マンションを購入する場合、物件価格以外にもいろいろな費用が必要となります。マンションを登記する費用もそのひとつです。マンション購入には、住宅ローン関連費用や仲介手数料など費用がかかりますので、できれば登記費用を節約したいと思っている人もいるのではないでしょうか。ここでは、マンション購入時に必要な登記の種類、登記にかかる費用、さらに登記以外の諸費用についてもご紹介します。
自分で登記するなら登録免許税だけ
土地や住宅を購入するときは、その不動産を管轄する法務局で登記手続きを行います。不動産登記とは「土地や建物などの不動産の所在・面積、所有者の住所・氏名などの情報を、法務局の登記官が正確かどうかを確認した上で登記記録に記録すること」です。不動産登記をすることによって、不動産の物理的状況や所有権、抵当権といった権利関係に関する情報が公示され、第三者でもわかるようになります。これは不動産取引を安全におこない、スムーズに進めるために役立ちます。
不動産登記法は「本人申請」を原則としているため、自分で登記手続きを申請しても法的に問題はありませんが、一般的には司法書士や土地家屋調査士などの専門家に依頼します。
司法書士と土地家屋調査士の違いですが、土地家屋調査士は、「不動産の表示に関する登記」の申請手続、または審査請求の手続をおこなうのに対し、司法書士は、「不動産の表示に関する登記以外」の申請手続をおこなうことができます。
「不動産の表示に関する登記」とは、建物を新築した際の位置や形状、面積などを調査して登記するものであり、「不動産の表示に関する登記以外」とは、その不動産の所有者や住宅ローンを利用する際に設定される抵当権など、権利に関する登記を指します。
さきほど自分で不動産登記の申請をするのは法律上可能と述べましたが、実際にはほとんど認めてもらえないのが、住宅ローンの融資を受ける際の抵当権設定登記、所有権移転登記、新築の際の所有権保存登記などです。
とくに、住宅ローンの融資を受ける場合は、通常引渡し決済と同時もしくは一定期間内に所有権の移転登記、抵当権設定登記をおこないますが、その手続きが遅れたりできなかったりした場合、金融機関に無担保状態になるなどリスクが生じる可能性があるため、買主自ら登記手続をするのは難しくなっています。なお新築マンションの表題登記については、建物全体と各部屋の登記を一括で申請することになっているため、買主個人で申請することはできません。
所有権保存登記の費用
所有権保存登記とは「所有権の登記のない不動産に、最初におこなう所有権の登記」です。所有権が設定されていない新築マンションには、所有権保存登記で、所有者の住所・氏名のほか、新築の日付などが記載されます。所有権保存登記するかは、所有者の任意になっています。ただし、建物を購入する際に金融機関から融資を受け、土地・建物に抵当権を設定する場合は、所有権保存登記をしなければなりません。
所有権保存登記は新築マンションの場合、売主である建築会社が指定する司法書士が代理申請します。新築マンションの売買契約書には売主が司法書士を指定する旨について記載されているのが一般的ですので、基本的にマンションの購入者は指定された司法書士以外には依頼することはできません。
ただし指定された司法書士の報酬が相場と比較して高額な場合は、異議を申し立てることができます。所有権保存登記にかかる費用は、司法書士への報酬と登録免許税です。司法書士への報酬は、5~6万円程度が相場になっています。登録免許税は、税額=課税標準×税率で計算し、2020年3月31日までは軽減税率が適用され0.15%です。
所有権移転登記の費用
所有権移転登記とは「土地や建物の所有権が売買や贈与、相続などで移転したときにおこなう登記」です。中古マンションを購入したときは、所有者が売主から買主に移ったことを明確にするために行います。所有権移転登記は売主と買主の共同申請になります。通常、所有権移転登記の費用は買主が負担します。
また、司法書士は仲介会社が指定することが多くなっています。これは仲介会社や売主はトラブルを避けるためであり、所有権移転登記を買主個人に委任することはほとんどありません。
所有権移転登記には、司法書士への報酬と登録免許税が必要になります。司法書士への報酬は、住宅ローン融資を利用の有無、そのほかの条件によっても違いますので一概にはいえません。登録免許税は、税額=課税標準×税率で計算し、2020年3月31日まで軽減税率が適用されるので税率が2%から0.3%になっています。
抵当権設定登記の費用
抵当権設定とは「建物と土地に担保権を設定すること」です。抵当権の設定を登記することを抵当権設定登記といいます。抵当権設定登記をすると、ローン返済が滞るなど債務者が債務を履行できない場合に、債権者が競売などにより債権を確保することが可能です。
マンション購入で住宅ローンを利用する場合、引渡し・融資実行と同時もしくは一定期間内に抵当権設定登記をおこなう必要があります。もし、できなければ無担保状態での貸付にもなりかねず、金融機関は大きなリスクを負います。そのため抵当権設定登記は仲介会社、金融機関が指定する司法書士がおこなうのがほとんどです。
