2013年4月1日から2019年3月31日までの時限措置だった「教育資金の一括贈与の非課税措置」が2019年4月から見直され、利用できる期間も2年間延長されることになりました。一人あたり1,500万円までの贈与が非課税になるこの制度の改定後の仕組みがどうなるのかを確認しておきましょう。
1,500万円までの教育資金一括贈与に税がかからない!
贈与に関しては、原則として、1/1~12/31の間に110万円までの贈与を受ける場合は贈与税がかかりません。しかし、110万円を超えると課税されます。たとえば、実の親や祖父母(直系尊属)が子どもや孫(贈与年の1/1時点で20歳未満)に、1年間で1,000万円の贈与をすると、子どもや孫は231万円の贈与税を払わなければなりません。
しかし、「教育資金の一括贈与の非課税措置」を活用すると、一定の条件を満たす教育目的の資金であれば、1,500万円までの贈与が非課税になります。通常の贈与の非課税枠110万円よりも非課税枠が大幅に拡大されるため、まとまった資金の贈与を有利に受けることができます。
なお、実の親や祖父母が、子どもや孫の教育費をその都度支払う場合は、もともと贈与税の対象にはなりません。一方、たとえば、大学入学時に、大学4年間でかかる費用を子どもや孫に一括して渡すような場合には、贈与税の対象になります。
この制度は、高齢者が保有する資産を若い世代へ移転させて消費を促す経済対策として、2013年4月1日にスタートしました。当初は2019年3月31日には終了する予定でしたが、2年間の延長が決まり、2021年3月31日までの贈与で利用可能になりました(2019年度税制改正)。また、合わせて内容が一部見直されています。
贈与する実の親や祖父母が一括して振り込む
この制度を利用する場合には、まず、贈与をする実の親や祖父母が、贈与を受ける子どもや孫の名義で開設した金融機関の専用口座に資金を一括して振り込みます(教育資金管理契約を金融機関と締結)。
資金は、贈与を受ける子どもや孫ごとに、1,500万円までが非課税となります。なお、学校等以外に支払われる場合は、500万円が非課税となります。
教育資金の使いみちは、金融機関が利用者から提出された領収書等をチェックし、保管します。
なお、2019年4月1日以降、前年の合計所得金額が1,000万円を超える子どもや孫は、この制度による贈与を受けることが不可となりました。
教育資金の範囲は?
教育資金の範囲は、以下のように定められています。
【A】学校等に対して直接支払われる次のような金銭
1.入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料など
2.学用品費、修学旅行費、学校給食費など学校等(※1)における教育に伴って必要な費用など
※1学校等とは、学校教育法上の幼稚園、小・中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校、大学、大学院、専修学校、各種学校、外国の教育施設、認定子ども園又は保育所など
【B】学校等以外に対して直接支払われる次のような金銭で社会通念上相当と認められるもの
役務提供又は指導を行う者(学習塾や水泳教室など)に直接支払われるもの(※2)
1.教育(学習塾、そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
2.スポーツ(水泳、野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)その他教養の向上のための活動に係る指導への対価など
3.1の役務提供又は2の指導で使用する物品の購入に要する金銭
上記以外(物品の販売店など)に支払われるもの
4.A-2に充てるための金銭であって、学校等が必要と認めたもの
5. 通学定期券代
6. 留学渡航費、学校等に入学・転入学・編入学するために必要となった転居に伴う交通費
(文部科学省のホームページより)
なお、2019年7月1日以降に支払われる資金で、贈与を受けた者が23歳に達した翌日以降に支払われる上記※2の金銭については、教育資金の範囲から除外されることになりました。ただし、雇用保険の教育訓練給付金の支給対象となる講座の受講費用は除外されません。
教育資金管理契約は、一定の時期に終了する!
今回の制度改定がされる前までは、贈与を受けた者が30歳に達すると教育資金管理契約が終了し、金融機関の口座も終了するとされていました。しかし、今回の改定で、終了する時期が変更されました。
贈与を受けた者が30歳に達した場合でも、
・学校等に在学している期間
・教育訓練給付金の対象となる講座を受講している期間
は終了しないことになりました。
そして、上記の期間がなかった年の12月31日、または、贈与を受けた者が40歳に達する日のいずれか早い日に終了することになりました。つまり、最長40歳までこの制度の適用を受けることが可能になります。なお、この変更は、2019年7月1日以後に、贈与を受けた者が30歳に達する場合に適用されます。
まとめ
「教育資金の一括贈与の非課税措置」は、祖父母が、相続税の節税対策などの目的で、実の孫にまとまった資金を生前贈与する方法として活用する例が多くありました。今回の改定では、相続税の節税対策を制限する内容も一部追加されていることに注意が必要です。
いずれにせよ、祖父母が孫の教育資金の一部を肩代わりしてくれれば、親にとっては助かります。家計にゆとりが生まれ、住宅資金や自分たちの老後資金準備、ローンの繰り上げ返済等をすることができます。まずは、祖父母と親が制度の存在と概要を知って共有することが、活用の第一歩になります。
(最終更新日:2019.10.05)