毎日の買い物で発生する「おつり」。これを投資に回す資産運用の方法が注目を集めています。クレジットカードや電子マネーで会計をした際に、あらかじめ設定した額の端数を疑似的におつりとして記録。家計簿アプリや銀行口座と連動し、プールされたおつりが月に一回運用口座に移され、その後運用が開始されるというものです。
最初に設定しておけば、自動でどんどんお金が貯まっていく画期的な新サービス。2017年にリリースされた新しい資産運用ですが、普段「投資」や「運用」といった単語に親しみのない方でも気軽に開始できます。無理なく簡単に資産形成ができるこのサービスがどのようなものなのか、チェックしていきましょう。
アプリ上で簡単に投資できる
おつり投資を提供するサービスはいくつか存在しますが、いずれもスマートフォン上のアプリをベースに投資が行えるよう設計されています。まずはアプリをダウンロードし、各種情報を入力。家計簿アプリとの連動を完了し、会計ごとにいくらのおつりを運用に回すかを設定します。
支払う硬貨・紙幣の種類をどれにするか決めておくことで、会計ごとのおつりの額が変わってきます。例えば、250円のお菓子を買ったとしましょう。100円硬貨で支払った場合は100円玉×3枚で支払いますので、300円-250円=50円がおつりとして記録され、500円硬貨で支払った場合は500円-250円=250円がおつりに。1,000円札で支払えば1,000円-250円=750円がおつりとして自動的に記録されるという形になります。
イメージとしては、現金で会計をした際に発生するおつり(=小銭)をそのまま貯金するのが近いです。設定額を大きくしたり、会計の回数が多いほど運用に回すおつりが増えていきます。
小銭貯金をするかのような形で会計ごとに蓄積されたおつりは月に一回運用口座へ移され、投資信託やETF(上場投資信託)への投資で運用されます。提供サービスごとに運用方法は異なりますが、いずれも投資のプロやAIにお任せできるので、投資に関する知識がなくても問題ありません。運用額の確認もアプリでスマートにできますので、ストレスフリーな投資が出来ます。
おつり投資のメリットとは?
簡単かつ手軽に投資が可能なおつり投資ですが、そのメリットは「自動的に積み立て投資を継続できる」点にあります。積み立てる金額は少額ですので心理的なハードルも低く、普段の生活の中で投資について頭を巡らせなくとも、資産が増えていくことを実感できるでしょう。また、定期的に金融商品を購入していくことは、市場が乱高下した場合の影響を受けにくいという利点もあります。
そして、最も注目したいのが「長期的な資産形成に向いている」という点です。1ヶ月で約1万円のおつりが発生した場合には年間12万円の投資を行うことになりますが、これを20年間続けていれば、240万円の元本が積み立てられます。これに加え、運用による利益が積み上がっていきますので、240万円+α、おおよそ300万円ほどの資産を形成することも不可能ではありません。
日本はまだまだ貯金割合が多い
現在、日本人の総資産における現金・貯金の割合は50%以上となっており、半分以上の資産を貯金に回している状況があります。しかし、資産を銀行に預けておいてもその利率は微々たるもの。上記のシミュレーションを見ても、銀行に預金しておくのであれば、おつり投資で積み立て投資を行った方が賢い選択と言えるのではないでしょうか。
ちなみに、欧米諸国では総資産における現金・貯金の割合は15~35%と言われており、世界的に見ても日本の貯金の割合が多い状況は突出していると言えます。20年、30年後の自分と資産形成を改めて考えた時、おつり投資は身近なひとつの選択肢となり得るのです。
おつりに加え、マイルやポイントも?
日常生活の中で発生するおつりに加え、航空会社のマイルで投資ができたり、各種ポイントでも同様に投資を行う事が可能となっています。「自分のお金」という意識が希薄になりがちで、ついつい使う機会を逃してしまいがちなポイントも投資に回すことが出来れば、より大きな資産形成を目指すこともできるはず。「そういえば余ったポイントがたくさんあったな…」と思い当たった方は、ぜひチェックしてみましょう。
おつり投資とは別に、ポイントのみでも投資できるサービスが多く登場していますが、1社のポイントサービスのみではそもそものポイント数が少ないため、満足のいく資産形成が難しい傾向にあります。おつり投資サービスとポイントが紐づいているものを連動させることで、資産形成の一助とするのがおススメです。
事前に留意すべきポイントとは
サービスを利用するうえでかかる手数料は、事前にチェックしておくべきポイントと言えます。金額は提供されるサービスにより異なりますが、一般的な投資信託の信託報酬と照らし合わせて比較検討すべきでしょう。固定で月額利用料が定められている場合は、運用する金額が少ないほど割高に、多いほど割安になります。
また、余剰資金が少ないという方は、投資をはじめる前に必ず上限設定を行っておくのがベター。生活資金が不足しがちな場合は、想像していたより多くの引き落とし額に後から気が付き、懐が寂しくなってしまうというケースも生まれる可能性があります。
ライトなイメージが先行するおつり投資ですが、投資には元本割れのリスクが付きものだということは忘れてはいけません。おつり投資を行った金額(元金)が、運用により目減りしてしまう可能性があることは頭に入れておきましょう。合わせて、ハイリターンが期待できる投資ではそもそもありませんので、長期的な目線で取り組む心構えが必要です。
日常に投資が浸透する未来
現在のおつり投資は、リアルタイムでおつりを投資に回す形ではなく、蓄積された金額を月に1回まとめて運用口座へ移すという方法がとられています。換言すれば、お買物データに基づいた「データ上のおつり」をコツコツと投資するサービスです。
そんな中、おつり投資サービスを提供する「トラノコ」の推進する『リアルおつり投資』プロジェクトが、金融庁「FinTech実証実験ハブ」支援案件として採用されました。トラノコユーザーであれば、アプリと連動後専用の機器におつりを投入することで、リアルタイムにおつりを投資できる実証実験が2019年2月~4月に行われています。
「キャッシュレス」という言葉が多く見られる昨今ではありますが、日本の日常的な決済方法としてはまだまだ現金が主流。現金を直接投資できるシステムはこれまでのおつり投資をさらに進化させる可能性を秘めています。現在のおつり投資は家計簿アプリとの連動が必須となっていますが、普段利用していないユーザーにとっては設定や管理が少々手間となり、そもそも家計簿をつけることに抵抗がある方も一定数存在します。このような中で現金をリアルタイムで投資可能なシステムが整備されれば、日常の中で投資を行うシーンがますます増えることになるでしょう。
投資生活のスタートに
「投資は力仕事ではない。人一倍、読み、考えなくてはいけない」というウォーレン・バフェット氏の言葉があるように、かつての投資と言えば、専門知識を持った一部の人間のみが行うものでした。
しかし、今日ではITとファイナンス(金融)の融合を意味する「フィンテック(FinTech)」によって、専門知識を持たずとも気軽に投資の世界へ踏み出すことができる環境が整いつつあります。これまで投資未経験の方も、手軽に利用をして投資生活をはじめてみてはいかがでしょうか。
(最終更新日:2019.10.05)