都市部にあるマンションは敷地面積がそれほど広くないことが多いため、駐車場付きの場合は機械式駐車場であることが少なくありません。マンションの購入を検討する際には、機械式駐車場にどんなメリットやデメリットがあるのかを知っておきたいものです。この記事では、機械式駐車場の特徴や注意点などについて解説します。
機械式駐車場の4つのタイプとメリット
マンションの駐車場に採用されている機械式駐車場は大きく分けて4つの種類があり、それぞれピット二段式、昇降横行式、垂直循環方式、エレベーター方式と呼ばれています。
ピット二段式
上下2段の車を地上部に駐車し、下段の車をピットと呼ばれる地下に収めます。下段の車を出さなくても上段の車を出すことができるのが特徴です。
昇降横行式
最初から設けられている1台分の空きスペースを利用して他のパレット(車を乗せる部分)をパズルのように動かして、出したい車を移動させる方式です。
垂直循環方式
車を乗せるパレットを垂直に移動させて、出したい車を入口まで移動させる方式です。
エレベーター方式
車を乗せたパレットをエレベーターで駐車スペースの高さまで上げた後、左右どちらかのスペースに収める(車を出すときはこの逆の動きをする)方式です。
機械式駐車場は、運転手が降りた後で機械を操作して駐車スペースに収めるため、隣の車にぶつかられる心配が少ないというメリットがあります。また、ピット二段式のピット部分のように機械を操作しないと車の側へ行けないようになっている駐車スペースは、いたずらなどの被害も受けにくいです。また、屋根があるものは直射日光が当たることによる退色や雨による汚れも防げます。都市部のマンションの駐車場には、この他に自走式立体駐車場がしばしば採用されています。自走式立体駐車場は上階の駐車スペースまで自分で車を運転していかねばなりません。最上階以外は上階の駐車スペースが屋根になるため車が汚れにくいのも特徴といえます。また、スペースが十分にある場合は、平置き駐車場が設置されていることもあります。
日常生活の上で無視できない機械式駐車場のデメリット
機械式駐車場は、車を出し入れする際に車から降りなければなりません。そのため、雨のときや荷物がたくさんあるときは面倒に感じることがあります。駐車した位置が地上に接していない場所の場合は、パレットを移動させての車の出し入れ、パレットを戻す作業にそれぞれ数分かかるため、急いでいるときにはじれったく感じることも少なくありません。また、車を動かせるのは1度に1台だけであるため、複数人が車を出したい場合は待ち時間が長くなります。
他にも機械式駐車場は動かすときに音が出るため、早朝や深夜の時間帯には近所迷惑になりはしないかと気を使うことになるかもしれません。また、機械がトラブルを起こして止まってしまうと、トラブルが解消されるまで車を出すことができなくなることも考えられます。収納できる車の高さに制限があるため、車を買い替える際に選択肢が狭まるというデメリットもあります。
このように機械式駐車場のデメリットは色々ありますが、その中でもっとも大きなものは、自走式駐車場と比較して維持費が高くなるということでしょう。平置き駐車場の場合は、維持費はあまりかかりません。一方、機械式駐車場の駐車料金は平置き駐車場よりも維持費が高いのが特徴です。
機械式駐車場に特有の注意点
機械式駐車場は機械が動くため、好奇心旺盛な子どもにとっては興味をそそられる場所です。機械式駐車場で遊んでいた子どもが事故に巻き込まれるケースは決して少なくありません。ピット2段式の場合、地上に接している部分は平面に車を置いているように見えるため、ここで遊んでいて事故になるケースがあります。車を降りた後に昇降するパレットに挟まれる事故も実際にありました。
また、事故を起こしてしまうのは必ずしも子どもだけで遊んでいるときとは限りません。大人が側についていても事故が起きてしまったこともあります。たとえば、車内で子どもが寝てしまったため、後で起こしに来るつもりで大人が先に車を降りて入庫操作をしたときに、子どもが起きてドアを開け、事故になったケースがあります。このような事故のリスクは、平面駐車場や自走式立体駐車場にはなく、機械式駐車場に特有であることを頭に入れておくことが必要です。
さらに、ゲリラ豪雨など、短時間で急激に雨が降ったときには、地下ピット部分に浸水するケースも少なくありません。台風などで大雨が予想される場合は、一時的に全部の車両を地上に上げることで対処はできますが、その操作ができるのは管理者に限られていることも多いです。ゲリラ豪雨は突然起こることも少なくないため、素早い対処が必要となります。そのため、大雨になったときの駐車場の管理体制はどうなっているのか、確認しておいたほうが安心です。
マンションの共用資産の機械式駐車場!維持費はこんなにかかる
機械式駐車場の法定耐用年数は15年とされており、途中でメンテナンスを行いながら使い、15~20年ほどで全取り替えになるケースが少なくありません。全取り替えをする際は、車1台分につき100~200万円ほどの費用が必要です。分譲マンションの場合は、全取り替え費用も含めた修繕費の積み立てを行います。マンションの駐車場代は修繕費の会計に組み込まれるのが一般的です。ところが、駐車場代金が安く設定されている場合は、全取り替えの時期に積立金が不足してしまう可能性があります。そうなると、埋め合わせのために費用を追加徴収されることも少なくありません。
逆に月々の駐車場代が高いと、外部の月極駐車場を借りる人が出てくるため、駐車場代の収入が減り、結果的に全取り替えの費用に満たないケースもあります。また、機械式駐車場はほとんどの場合マンションの共用部分であり、マンション全体の共有資産です。そのため、車を所有していなくても管理費という形で間接的に維持費用を負担しなければなりません。機械式駐車場のあるマンションに住むと、車を所有するしないに関わらず、修繕費積立金は高くなりがちです。
機械式駐車場付きマンションを選ぶときのポイント
ピット二段式の場合は、上の階と下の階で駐車のしやすさが違うため、不公平感があります。そのため、マンションによっては定期的に抽選を行い、駐車位置を変更するようにしたり、上下階で駐車料金を変えたりするなどの工夫を行っているところも少なくありません。購入を検討しているマンションではどのような対応をしているのか、調べておきしょう。
機械式駐車場は故障が起こることも想定しておく必要があります。そのため、メンテナンス体制がどうなっているか、確認しておきましょう。メンテナンスがずさんだと、修理費用が高くなったり、トラブルになったりする可能性もあります。
また、機械式駐車場は収められる車の大きさに限りがあるのが一般的です。どれくらいの大きさまでの車なら駐車可能なのかも、あらかじめ調べておきましょう。
都市部は本当に車が必要か考えてみる
都市部のマンションは、機械式駐車場付きというケースも少なくありません。機械式駐車場は、車上荒らしなどの被害を受けにくく、直射日光も当たらないため、車の退色を防げるメリットがあります。一方、車の出し入れに時間がかかり、メンテナンスにも多大な費用がかかるというデメリットがあります。機械式駐車場のメリットとデメリットを知ったうえで、自分のライフスタイルに考え合わせてマンション選びをしましょう。
(最終更新日:2020.10.11)