自宅マンションを賃貸する前に知っておきたい利回りの考え方と賃貸のポイント

転勤の多さなどを理由に、マンションの購入を控えているという人も多いでしょう。しかし、マンションは自分で住むだけでなく賃貸として人に貸すこともできます。「自分が住むためだけにマンションを購入すること」と、「賃貸を念頭に入れて購入すること」は、同じように見えて全く異なります。それでは、賃貸することも考えてマンションを購入する場合、どんなことに気を付けておけば良いのでしょうか。ここでは、自宅マンションを賃貸する際の基本情報について紹介します。

自宅マンションを賃貸するメリット

自宅マンションを賃貸するメリットは、まず「家賃収入を得られる」という点にあります。

購入したマンションを賃貸することを分譲賃貸と呼びます。分譲賃貸は通常の賃貸物件と比べて人気が高めです。分譲賃貸はもともと販売するために建てられたマンションを貸し出すという形になります。分譲マンションは長く人が住むことを想定して作られており、設備や設計が充実しています。こうした事情から、分譲賃貸には入居者が集まりやすく、家賃収入を安定して得やすいというメリットがあります。

自宅マンションで得られる家賃収入は資金繰りにも役立ちます。マンションを購入すれば、固定資産税など財産を所有しているだけで発生する税金も支払わなければなりません。それに加えて、ローンを組んでいれば残債の支払いもあるため、購入してしばらくは高い出費に悩まされることも珍しくありません。自宅マンションを賃貸すれば、そうした出費を家賃収入で補填することができます。

また、たとえ賃貸にしていたとしても、将来的には自分が住むという選択をすることも可能です。このように、状況に応じていろいろな用途に使える点も、自宅マンションを賃貸するメリットだと言えるでしょう。

「表面利回り」と「NOI利回り」の考え方

人気の高い分譲賃貸でも、実際に家賃収入を得られるかどうかは、立地条件や周辺環境などさまざまな要因が絡んできます。それだけに、自宅マンションを賃貸する際は、事前にどれだけ家賃収入が見込めるかシミュレーションしておくことが大切です。

特に、利回りの計算はなるべく正確にしておきたいところです。利回りとは、「投資金額に対する収入の割合のこと」をいいます。ただ、利回りにはおおまかに「表面利回り」と「NOI利回り」の考え方があります。表面利回りとNOI利回りは、同じ利回りでも性質が大きく異なるため、まずはこの2つの違いをしっかり理解しておきましょう。

より正確な収益を導き出すことができるNOI利回り

表面利回りは、「 (年間家賃収入÷物件価格)×100 という計算式で求められる利益率」です。利回りの計算のなかでも単純でわかりやすく、あくまで大まかな数字を把握するために計算されることが多いです。

これに対して、NOI利回りは「 {(年間家賃収入-運営費用)÷物件価格}×100という計算式」になります。

運営費用も含めて計算されるので、NOI利回りは表面利回りより正確な収益を導き出すことができます。ここで重要なのは、表面利回りの数字だけで判断してはいけないということです。表面利回りでは高い収入が期待できたにもかかわらず、実際には管理費や税金が高くて損失を被ったということもよくあります。正確な予想収益を把握するためにも、NOI利回りもしっかり計算したうえでシミュレーションしましょう。

ファミリー向け物件のメリットとデメリット

メリット:入居者募集が効率的、ひとつの物件に長く暮らす傾向が◎

物件のコンセプトがはっきりしていると、ターゲットを絞りやすくなるため、入居者募集も効率的に進められるようになります。小さな子どもがいるファミリー家庭では、子どもが大きくなるまではひとつの物件に長く暮らす傾向があります。そのため、ファミリー向けの物件は安定した家賃収入を得やすいというメリットがあります。

また、長く住んでもらえるということは、退去や入居ごとにしなければならない面倒な手続きをする必要がありません。転居が頻繁に行われるような物件などと比べても、ファミリー向け物件は比較的、賃貸経営自体が楽な傾向にあると言えるのかもしれません。その点もメリットだと言えるでしょう。

