これから出産を控えている方は、居住エリアの待機児童数が気になるところですよね。今回は、神奈川県の待機児童数について。一体、神奈川県内で待機児童が多いのはどのエリアなのでしょうか。神奈川県の待機児童の実態を、市区町村の待機児童数を比較しながらチェックしていきましょう。
神奈川県は待機児童が年々増加している!その理由は?
神奈川県の待機児童数は、2010年~2016年にかけて大幅な減少が見られたものの、2016年~2018年は再び増加しています。なぜ神奈川県の待機児童数は増えているのでしょうか?データをもとに考察していきましょう。
保育所は急増しているにも関わらず、待機児童は減らない神奈川県
神奈川県の発表資料(※「保育所等利用待機児童数の状況について」:平成30年6月8日)によると、2018年の待機児童数は867人、前年比では111人の増加がみられました。その背景には、保育所等の利用申込数の増加があります。ただし、保育所が定員オーバーしたまま増えていないというわけでもありません。
平成28年は1,904カ所だった県内の保育所数は、平成30年には2,239カ所と大幅に増加しており、定員数も138,721名から154,006名に。これだけ保育所等の整備を続けていても、なお利用者の需要が上回ってしまっているのです。
3歳未満の待機児童が9割以上
神奈川県の待機児童の91.8%は3歳未満(※「保育所等利用申込・入所待機状況」:平成30年4月1日現在)という特徴があります。つまり、3歳未満の児童を受け入れる体制の準備が整っていないことが待機児童数の増加を招いているということです。
神奈川県の平均年齢は45歳。実はこの年齢は全国の平均年齢と比べて若く、65歳以上の人口比率の低さも全国第4位(※「平成27年国勢調査人口等基本集計結果(神奈川県の確定数)」:平成27年10月1日現在)に入っています。神奈川県は全国と比較して若い世帯が多い傾向があり、それだけ3歳未満の児童の預かりに対するニーズも他県より高くなっていると考えられます。
就業者数が増えていることが原因?
こうした神奈川県の特徴と加えて、県内の労働者増加も待機児童数に影響している可能性があります。直近の労働力調査(※「神奈川県労働力調査四半期平均結果(平成30年10月から12月)」)によると、神奈川県の労働力人口は67,000人増加しています。特に、男女別で比較した際の就業者数の増加を見ると女性の増加率が高い特徴も。女性の非労働者人口が38,000人減少したこともふまえると、県内の女性全体が就業傾向にあるのでしょう。
男女共に働ける環境を求め、子どもを預けるニーズが増えている結果、待機児童数が増え続けているのかもしれません。
神奈川県の待機児童数の実態は?市で比較
では、神奈川県のそれぞれの市やエリアでの待機児童数にはどういった傾向があるのでしょうか? 待機児童数が多い市、少ない市、それぞれランキング形式でご紹介します。
待機児童者数最多は藤沢市、保留児童数最多は横浜市
神奈川県の待機児童数上位5市は下記のとおりになります。
平成30年 神奈川県市町村別待機児童数
ここで確認しておきたいのは、待機児童数とは分けて発表されている保留児童数です。保留児童とは、「保育所等に入所を希望したが利用が実現しなかった」と定義される状態です。待機児童と同義だと捉える方もいるかもしれませんが、待機児童はさらに条件が重なった状態を指します。保留児童になった結果、さまざまな保育事業の利用を検討してもなお難しく、保護者が育児休暇を取得できない状態であれば待機児童として認められるのです。
こうした定義をふまえて改めてランキングを見ると、保留児童が圧倒的に多いのは横浜市であり、今もなお3,000人以上の保育サービスを利用できない子どもがいるということがわかります。
待機児童数の市は10市、減少数が大きいのは大和市
神奈川県内でも待機児童数0の市はあります。三浦市、大和市、中井町など10市町村がこれにあたりますが、人口統計と併せてみると人口減少や高齢者層の増加がみられる地域とも重なりますので、単純に子育てをする世帯が少ないとも言えるでしょう。
そんな中、若い世帯の人口も一定数あるうえで、待機児童0を3年間保っているのが大和市です。他エリアと比較して出生率が高い特徴(※「平成26年神奈川県衛生統計年報」)もある大和市は、県内で比較的子育てしやすい環境であると言えるかもしれません。
横浜市に集中する未就学児数が待機児童数に影響?
0~4歳児の人口を神奈川県内の各エリアで比較したとき、下記のような差が見られます。
このデータからもわかるように、待機児童の9割以上を占める3歳未満の幼児が横浜市に集中していることが、待機児童数や保留児童数に影響していると考えられます。
待機児童数が多くても人気なのは横浜市!神奈川県の子育ての実態
では、実際に神奈川県で子育てをするならどのエリアが良いのでしょうか? 待機児童数や保留児童数のことを考えると先ほどの上位ランキングの市は避けたいところですが、その他の条件もふまえると、そうとも言い切れないようです。
子育てしやすい町づくりが進む横浜市は人気エリアが集中
保留児童数が圧倒的に多い横浜市ですが、神奈川県内では子育てするエリアとして評価が高いようです。その理由は、質の高い教育ができる環境にあります。
特に人気のエリアは横浜市青葉区です。平成26年度市立小学校等卒業予定者の進路状況調査によると、青葉区は私立中学校への進学率が最も高く、進学塾も多いエリアとして注目されています。さらに、スポーツや音楽などの習い事をするためのレッスン教室も多く、英才教育に力を入れたい家庭にとっては魅力的でしょう。
また、都筑区も若い世帯が多く、大規模な公園などのびのびとした子育てを実現できる環境に人気が集まります。また、ベビーカーの通りやすい町づくりなど設計に対する評価も高い点が特徴です。
このように、横浜市には子育てがしやすい条件のそろったエリアが多いため、3歳未満の子どものいる世帯が集中しやすい傾向があると考えられます。
都心とのアクセスが良い点も魅力
横浜市をはじめとした子育て世帯が集中するエリアは、東京へのアクセスが良い点も人気のひとつ。ちなみに、埼玉県、千葉県、神奈川県の3県を対象に行われたアンケート調査によると、横浜市は東京へのアクセスしやすさ1位にランクインしています。都内で働きつつ、家賃を抑えて良い環境で家庭を築くために神奈川県を選ぶ世帯も多いのかもしれません。横浜市に3歳未満の子どもがいる世帯が集中しやすいのは、こうした条件がそろっていることも要因のひとつでしょう。
魅力的な環境とともに高まる保育ニーズへの県の対応
神奈川県は子育てをしやすいさまざまな環境が整い、なおかつ東京からのアクセスも良い子育てに適した県です。一方、子どもを預けられる保育所等の施設の準備や人材確保が間に合わないことで待機児童数の増加が続いている側面もあります。
県ではこうした現状に対して、保育士育成環境の強化や保育所等整備費への資金的援助などの政策を発表しています。今後、こうした動きが活性化されることで保育所等の整備が拡充されれば、神奈川県はより子育てしやすい県になることでしょう。
神奈川県で今後子育てをするなら、待機児童数を見たうえで検討を
神奈川県では3歳未満の子どもを預ける施設の不足が待機児童数に影響を与えている現状があります。県での対策は進んでいますが、今すぐに子どもを預けて両親共に働くことは難しいかもしれません。
今後神奈川県で子育てを検討する場合は、各エリアの待機児童数、保留児童数を確認し、どのように子育てを進めていきたいかを長期的に計画したうえで、住むエリアを検討してみるといいかもしれませんね。
(最終更新日:2019.10.09)