デュアラーとは?二拠点生活(デュアルライフ)をお金をかけずに楽しむ方法

仕事がある平日は都心部で暮らしながら、週末だけ田舎暮らしをするなど、都市部と地方でのデュアルライフ(二拠点生活)を送るデュアラー(二拠点生活者)がいま注目を浴びています。リクルートホールディングスが発表した「2019年トレンド予測」に「デュアラー」が選ばれ、今後この生活スタイルを送る人々も増えていくことが予想されます。思い思いの形で自由な暮らし方を実現するデュアラーの人々がなぜいま増えているのか、その理由やデュアラーの実態について、実際に二拠点生活を楽しむ人たちに聞いてみました。

デュアラーの分類は6種類

リクルート住まいカンパニーでは、デュアラーを「趣味満喫デュアラー」「自然癒されデュアラー」「ふるさとデュアラー」「プレ移住デュアラー」「のびのび子育てデュアラー」「地域貢献デュアラー」の6種類に分類しています。

趣味満喫デュアラー

サーフィンや農業などの趣味を楽しむために、よく通うエリアがあり、拠点を持ってより深く楽しみたい。

自然癒されデュアラー

とにかく都会の喧騒(けんそう)から離れて、自然に触れたり、のんびりした時間を過ごしたりして、癒されたい。心を潤したい。

ふるさとデュアラー

都会育ちで故郷と呼べる場所がない、もしくは自分や配偶者の故郷を大切にしたい。地元の人と交流したいという願望も。

プレ移住デュアラー

いつかは田舎に移住したいと考えているが、地域コミュニティになじめるかなど、移住前に試してみたい。

のびのび子育てデュアラー

自然に触れるようなさまざまな体験をさせたり、多世代交流で、多様な価値観に触れるような、のびのびとした子育てをしたい。

地域貢献デュアラー

代替の利く職場環境で、自己承認欲求が満たされない。東京で培ったスキルを活かして、地方で地域貢献し自身の存在意義を感じたい。

(「2019年トレンド予測 住まい領域」資料より引用 )

デュアルライフという生活スタイルは、以前は時間のあるリタイア組など、シニアの富裕層がおこなうものでした。今回デュアラーが「2019年トレンド予測」にも選ばれたのは、デュアルライフを20代~30代のビジネスパーソンやファミリーでおこなう人が増えていることが影響しています。

居住にお金をかけずに二拠点生活ができるようになった

地方では空き家問題が顕著なため、安い物件なら月2万円程度で一軒家を借りることも

現在増えている20代~30代のデュアラーの特徴は、二拠点目の居住の多様化。従来、高額な別荘を購入するなど、お金がかかるイメージだった二拠点生活は、地方物件の価格低下やシェア文化の広がりにより、あまりお金がない若い世代でも二拠点目を持つことが容易となりました。

「地方に拠点を置くことで住居にかかる費用を抑えることができるので、その分のお金を東京への交通費に充てることができます」(Sさん)

Sさんは、鹿児島と東京の二拠点生活を送るデュアラー。鹿児島に拠点を置くことで固定費を抑え、月に1~2回東京で活動する際の交通費を捻出しています。

地方では空き家問題が顕著なため、安い物件なら月2万円程度で一軒家を借りることもできます。友達4人で借りてしまえば、一人5000円で地方に拠点を持てる計算に。家にいない間は民泊として貸し出せば、限りなくコストを下げることも可能です。

また、住居のサブスクリプションサービスが増加していることもデュアラー増加の後押しとなっています。サブスクリプションとは、月額など定額制でお金を払うことでサービスを利用できる仕組みのこと。株式会社アドレスが月4万円から提供する、登録拠点なら全国どこでも泊まり放題になる定額制多拠点コリビングサービス「ADDress」や、株式会社Little Japanが提供する月1.5万円から全国のホステルに泊まり放題になる「ホステルパス」などがあります。

