、買い替え後のライフプランを明確にするために、自宅がいくらで売却できそうか、あらかじめ調べておいた方がよいでしょう。
次に、住宅ローンがまだ残っているケースです。この場合、いくつかのパターンがあります。
1.売却先行型
まず自宅を売却し、住宅ローンを完済してから、次の住まいを購入するケースです。住宅ローンを完済するので身軽にはなりますが、自宅の売却金額が住宅ローンの残債を下回ってしまう場合は、手持ちの預貯金から残った残債を返済する必要があります。また、自宅を引き渡してしまうと仮住まいをする必要があり、家賃や引越し代などの費用が余計にかかってしまいます。さらに、自宅の売却後、なかなかよい物件が見つからず、結果的に仮住まいが長期間に渡る可能性もあります。
2.同時進行型
売却と購入をほぼ同時に進めるケースです。一般的には、購入物件を決めてから、速やかに売却をします。タイミングが良ければ無駄な費用も少なく効率的に買い替えができますが、実際にはなかなか自宅が売れないなど、スムーズに進まないこともよくあります。このようなケースでは、あらかじめ自宅を買取してくれる業者を見つけておくこともあります。買取価格は仲介で売りに出すよりも安くなってしまいますが、引き渡し時期も新居への引越しに合わせてくれるなど、無駄な費用もかからず安心して買い替えを進めることができます。
期限を決めて仲介で売りに出し、期限までに売却できなければ買取をしてもらうというような進め方もよいでしょう。新居を紹介してくれる会社が買取をすることもありますので、相談してみるとよいでしょう。このケースでも自宅売却時に住宅ローンの残債が残ってしまうこともあるため、資金繰りに注意しなければいけません。残債を手持ち資金で完済できない場合には、後述する住み替えローンの利用も検討しましょう。
3.購入先行型
先に新居を購入してから、後で自宅を売却するケースです。この場合、せっかく希望の新居が見つかっても自宅の住宅ローンが残っているために、新居の購入資金を確保できなければ買い替えができません。自己資金で購入ができればよいのですが、多くの人はやはり住宅ローンを利用しないと難しいのではと思います。このようなケースでも住宅ローンが使える場合があります。
住み替えで利用できる住宅ローンの種類
同時進行型で最もよく利用されるのは、住み替えローンです。住み替えローンとは、売却しても残債を完済できない場合に、残ってしまう残債額と新居の借入額を合算して組むローンのことをいいます。金融機関によっては「買い替えローン」などの名称で呼ばれるケースも見られます。
住み替えローンについては、融資審査時にすでに自宅の買主が決まっていて売買契約が完了していることが前提となります。そうでないと、売却後に残ってしまう住宅ローンの残債の把握ができないためです。
自宅の引き渡しと新居の引き渡しを同日に設定することがポイントです。
購入先行型では、二重ローンを組める場合があります。
二重ローンは「ダブルローン」とも呼ばれており、自宅を売却しない限り、新しく購入する家とふたつの住宅ローンを同時に返済していきます。
そのため、ひと月あたりの返済額が増大し、家計を圧迫してしまうおそれもあることから、二重ローンを組んでも本当に返済をしていけるのかしっかりと把握しておくことが必要です。
また、金融機関でも、二重ローンの返済能力があるかを審査するために十分な年収があるかなどの厳しいチェックが行われ、その結果融資自体が承認されないこともあります。そのため、金融機関への事前に相談も重要になります。
ローンを組む場合は事前シミュレーションを活用
住み替えでローンを組むときには、しっかりと返済計画を立てることが必要です。とくに、二重ローンと住み替えローンを組む場合は、ひと月あたりの返済額が高額になるケースも多いことから、無理のない計画を立てる必要があります。ローンを組む場合は、事前シミュレーションを活用することをおすすめします。シミュレーションを活用して、ライフイベントなども考慮した返済計画を立てておきましょう。
また、返済期間にも注意しましょう。返済期間が長ければ、ひと月あたりの返済額が少なくなるので「返済期間を延ばしたい」と考える人も見られます。しかし、住み替えを検討している人は、ある程度年齢を重ねている場合も多く、退職までの期間もそれだけ短くなっています。したがって、返済期間を安易に延ばしてしまうと完済できない可能性もあると心得ておきましょう。
売却益や住宅ローン減税との比較で利用する減税措置を考える
住宅ローン控除の要件をクリアしている場合、住み替えでも住宅ローン控除を受けることができます。ただし、住み替えのために売却した不動産が購入時よりも高い価格で売却できた場合に利用できる「3,000万円の特別控除の特例」「軽減税率の特例」「特定のマイホームを買い換えたときの特例」を利用した場合は住宅ローン減税を適用できません。どちらが得なのかの判断は難しいため、税理士などに相談することをおすすめします。
一方、購入時よりも低い価格で売却した場合は、「譲渡損失の損益通算及び繰り越し控除の特例」を受けることができます。ただし、譲渡損失の特例を利用している間は住宅ローン減税を利用できませんが、残りの期間は住宅ローン減税を利用することができます。制度を有効に活用して、金銭的な負担を軽減しましょう。
計画的な自宅の買い替えでライフプランの実現を目指そう
住み替えの理由は人それぞれですが、冒頭でもお伝えしたように、主にライフステージの変化がきっかけとなることが多いです。
たとえば現役世代は、「子育てに適した環境に移り住みたい」や「親と同居したいから、今の家では手狭」など、また最近は「家族が少なくなったので、狭くてもよいので便利な場所に移りたい」「リタイヤしたので故郷の近くに住みたい」など高齢者世代の住み替えもあります。
住み替えのベストタイミングは人によってそれぞれであることから、ライフステージが変わるときがひとつのタイミングと言えるでしょう。
自宅の住み替えを「買い替え」により実現しようとする場合、自宅を購入したときと同様に多額のお金が動きます。そのため、買い替えをする場合は計画的におこなうことがポイントです。
とくに、初めて住宅を購入する場合と異なり、買い替えをする人はミドル、シニア層の割合が高くなるため、住宅ローンを利用する場合には、退職の年齢なども考慮して、ライフイベントなどに応じた完済計画を立てることが欠かせません。
また、自宅の買い替えでは、費用や家計収支の問題から「仮住まいも二重ローンも避けたい」ということも多くの人が考えています。住み替えに関することで不安や疑問がある場合や「資金繰りが厳しい」など個別の事情がある場合は、信頼できる専門家や不動産会社に相談してみましょう。
買い替えによって理想的な住まいを手に入れるために、お金にまつわる疑問は早い段階で解決しておきましょう。
(最終更新日:2019.10.05)