一都三県は、働きやすさや利便性の観点から人口が集中するエリアです。ひとまとめにすれば人口増加が続く一都三県ですが、それぞれにどのような傾向があるのでしょうか?人口データをもとに、今後住みやすいのはどこなのかを考察します。
一都三県の現状は? 人口の増減を確認
東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県で構成される一都三県。南関東とも呼ばれており、一都三県を合わせると人口3,000万人以上になります。
人口推計 平成29年10月
東京都―15歳未満の人口も直近は増加の傾向
東京都の年齢別の人口推移は、下記のとおりです。
東京都人口推移 平成12年~平成27年
東京都の人口は年々増加の一途をたどっていますが、15~64歳の人口は平成22年から平成27年にかけて減少しました。一方で65歳以上の人口は大幅な増加が見られます。15歳未満の人口は増加が続いていることから、出生率は低下していないと考えられるかもしれません。
東京都の人口増加のピークは2025年と予想されており、以降は死亡数が増加し、人口の自然減が進むと考えられています。
千葉県―65歳以上の人口増加が著しい
では、千葉県ではどのような人口の変動が見られるのでしょうか。
千葉県人口推移 平成12年~平成27年
千葉県の人口推移は、東京都よりさらに顕著な64歳未満の人口減少が見られます。一方で総人口は増加していることから、65歳以上の人口増加率が激しいことがわかります。千葉県の特徴は、平成22年~平成27年にかけて15歳未満の人口減少が著しい点です。
埼玉県―高齢化の傾向が大きく見られる
埼玉県も、千葉県と同様の傾向が見られます。
埼玉県人口推移 平成12年~平成27年
平成17年~平成27年にかけて10万人ずつ総人口が増加しているにも関わらず、64歳以下の人口は10年間減少し続けています。65歳以上の人口増加率は、千葉県よりもさらに大きなものとなっています。
神奈川県―人口増加そのものがゆるやか、15歳未満の減少率が少ない
神奈川県も千葉県・埼玉県と同様の傾向はあるものの、詳細な人口増減にはやや違いがあります。
神奈川県人口推移 平成12年~平成27年
神奈川県もゆるやかに総人口が増加する一方、64歳以下の人口は減少しています。しかし、15歳未満の人口減少率は他県と比較してやや低い傾向があります。
一都三県はすべて人口増加の傾向があるものの、少子高齢化の内訳には差がある
このように、一都三県は総人口を見れば増加していますが、15歳未満の人口増加が見られるのは東京都のみです。また、15歳未満の減少率を比較すると埼玉県と千葉県が高く、神奈川県は緩やかな傾向があります。
人口増加に影響を与えている市区町村はどこ? 一都三県の人口増加エリア
では、一都三県の市区町村の人口推移を比較した際、増加の傾向が色濃く出ているのはどこなのでしょうか? 先ほどの全体の傾向もふまえて、確認していきましょう。
東京都で増加の傾向がある区は中央区、千代田区、港区
都内の市区町村別人口増減(平成29年~平成30年)を確認すると、増加率上位5区は順に中央区、千代田区、港区、文京区、墨田区 です。これらの区はいずれも東京の中心部としての利便性を持ち、多くの企業のオフィスを擁するエリアである一方、住みやすさに対する都市開発も進んでいる傾向のあるエリアです。
また、人口と居住形態に関するリサーチ では、人口増加の傾向のある東京のエリアは11階以上の高層マンションが多く、一戸建ての居住地が少ない共通点があるということがわかっています。
人口増加率が多い5区ではそれぞれ高級タワーマンションが複数あることを鑑みると、こうした居住形態との関連性があるとも考えられます。
千葉県で人口が増加する区は東京にアクセスの良いエリア
千葉県の市区町村別人口増減で人口増加数が特に多かったのは、流山市、柏市、八千代市 です。3市の特徴は、いずれもつくばエクスプレス線、常磐線、東葉高速鉄道など都内の拠点にアクセスが容易な路線があり、大型ショッピングモール等の施設がある街。
東京都に勤務する世帯のベッドタウンとして有効な市に、人口が集中している傾向があると考えられます。
埼玉県の人口はさいたま市に集中
埼玉県の市区町村別人口増減では、他の市を大きく引き離してさいたま市の人口増加数が多くなっています。次いで緑区、浦和市、朝霞市の人口が増加していますが、さいたま市の人口増加数はこれらのいずれの市と比較しても2倍以上 になります。
さいたま市内で特に人口数・世帯数共に多いのは北区 です。大宮とのアクセスも良く、埼玉県と東京都をつなぐ各路線の駅が充実している北区は、住みやすさという点で評価されているのでしょう。
神奈川県の人口増加は中原区(武蔵小杉)が要に
神奈川県の市区町村別増減をみると、平成31年1月時点で県全体の人口が減少に転じています。その中で唯一100人以上の人口増加を見せているのが中原区 です。その中原区でもっとも人口増加が見られるエリアは、武蔵小杉でした。
武蔵小杉駅は東急目黒線と湘南新宿線双方の停車駅であり、神奈川県内ながら東京都への約30分以内でのアクセスが可能な好立地です。
再開発によって高層マンションが増えている武蔵小杉周辺。引き続き人気が高まっていきそうです。
徐々に人口差が拡大しつつある一都三県、これから住むならどこが狙い目?
人口増加が見られるエリアを各県でご紹介しましたが、実はこの他の区市町村は人口減少に転じている場所がほとんどです。特に交通の便が悪く、東京都からの距離が遠いエリアになればなるほど、人口減少率が高い傾向が見られます。
では、今後一都三県で住む場合はどんなエリアが望ましいのでしょうか? これまでのデータをもとに考察します。
“ブランド力”が高いエリアは家賃・地価高騰が激しい
先にご紹介したような東京都の中央区、港区や神奈川県の武蔵小杉などは、住みやすさやアクセスの良さなどから人気が集中しています。富裕層向けの新築物件が立ち並ぶ一方、コストを鑑みると住みづらいエリアとも捉えられます。
こういった人気エリアではなく、その周辺エリアを検討すれば平均家賃や地価も下がります。経済的な不安がある場合は、周辺エリアに視野を広げて検討してみましょう。
子育て世帯の住みやすさは公共施設とのアクセスがポイント
一都三県で年少人口が多い傾向のある地区は、いずれも区役所や学校、大型の地区センター等公共施設とのアクセスが良い共通点がありました。また、大きな病院があるエリアにも同様の傾向が見られます。
今後子育てをすることを想定して住まいを検討するのであれば、頻繁に利用する可能性の高い施設との利便性を考えると良いかもしれません。また、大型ショッピングモールや子育て世帯をターゲットにした施設があるエリアも人気があります。
利便性と住みやすさのバランスを考えて一都三県を比較しよう
一都三県はそれぞれ人口増加が見られるものの、各県では人口増加の傾向に特徴があります。住みやすさの条件はライフスタイルによって異なりますが、人口の増減はその町や区の現状を判断する重要な基準になります。今回ご紹介したような傾向をもとに、自分にあった県やエリアを検討してみてください。
(最終更新日:2019.10.05)