参考記事:”定額”で”全国住み放題”の多拠点コリビング(co-living)サービス。第一弾は11拠点

居住にお金をかけずに拠点を増やす選択肢が増えてきたことで、若い人たちでも気軽に二拠点生活を送ることが可能になりました。それゆえ、かつて富裕層だけの贅沢だったデュアルライフも先述したデュアラー6分類のような多様な目的とともに行われるようになったのです。

社会全体でのフリーランスの増加の影響も

「作業環境を変えることで気分を切り替えやすい」といった理由から、都心の喧騒から離れた場所で二拠点生活を行っているという声も

年々その数が増加しているフリーランスにも、デュアラーは増えています。フリーランスのWebディレクターとして、地方と東京の二拠点生活を送るMさんは、「これからはフリーランスの中で二拠点や他拠点生活が増えてくる」と予測します。

「フリーランスで働く人の多くは、フリーランスという場所に縛られないワークスタイルを選択していても、東京から離れるきっかけがなかったんです。しかし、誰でも全国に拠点を持てるようなサービスができたことで、きっかけが生まれました」(Mさん)

フリーランスとして働くうえで、避けることが難しいのが孤独感。会社に所属せず、どこにでもフットワーク軽く移動できる反面、個人で働く孤独を感じるというのはよくある話です。最近では、フリーランス同士でチームのように働くケースも増えてきました。そういった中で、人との交流やつながりを求めて、地方と東京の二拠点生活を行う人も増えているようです。

フリーランスが東京と地方で二拠点生活を送るメリットは他にもあります。それは、場所をずらすことで生まれる仕事があるということ。

「たとえば、都内だとカメラマンは飽和状態ですけど、地方ではまだポジションが空いていたりするんです」(Mさん)

もちろん、その人の職種や仕事の内容によるところもありますが、拠点を増やすことで新しい仕事を生むことにつながるのです。デュアラーの6分類では「地域貢献デュアラー」のスタイルがこれに近いでしょう。自分のスキルを活かせる場は東京だけではないと、地方に活躍の場を広げる人たちの存在もあるのです。また、新しい仕事を生むためとまでいかずとも、「作業環境を変えることで気分を切り替えやすい」といった理由から、都心の喧騒から離れた場所で二拠点生活を行っているという声も挙がりました。そのような意味では、住居のサブスクリプションサービスを活用した、二拠点生活ならぬ他拠点生活が増えていくことは想像に難くありません。

「場所に完全に溶け込むことができない」という声も

各拠点先の人々とどのように関係性を築いていくべきかが課題

一方で、二拠点生活だからこその悩みというものも存在します。それは「その場所に完全に溶け込むことが難しい」ということ。

デュアラーという生活スタイルが増えてきてはいるというものの、いまだマイノリティであることには違いありません。おまけに、二つの拠点を行き来するデュアラーと複数拠点を持たない人々との生活スタイルにはズレが生じます。たとえば、地方拠点で月2回だけ東京で生活する人にとって、東京の人と会うことができるのはとても限られています。東京に出たときにたまたま会えるとは限りませんし、逆に誘いを受けても東京にいないために応えられない場合も多いでしょう。

メールやSNSなどで、離れていてもコミュニケーションは取れるため、それだけで関係性が希薄になるということは少ないかもしれませんが、直接的なコミュニケーションの回数は減ってしまいます。

コミュニケーションの問題では、「拠点が複数あるために、恋愛関係に発展する相手が見つかりにくい」というデュアラーならではの悩みも。一つの場所に腰を落ち着けていないからこそ、地域を越えてたくさんの人とつながることができる反面、一緒に過ごせる時間が減ってしまうので、深い関係を築くことの難しさもあるようです。

拠点を増やすことでつながりを広げることができても、「その場所に完全に腰を据えている人たち」と比べると関係性が薄くなりやすいデュアラーという生活スタイル。それがメリットとなる人もいるかもしれませんが、そこに物足りなさを感じている人にとっては、各拠点先の人々とどのように関係性を築いていくべきかが課題となるでしょう。

(最終更新日:2021.03.29)
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