「2020年問題」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これはさまざまな業種が抱える問題の総称であり、不動産関係にも大きく関わってくる重要なテーマでもあります。マンションを購入する前には、2020年問題について知っておく必要があるでしょう。この記事では、不動産における2020年問題とは何かについて詳しく紹介していきます。
2020年問題って一体?
不動産における2020年問題とは、2020年になるとマンションの市場価値が大きく下がるのではないかと言われている問題のことを指します。
2020年と言えば東京オリンピックが開催される年です。オリンピック開催に向けて、再開発や外国人による投資など、さまざまな要因が合わさって建設ラッシュが起こり、不動産の価格が開催地である東京の都心部を中心に高騰しています。実際、平成31年の公示地価は東京都の平均で6%以上上昇しました。これは一種の不動産バブルであるという見方もあり、2020年のオリンピックが終わったらマンション価格が一気に下落すると考える人もいるのです。
なぜ価格の下落が起こるという考えがあるのかというと、東京オリンピックに向けて都市計画が進むとマンションの価格は上昇しますが、裏を返せば、オリンピックが終われば不動産価格が上昇する理由がなくなるのではないかと考えるためです。
上昇が止まってもその後横ばいに推移するのなら、何も問題はないのかもしれません。しかし、上記のような要因によって、上昇しないだけではなく不動産価格の下落が2020年頃にはじまるだろうと予測する人もいるのです。これは不動産業界だけではなく、日本全体にまで影響をおよぼす大きな問題かもしれません。30年前のバブル崩壊を経験している日本だからこそ、2020年のオリンピックに向けての建設ラッシュに警戒感を示すのは、自然なことだとも言えるでしょう。
2020年にマンションが下落すると言われている理由
なぜ2020年にマンション価格が下落すると言われるのかをもう少し深く見ていくと、オリンピックが終了する前に、オーナーによるマンションの売却が行われ、中古マンションの供給過多になる可能性も考えられるためです。
これは、一部の投資家が投機対象であるマンションを、2020年に向かって高値で売り抜けたいと考えているからとも考えられます。中古マンションが市場にあふれることになれば、マーケットの競争原理が働いて価格はどんどん下がっていくことになるでしょう。
また、これとは別に「2019年問題」というものがあります。2019年問題とは、住宅の需要と、年間90万戸ほど建てられる住宅の供給が逆転する現象が起こるとされる問題のことで、この逆転現象は2019年からはじまるとされています。
住宅供給数と総世帯数の逆転が起きれば、供給が増え需要は少なくなるわけですから、新しくマンションを建設しても買い手がつきにくくなり、マンション全体の価格が下落するという仕組みです。総世帯数が減少する原因のひとつに、東京の人口が2020年をピークとして右肩下がりになると予測されている点が挙げられます。東京とはいえ少子化の波には逆らえず、建物の需要が減少すると言われているのです。不動産は人口減少の影響が大きく反映される業界なので、この2019年問題も価格の下落を招く要因として考えられています。
建物の老朽化問題や修繕費の未払いも問題
「少子化」と同じく大きな社会問題である「高齢化」も、マンションの価値を下げる要因の一部になっていると言われています。高齢者世帯がますます多くなっている今日、マンションの管理や修繕を行うのが難しくなってきている現状があるのです。マンションに住む高齢者世帯は全体のおよそ2割と言われています。なかには、この先もうあまり長くは住まない、生きられないからと管理費・修繕積立金の支払いをしないケースもあり、建物に適切な管理が行き届かないケースが散見されています。
また、修繕費や維持管理費用だけでは修繕積立金を全額カバーできないケースも出てきており、大規模な修繕に対応できず建物がボロボロになるケースもあるのです。そうなると、残されている手段は建て替えか取り壊しですが、建て替えには基本的に5分の4以上の世帯に同意が必要となるため、高齢者世帯が多いとなるとなおさらスムーズに実行できる保証はありません。
さらに、建て替えになると入居者がさらなる金額を負担することもあります。建て替えもできず、必要な修繕・補修ができずに建物の老朽化が進むと、マンションの価値は大幅に下がります。二束三文でマンションを売却せざるを得ないことになりかねません。そして空室が目立ち、管理費や修繕積立金が思うように集まらないという負の連鎖に陥るかもしれないことは想像に難くありません。このように、老朽化問題もマンションにとっては大きな課題なのです。
マンションの売買はいつすべき?
もしもマンションの売却を考えているのであれば、2020年問題で大幅に価値が下落する前に売ったほうが良いと考える人も出てくるでしょう。駅近の良物件であったとしても、マンションの管理が行き届いていなければ、購入当初の5分の1の値段でしか売却できないというような事態になりかねない状況です。そのうえ2020年問題も関わってくるとなると、2020年以降のマンション売却はさらなる困難を極めることも十分にありうるのです。
一方で、マンションをこれから購入するという場合には、2020年問題によるマンション価格の下落をうまく利用して割安で購入することができるかもしれません。売り手にとっては厄介な2020年問題でも、買い手にとってはチャンスになり得るものです。2020年問題で価格が下落するマンションは、管理の行き届かない不良物件ばかりではありません。
不動産全体の価格が下がれば、優良な中古マンションや新築マンションですら、同じように値段は安くなっていくこともあり得ます。2020年という年は、売り手にとっても買い手にとっても、資産を築けるチャンスになるかもしれないのです。
不動産価格の暴落はしないという考え方もある
2020年問題は不動産業界に打撃を与える深刻なテーマであると述べましたが、その一方で不動産価格は暴落しないという見方もあるので見ていきましょう。その根拠としてまず挙げられるのは、都心のインフラ整備が進むことや外国人居住者が増えることで、結局は一定数の需要が生まれるというものです。東京はオリンピックに向けて再開発が進み、インフラは今以上に整備されることになります。インフラが整えば海外や地方からの人口流入も今以上に増えるかもしれません。
また、在留外国人の数は2012年以降右肩上がりに増えており、東京にも多く住むことになるでしょう。そのため、東京の不動産においては2020年になってもそれほど心配しなくても良いというのが暴落しないという根拠です。さらに、住宅購入者やリフォーム希望者は増加傾向にあるため、人口減少などのリスクはあるものの、2020年問題として騒がれているような大きな下落は起こらないという考え方もあります。どの説を信じるにせよ自分で資料をあたり、自分の頭で考えることが重要です。
売買のタイミングをよく考えてみよう!
マンションは単に住む場所というだけではなく、投資や投機の対象にもなっている側面もあります。そのため、経済や社会の情勢にあわせて高額になることもあれば、市場の競争原理が働いて割安で購入できる場合もあります。マンションを売る、あるいは買うことを考えているのなら、焦らずしっかりと時期を見計らうことが重要です。多くの人にとって、マンションを買うというのは一生に一度の体験です。しかも、その体験には大金が伴い、やり直しがきかないというリスクがあるので慎重に進めていかなければなりません。マンションの売買をするなら2020年問題のことも視野に入れながら、適切だと思うタイミングを狙っていきましょう。
(最終更新日:2019.10.05)