最近のマンションでは、「ペットの飼育が禁止か可能か」ということを管理規約にしっかりと規定するようになりました。つまり、マンションでのペット飼育については、マンションによって許可しているところもあれば、禁止しているところもあるのです。この記事では、ペットの飼育を禁止しているマンションで「管理規約に違反した場合」についてご説明します。具体的にどのようなことが起きる可能性があるのか、しっかり確認しておきましょう。
マンションでのペット飼育は禁止が当たり前?
分譲マンションでペットを飼育することは、決して簡単なことではありません。実際、分譲マンションのうち「ペットの飼育を認めている」のは全体の2.9%(※)と、とても少ないのです。
ペットの社会的地位が向上し、ペットを「家族の一員」として見る人たちが増えてきたとは言え、まだまだ広く認められているとは言えません。これは、マンションという建物の性質も関係しているでしょう。マンションは、1つの建物にさまざまな価値観を持つ人たちが暮らしています。中にはペットを歓迎しない人もいるため、このような数字になるのです。
ただし、これはペット飼育を「全面的」に認めている場合の数字です。限定的に認めているマンションで言えば、その数字は42.5%(※)にものぼります。
ここで言う「限定的」とは、“ペットの種類や大きさについての条件がある”という意味です。「ペットは飼えますか」と伝えて断られてしまっても、きちんとペットの種類や大きさについて説明をしてみましょう。限定的にペットを認めている条件に当てはまれば、ペットと一緒に暮らすことができます。42.5%という数字からも、ペットと暮らせるマンション探しは、決して難しいことではないと言えるでしょう。
マンションがペットの飼育を禁止する理由
マンションがペットの飼育を禁止するということは、禁止する理由があるということです。
その理由として、まず「鳴き声が近隣の住戸の迷惑になる」ということが挙げられます。ペットの鳴き声というのは、思っている以上に響くものです。たとえば、寝ようと思ったタイミングで鳴き声が聞こえてきたら、気になって寝ることができません。
また、「共用スペースを汚される」という理由もあります。マンションの住民が共同で使っているスペースを汚されたくないので、「ペットは禁止」というものです。
それから、「ペットの臭いを気にする人もいる」という理由もあります。どんなに清潔にしていても、臭いに敏感な人は、ペット特有の臭いが気になってしまうようです。
そして、最後に挙げる理由は「ペットアレルギーの住人もいる」というものになります。ペットが原因でアレルギーが出てしまい、家にいてもゆっくりできないというのは、非常につらいものです。その原因が自分で飼っているペットでないのならば、尚更でしょう。
マンションのペット飼育でよくあるトラブル
マンションでペットの飼育をする場合、起こり得るトラブルがいくつかあります。
1つめは、「鳴き声がうるさい」というものです。落ち着けるはずの家にいるのに、鳴き声によってそれを妨害された、と訴えるものになります。
実際、上階の犬の鳴き声や足音により下階の住民が不眠になったとして、損害賠償と犬の飼育禁止を求めた訴訟がありました。この例では、実はマンションの管理規約ではペット飼育を禁止していたのです。そのため、飼育禁止という「規約の違反」と、吠え声による「健康被害」を訴えました。
それから、2つめは「放し飼いで危険を感じる」というものです。危害を加えてきそうなペットが自由に動き回っているのを目にすれば、自分の身に危機感を覚えるでしょう。
そして、3つめは「噛みつきや飛びつきでケガをする」というものです。実際に被害が出てしまうと、よりトラブルに繋がりやすくなると言えるでしょう。
内緒で飼っていても気づかれる可能性が高い!
「ペット飼育が禁止だけど、内緒で飼えば気づかれないのではないか」と考えている人、実際はそんなに甘くありません。実は、ちょっとしたことからペットを飼っていることが分かってしまう可能性が高いのです。
まず、鳴き声を発するペットを飼っている場合、その鳴き声によって存在が分かってしまいます。それから、室内でペットを自由にさせている場合、その動き回る音によって下の階の住人が気づきやすくなるでしょう。
また、ペットの中には、どんなにきれいにしていても独特の臭いを持つものもいます。そうした臭いから気づかれてしまう可能性もあるのです。
そして、ペット飼育が分かってしまう最後の理由が、ゴミ捨てのときです。ペットを飼育していれば、当然それに関連したゴミも出るでしょう。そうしたペット用品をゴミ捨てに出しているときに、マンションの住人に目撃されてしまうというパターンです。
内緒にしていたペット飼育がもしも見つかったら?
ペット禁止の分譲マンションにおいて、もしペットを飼育していたのが見つかってしまった場合、いくつかの結末が考えられます。ただ、対応については、まず「マンションの管理規約による」ということを理解しておきましょう。
では、実際に見つかってしまったときですが、まずは飼育禁止についての勧告を受けることになります。その際にペットを手放せればいいのですが、もし勧告に従わずそのまま飼育を行った場合、訴訟にいたる可能性もあるでしょう。
管理規約でペットの飼育を禁止しているマンションでは、その規約を守らない場合、ペット飼育の差止請求が行われることもあります。これは、区分所有法の第6条と第57、58、59条によって定められているものです。これにより、最悪の場合にはマンションを出ていかなければならなくなります。
管理規約を変更できればペット飼育は可能
もし、いま住んでいるマンションや住みたいと思っているマンションが「ペット不可」であったとしても、それを変えられる可能性があります。マンションの管理規約を変更すればいいのです。「ペットの飼育が禁止か可能か」というのは管理規約に規定されているものなので、それを変えてしまえば、公にペット飼育が可能となります。ただし、管理規約を改正するためには、特別決議事項において住民の4分の3以上の賛成を得ることが必要になります。
また、もしマンションの管理規約に「ペット飼育不可」ときちんと規定されていない場合にも、飼育ができるよう定める必要があるのです。この場合にも、住民の4分の3以上の賛成を得れば、規約を変更することができます。ただ、「住民の4分の3以上の賛成」といっても、実際のところはそんなに簡単なものではありません。そもそも、そのマンションの中にペットを受け入れてくれる住人がいなければ、賛成は集まらないのです。
管理規約はマンションの法律! ペットを飼育できるマンションを探そう
管理規約は、マンションの法律とも呼べるものです。そんな管理規約を無視して内緒でペットを飼ったとしても、気持ちはずっと落ち着かないまま過ごすことになるでしょう。ペットを飼っていることが気づかれないように日々気を遣い、神経をすり減らしながら生活していても苦しいだけです。それに、万が一気づかれてしまったときのリスクも非常に大きいものになります。また、せっかく愛しいペットと暮らすならば、「ペットと一緒にもっと堂々と暮らしたい」と思うでしょう。
管理規約に背いてペットを飼い続けるよりも、ペットと一緒に暮らせるマンションを見つけた方が、ずっといいはずです。ペットの飼育が認められているマンションでは、同じようにペットを飼っている人たちも住んでいます。そうした仲間がいることは、マンションでペットを飼うことの安心感につながるでしょう。「ペットと安心して暮らすためにベストな方法は何か」ということをいま一度しっかり考えてみてください。飼い主とペットが、一緒にのびのび暮らせる場所を探していきましょう。
(最終更新日:2019.10.08)