住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。低金利時代が続いているとはいえ、【フラット35】の固定金利は毎月更新され、その数字によって返済額が変わってきます。今後の金利動向はどうなるのでしょうか?公認会計士ブロガーとして多くの知見をもつ千日太郎さんに5月の金利動向を分析・寄稿いただきました。
こんにちはブロガーの千日太郎です。2019年の3月から4月にかけては長期金利が下がった反面、【フラット35】の金利は以下のように横ばいで推移してきました。
返済期間15年~20年
- 3月 1.22%
- 4月 1.21%
返済期間 21年~35年
- 3月 1.27%
- 4月 1.27%
(表示の金利は、機構団信付きのARUHI 【フラット35】の金利)
5月の【フラット35】の動向を読むにあたり、直近までの金融市場の状況と今後予定されているイベントがキーになるでしょう。つまり、以下の2つです。
1.新元号令和のスタート
2.決算発表直前の10連休
【フラット35】の金利はどうやって決まる?
住宅ローンの【フラット35】を融資するのは住宅金融支援機構という国の機関であり、その事務代行を民間の銀行やモーゲージバンクなどが行う「公」と「民」のコラボで行っています。
【フラット35】は、住宅金融支援機構が金融機関から【フラット35】の債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて「機構債(RMBS・住宅ローン債権担保証券)」という形で販売するという仕組みになっています。
この機構債は国が取り扱う安全な債券として、格付け機関から最高位のAAAの格付けを取得していますので、その表面利率は国が発行する債券=10年国債の利回りに連動するのです。
参考:35年間ずっと金利が変わらない住宅ローン【フラット35】が注目されている理由
つまり、その機構債を原資とする住宅ローン【フラット35】の金利もまた10年国債の利回りに連動するのですよ。10年国債の利回りは一般的に長期金利と呼ばれます。
直近までの長期金利の動向と【フラット35】金利予想の精度
下記のグラフは、2月19日~4月9日までの長期金利の推移(オレンジ折れ線グラフ)と直近3月と4月の【フラット35】の金利(21年以上、団信加入)(青い棒グラフ)を重ねてみたものです。
3月と4月の【フラット35】の金利は1.27%でその時の長期金利は-0.04%でしたが、その間に長期金利は上がったり下がったりしています。一番高い時で0%超くらいまで上がり、一番低いときで-0.1%弱くらいまで下がりました。それを【フラット35】のスケールで見ると過去2か月は1.21%から1.31%の間で揺れ動いていたということになりますね。
千日は今回、ほぼ5月はほぼ横ばいと予想していますが、その予想が外れた場合はそのくらいの幅で上がるないし下がっても全く不思議ではないということになります。
実際に適用される【フラット35】の金利は「機構債(RMBS・住宅ローン債権担保証券)」の表面利率が発表された時点の長期金利の動向によるので、機構債の表面利率が発表される時の長期金利がどうなるか?を予想します。
4月17日までに予想される長期金利の動向
機構債の表面利率の発表は4月中旬に予定されています。いつもは20日前後なのですが、今回は天皇陛下の退位が4月30日に予定されていることから4月27日(土曜日)から起算して10連休になるので、3~4日ほど前倒しで発表されるだろうと見込んでいます。
つまり、あと1週間先の長期金利が前月の長期金利よりも上がるか?下がるか?という予想になります。それならば予想できそうな気がします。
17日までの長期金利の変動要素
直近では英国のEU離脱問題が尾を引いているなかでIMF(国債通貨基金)が成長率見通しを下方修正し、市場が悪材料に反応しやすくなっており、長期金利はやや下振れ気味に推移しています。
一方で新元号令和のスタートと天皇陛下即位は言わずと知れた大きなイベントです。
加えて、ゴールデンウィークの10連休を控えており外食や旅行にでかける人が増える中でお祝いムードですから個人消費の伸びが期待されています。
新元号と長期金利の間に理論的な相関関係はありませんが、大きなイベントや節目には結果論としてそれが理由としか言いようのない変動を見せることがあります。今のところ目立った動きは見られませんが、一応頭のスミに入れておくべきでしょう。
決算直前で長期の連休直前=動かない要素
また、この10連休は決算発表の時期にも影響します。4月から5月にかけては例年、会社の決算発表が行われる時期です。投資家が決算発表を見て株式を売買する時期でもあります。
今年は4月27日から5月6日までずっと休みになります。決算発表をつかさどる経理部の立場からすると、この連休前に決算を発表したとして、その後問合せに対する対応が必要になったときにキーとなる人が休みで連絡が取れないというのは避けたいことなのですよ。
なので、多くの会社は連休が終わってから決算を発表するでしょうね。となると、連休前のタイミングはまだ、多くの会社の決算情報が出回っていないタイミングということです。
投資家としては株を売り買いしたくても、その意思決定するための情報がギリギリ出ていないタイミングということになります。
つまり、株を売り買いしにくいタイミングということは、債券もまた売り買いしにくいタイミングということです。この記事を書いている時点で予想しえないような大きな事件が起こったら別ですが、よほどのことが無い限り、上がるにせよ下がるにせよ、金利が動きにくいタイミングと言えるのです。
まとめ~融資実行月によって明暗が分かれるか?
10連休によって、長期金利にあまり大きな動きは無いということになれば、融資の実行が4月か5月かということで大きく明暗が分かれることは無いでしょう。
もし次に【フラット35】の金利が動くとすれば、それは次の5月から6月にかけてかもしれませんね。5月の連休明けには多くの上場企業が決算を発表し、それを材料視した売買が行われる可能性があるためです。
なお、この予想は記事の執筆時点で公開されている情報に基づき、千日太郎が予想をしたものです。したがって実際の金利の動向と異なってくることは大いにあり得ることです。くれぐれも、用法用量を守ってご利用ください。
〇千日太郎さん連載開始について
今後、公認会計士ブロガー千日太郎さんに、住宅ローンや住宅購入に関する動向を何回かに分け、寄稿いただく予定です。
不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ千日さんならではの住宅を買う側、住宅ローンを借りる利用者側の視点で情報発信をしていただきます。
連載第一回目「住宅ローンの基本のキ」。千日さんの考える住宅ローンの基本について教えて頂きます。
※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。
(最終更新日:2020.11.17)