みなさんは「職場積立NISA」って聞いたことがあるでしょうか? 会社の福利厚生制度のひとつであり、給与天引きでできる「NISA制度」です。 NISA推進・連絡協議会の統計によると平成29年12月末時点でのべ8,000社を超える企業が導入しています。会社が導入している積立制度をしっかりチェックしてうまく活用したいものですね。
給与天引きでできる投資信託の自動積立制度
職場積立NISAとは、企業と金融機関が提携して取り入れる制度で、社員が給与天引き等により、NISA口座を活用して投資信託を積み立てる仕組みのことです。積立貯蓄など、給与天引きでできる定期積立とセットで導入されているのが一般的となっています。
例えば、毎月、給与の中から2万円定期積立をして、その2万円の中から月1,000円、あるいは月3,000円など1,000円単位でNISA口座の中で投信積立をする、といったイメージです。もちろん、途中で購入金額を減らしたり、増やしたり変更することができますし、解約して資金を使うことも可能です。
通常、投資信託などで積み立てをする場合、希望する金融機関に口座を作り、口座にプールしてある資金から口座振替をすることで積み立てを行います。一方で、職場積立NISAは給与から資金を天引きして投資信託を自動積立できる仕組みとなっています。
手元にお金が入ってくると使ってしまい、なかなかお金が貯まらない人にとっては先取り投資をすることができるので、効果的といえるでしょう。
職場積立NISAも「NISA」と「つみたてNISA」の選択制
職場積立NISAの中身はNISA制度と同じですので、毎年、「NISA」と「つみたてNISA」のどちらかを選択することができます。
「NISA」は年間120万円までの投資であれば5年間非課税で投資ができるため、比較的まとまった金額を短期・中期的に運用したい場合に適していますが、「つみたてNISA」では毎年40万円までの投資について20年間非課税で運用できるので、少額を長期間積立てながら運用したい場合に向いています。
また、投資できる商品も異なるため、投資目的だけでなく、金額や期間、投資したい商品に合わせて選択することをおすすめします。
なお、職場積立NISAでは、会社によって提携している銀行は異なります。金融機関ごとにNISA、つみたてNISAで購入できる商品は違うので、購入したい商品が決まっているのであれば、自分の会社が提携している銀行で希望の商品があるのか、事前にチェックしておきましょう。
また、証券会社でNISA口座を作る場合と違って、個別の株式投資もできませんので注意が必要ですね。
会社の積立制度は目的に応じて使い分ける
ライフプランに必要な資金を準備する際には、資金を使うタイミングによって運用資産の優先順位をつけて考えることが大切です。
例えば、20代・30代の独身の場合は一般的に「結婚」「住宅取得」「教育資金」「老後資金」の順番で資金が必要となりますが、先に必要な資金準備ばかりを優先して資産を運用していると、途中で予定しているイベントに必要な資金が不足してしまう、という可能性もあります。
住宅購入の頭金や子どもの教育資金を捻出するために、老後資金の準備のために積み立てていた保険商品を中途解約しなければならない事態が起こらないように、短期資金と中長期資金をバランスよく積み立てていくことが大切でしょう。
具体的には、
・いつでも使える短期資金
・近い将来必要となったときに使える中期資金
・今は使う予定もないができれば使うときまで効率的に増やしておきたい長期資金
・老後のための超長期資金
と時間軸を分けて、活用する積立制度や金融商品を使い分けることをおすすめします。
例えば、「旅行資金・結婚資金」や「住宅資金」といった比較的近い時期に必要となる資金については定期積立・積立貯蓄・財形を使って確実に準備し、教育資金のうち大学資金は子どもが生まれてからでも18年程度の準備期間があるので、長い時間をかけて少額から効率的に運用できる「つみたてNISA」を活用する方法なども考えられます。そのほか、子どもの教育資金は特別に他と切り分けて準備したい場合は、学資保険を併用してもいいですね。
老後のための資金についてはiDeCoを活用して少額から積み立てを開始し、独身、結婚後こどもがいない時期、子どもの教育費がかかる時期など家計の事情に合わせて掛金額を変えながら計画的に積み立てていくと効果的といえます。
なお、勤務先に賞与DCやマッチング拠出制度など確定拠出年金制度を活用できる環境がある方の場合には、iDeCoではなく、会社の確定拠出年金制度を優先して利用したほうが有利になる傾向があるので要チェックです。
ちなみに、「NISA」や「つみたてNISA」はいつでも引き出せて、中期的な資金準備にも適していますが、確定拠出年金は60歳まで原則として引き出すことができず、老後の資金準備に目的が限定されるため、資金を使うタイミングと解約制限のミスマッチが起きないように配慮しておくことも必要といえます。
自分のライフプランを実現するために必要な時期に必要な金額が準備できるよう、会社の積立制度は目的に合わせてうまく組み合わせて活用したいものですね。会社によっては積立制度を活用することで奨励金がもらえるケースもあります。まずは、自分の会社でどのような積立制度が活用できるのかチェックしてみてはいかがでしょうか?
(最終更新日:2019.10.05)