デメリット:原状回復費用が高額になりがち

ただ、ある程度の広さが求められるファミリー向け物件では、退去の際の原状回復も費用が高額になりがちです。それから、小さな子どもがいる家庭では、下層階への騒音トラブルも懸念材料のひとつになります。自宅マンションをファミリー向け物件として賃貸しようと考えているなら、こうしたメリットとデメリットをよく比較したうえで最終的な判断を下すようにしましょう。

知っておきたい賃貸のリスク

自宅マンションを賃貸しても、必ず家賃収入を得られるわけではありません。賃貸経営には常に空室リスクというものがつきまといます。入居者がいなければ、そこから家賃収入を得ることもできません。家賃収入を稼ぐことができなければ、税金やローンなどで出費だけがかさむことになり、収支としては大きなマイナスになってしまうでしょう。

また、建物は時間の経過によってどんどん劣化していきます。建物の設備が故障すれば、その修理費用を負担するのは入居者ではなく貸主である自分です。税金やローンに加えて、建物の修繕費用などの出費があることも念頭に入れておく必要があります。

また、賃貸物件の家賃は築年数が古いほど下がる傾向にあります。年数が経って建物が古くなれば、家賃の改定を迫られることも少なくありません。家賃が下がれば、収入も減るため、将来的には十分な家賃収入が得られなくなってしまうというリスクもあります。

ただ、家賃収入を確保するために、入居者選びの条件を下げることはあまりおすすめできません。なぜなら、賃貸経営には入居者トラブルも付きものだからです。家賃滞納や近隣トラブルの懸念もあるため、入居者選びも一定の条件を設けて厳正におこなう必要があります。

そのほかにも、地震や台風など、大きな災害が起きれば建物が損壊してしまうこともあるので、災害も賃貸経営のリスクのひとつだと言えるでしょう。

転勤時の管理は賃貸管理業者に任せよう

転勤などで自宅を賃貸することになった場合、自ら賃貸経営していくことは現実的ではありません。特に遠隔地への転勤だと、管理の目が届かず、入居者とのあいだでトラブルを生み出す原因にもなってしまいます。そのため、転勤で自宅を離れる場合は、賃貸管理業者に賃貸の管理を任せるのが適した方法です。

ただ、賃貸管理業者ならどこでも良いわけではありません。賃貸の管理業務にもノウハウが必要です。ですから、管理を任せる際は、まず実績を参考に賃貸管理業者を選ぶようにしましょう。どれだけの物件を管理しているか、すなわち管理戸数を見れば実績を把握できます。

また、依頼する賃貸管理業者によっては、契約期間が長めに設定されていることも少なくありません。一時的な転勤の場合など、管理を任せたい期間は人によってさまざまですから、契約期間を決められるようになっている賃貸管理会社を選ぶことも重要です。

管理を任せるからには、賃貸管理会社の腕が家賃収入を左右します。特に、入居者募集の方法は家賃収入に直結するため、その賃貸管理会社がどのような手法で入居者集めをしているかも要チェックです。賃貸管理細かい管理プランの違いも見ておくと良いでしょう。収支報告書を発行してくれるかどうかや、信頼できる担当者かどうかも重要ですから、自分の求める条件と良く照らし合わせて最適な仲介業者を探しましょう。

持ち家を賃貸するのは有効な資産運用

購入した自宅を賃貸する際には、もちろんリスクやデメリットも付きまといます。空室が発生するおそれや、思ったような利益を得られないという懸念もあるかもしれません。しかし、正しく情報収集して、利益を出すための準備をすれば、自宅の賃貸経営は有効な資産運用の手段にもなってくれます。利回りの計算や賃貸管理会社の選定など、やるべきことをやって自宅を有効に活用しましょう。

(最終更新日:2019.10.05)
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