抵当権設定登記の費用には、司法書士への報酬と登録免許税が必要になります。司法書士への報酬はさまざまですが、4~10万円が相場となっています。登録免許税は、抵当権設定額(借入額)×税率で計算し、2020年3月31日までは軽減税率が適用されるので0.4%から0.1%となっています。
登記費用以外にかかるお金:融資関係の費用
マンションを購入した際には、住宅ローンなど融資関係の費用が発生します。具体的には、印紙代、保証料、事務手数料などです。融資関係の費用は、融資を受ける金融機関によっても異なります。融資関係の費用は、最大で借入金額の2%以上を想定しておいたほうがよいでしょう。借入金額3,000万円であれば、60万円以上と計算します。
印紙代
印紙代は、融資を受ける金融機関と金銭消費貸借契約を締結する際に、印紙税がかかるため必要になります。印紙税額は、記載金額が「500万円を超え1,000万円以下」のとき1万円、「1,000万円を超え5,000万円以下」のとき2万円、「5,000万円を超え1億円以下」のとき6万円です。2020年3月31日まで契約分については軽減税率が適用になります。
保証料
保証料は、融資を受ける際に保証会社に支払う費用です。住宅ローン契約者が返済できなくなった場合に、保証会社が契約者の代わりに金融機関に残債を返済します。
住宅ローンの保証料の支払い方法には、「一括前払い型」と「利息組込み型」の2種類があります。一括前払い型とは、保証料を住宅ローン契約の際に一括で支払う方法です。利息組込み型とは、保証料を月々の住宅ローンの返済に含めて支払う方法になります。
元利均等か元金均等かといった返済方法によっても異なりますが、たとえば、元利均等返済で借入額3,000万円、返済期間35年のとき、一括前払い型の保証料の相場は65~80万円程度です。同じ条件で利息組込み型の保証料の相場は、120~250万円程度になります。一括前払い型は総返済額を少なくでき、利息組込み型は住宅ローン契約時の費用を少なくできるというメリットがあります。
また、住宅ローンの諸費用として、保証料型と事務手数料型があります。この違いは、保証料型の場合、当初の返済期間の前に繰り上げ完済した場合に一部保証料が戻ってきますが、事務手数料型の場合、戻りがありません。
事務手数料
事務手数料とは、住宅ローン事務手続きの費用として金融機関に支払うものです。金融機関や融資金額によって、事務手数料は違ってきます。住宅ローンの事務手数料には、「定率型」と「定額型」があります。定率型は、融資額に対して一定の割合を手数料として支払う方法です。たとえば、融資額×2%の定率型の場合、3,000万円の融資を受けると手数料は60万円になります。定額型は融資額に関係なく、事務手数料の相場は3~6万円程度ですが、定率型に比べ住宅ローンの金利が0.1~0.3%程度高い設定になっています。
なお、保証料には消費税はかかりませんが、事務手数料には消費税がかかります。
登記費用以外にかかるお金:管理関係の費用
マンションの購入後には、管理費、修繕積立金などの維持管理費用もかかります。管理費、修繕積立金は、毎月払い続けていかなければならない費用です。
管理費
管理費は、マンションの管理会社に支払う管理委託費、管理組合の運営に関する費用、共用部分の水道光熱費などに使われます。
修繕積立金
修繕積立金は、マンション共用部の計画的におこなう修繕、不測の事故などで必要となる修繕などに使われます。70平方メートルのマンションの場合、平均管理費は月1万1,550円程度、平均修繕積立金は月5,880円程度です。また、そのほかにも積立基金の支払いが必要なケースもあります。
修繕積立基金
修繕積立基金は、10~15年ごとの大規模修繕に備えて積み立てておく費用で、物件の引き渡し時に支払います。金額は、エリア、物件の規模や構造などで異なりますが20~40万円台が相場です。
災害積立基金
災害積立基金は、災害用の道具、備品、非常食などの購入、管理のために積み立てるもので、こちらもマンション引き渡し時に支払います。日本では、一部のマンションが災害積立基金を設けています。
登記費用や諸費用を安く抑えるには?
マンション購入時の登記費用のうち登録免許税は、法律で定められているため安くすることはできません。ただし、購入するマンションの登記簿上の床面積や築年数によっては、軽減措置が受けられる場合もあります。
一方、司法書士の報酬部分については、依頼する司法書士によって違います。売主が指定した司法書士への報酬が割高な場合は、ほかの司法書士に依頼することができないか売主と交渉してみるという方法もあります。ほかの司法書士に依頼できない場合でも、司法書士報酬の部分について交渉できることもあります。
また、登記費用以外の費用を、情報収集や比較検討が大切です。住宅ローンにかかる費用についても、適用金利だけでなく、最初にかかる保証料や事務手数料、返済計画含めた総返済額で考えるべきです。そのためには、いろいろな住宅ローン商品を比較検討することが必要です。
また、自己資金を増やして住宅ローンの借入金額を少なくすることによって、諸費用だけでなく適用金利が下げられる場合もありますので、資金計画をしっかりと考えましょう。
(最終更新日:2019.10.05)