マイホームは人生で最大の買い物です。「買った後で問題が見つかったらどうしよう」と不安に思う人も少なくないでしょう。そこで知っておいていただきたいのが住宅瑕疵(かし)担保責任保険です。これは住宅購入後に瑕疵(欠陥や傷のこと)が見つかった場合、保険金が支払われ補修費用を賄うことができるものです。住宅購入を考える上で知っておきたい住宅瑕疵担保責任保険についてご説明します。
住宅瑕疵担保責任保険とは?
マイホームの購入を考えた時に、「買った後で住宅に問題が見つかったらどうしたらいいのだろう」と不安になったことはありませんか?
そんな万一の場合に備えるのが、住宅瑕疵担保責任保険です。
瑕疵(かし)とは、欠陥や傷のことです。自動車保険で車の修理をするように、住宅の瑕疵に対する補修代金を瑕疵担保責任保険で賄うことができる保険となります。
床に穴が空いていたり、天井に大きな雨漏りのあとがあったりすれば、一般の人でもその住宅に欠陥があることに気づくことでしょう。ですが、住宅には目に見えない欠陥もあるものです。この住宅瑕疵担保保険は、住宅の目に見えない欠陥、隠れた問題があった場合に備える保険と考えておいてください。
生命保険の保障内容が決められているのと同様に、住宅瑕疵担保保険においても保険の対象になる瑕疵は決められていますし、保険金額の上限もありますが、それでも購入者を守るための保険として有意義なものといえるでしょう。
一般消費者にとって住宅は瑕疵が見えにくく、入居してから問題に気づく例も少なくありません。購入後に備える保険の意義は大きいでしょう。
住宅瑕疵担保保険は誰が加入するの?
住宅の欠陥に備える保険と聞くと、保険料が高いのではないかと不安になる人もいらっしゃることでしょう。安心してください。新築住宅の場合、住宅事業者(住宅の建築を請け負う事業者、新築住宅の販売を行う事業者のこと)に加入義務があるため、住宅を購入する人が加入の手続きをする必要はありません(中古住宅については記事の後半でご説明します)。
ここで住宅瑕疵担保保険の背景についてご説明しておきましょう。
新築住宅の欠陥については、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)」によって、「引き渡し後10年以内に見つかった場合は、売主である販売会社や建築会社等(住宅事業者)が無償補修などをする」ことが定められています。この義務を瑕疵担保責任といいます。
住宅事業者が瑕疵担保責任、つまり「10年間補修等の義務」を果たすためには多額の資金を確保しておく必要があります。ただし、すべての事業者がそれだけの資金的余裕があるとは限りません。ですが、住宅瑕疵担保責任保険を活用すれば、負担は保険料のみですみます。しかも、住宅瑕疵担保責任の保険金額は、補修費用の8割から全額となっており、瑕疵による補修費用を保険金でほぼ賄うことができるのです。
なお、先ほど住宅事業者には住宅瑕疵担保保険の加入義務があるとご説明しましたが、保険に加入しない場合には、「供託」によって10年間の補修義務に備えることが義務付けられています。供託とは瑕疵が生じたときに備え、所定の保証金を法務局等に供託(預ける)ことです。保険でも供託でも、消費者が受ける恩恵は変わらないのでここでは供託についての説明は省きます。
瑕疵の補償対象は?
瑕疵担保責任保険では補償対象が限定されています。木造戸建ての新築住宅を例にしてご紹介しましょう。瑕疵の対象は次の表のようになっています。
【瑕疵担保責任保険の補償対象】
瑕疵の定義は、【引き渡し時の新築住宅の品質・性能から考えて「妥当な性能」を有していなかった(もしくは異なっていた)場合】とされています。
とはいえ、一般の消費者にとって住宅の性能が妥当なのかどうか見極めるのは難しいことでしょう。ですが、新築住宅が瑕疵担保責任保険に加入する場合は、保険法人の検査員による現場検査を受けることになっています。竣工前に検査を実施してもらえるのは安心ですね。
すでにご説明したように、一般的に瑕疵担保責任保険は住宅事業者が加入します。また、保険金額の請求・受取りも住宅事業者が行います。
住宅を購入した人が住宅の瑕疵を発見したら、住宅事業者に補修を請求し、無償で補修を受けられる仕組みです。仮に、住宅購入者が住宅瑕疵担保責任保険の存在を知らない場合でも、住宅事業者に補償を求めれば無償で修理を受けることができます。しかし、知らずに自分で修理してしまったなどということのないように、保険制度の概要や法的な根拠については知っておきたいものです。
なお、住宅瑕疵担保履行法では、住宅購入時には宅建業者が住宅購入者へ住宅瑕疵担保責任保険について説明する義務を定めています。住宅事業者からよく話を聞き、不明点は解消しておきましょう。
住宅事業者が倒産してしまった場合は?
繰り返しになりますが、補償対象の補修費用については保険金で賄えるので、購入者の金銭的負担はありません。しかし事業者が倒産している場合はどうなるのでしょうか。
これについても安心してください。事業者が倒産している場合や、補修を依頼しても対応してもらえない場合は、購入者が瑕疵担保責任保険を販売している保険法人に保険金を請求できるようになっています。
とはいえ、瑕疵が瑕疵担保責任保険の対象であるかどうか、専門家でないと判断しにくいのが難点です。迷ったときはまず、加入している保険法人に相談しましょう。なお、瑕疵担保責任には補修義務だけでなく、瑕疵によって生じた損害の賠償責任も含みます。
なお、瑕疵担保責任保険の保険を販売している法人を「住宅瑕疵担保責任保険法人」といいます。瑕疵担保責任保険を取り扱うには国土交通大臣の指定が必須なので、指定を受けた法人は特にこういった呼び方をするのです。2019年3月現在、保険法人は全国に5つあります。保険料やサービスに差異はありますが、瑕疵担保責任保険の仕組みは各保険法人で共通となっています。
住宅瑕疵担保責任保険は中古物件やリフォームにも対応
ここまで、新築物件についてご説明してきましたが、瑕疵担保責任保険は中古物件やリフォーム時にも対応しています。ただし、新築物件とは違いがあるので注意したいところです。
中古物件は品確法の対象外ですから、瑕疵担保責任保険に加入する義務はありません。また、瑕疵担保責任については、売買契約の際に定めるのが一般的です。売主が個人の場合、大きな責任を負うことが難しいので瑕疵担保責任は免除するか数ヶ月程度の短期間にする場合が多いようです。一方、売主が宅建業者の場合は、宅地建物取引業法で2年以上の瑕疵担保責任を負うことが定められているため、最低2年間は補償を受けることができます。まずはこのことを知っておくと安心ですね。
中古物件で瑕疵担保責任保険に加入するには、中古住宅の検査と保証がセットになった既存住宅売買瑕疵保険に加入することになります。新築住宅の場合と同様に、保険法人の検査を受けて合格した住宅が保険に加入できます。検査で不具合が見つかった場合には、その不具合を補修したのちに保険に加入することとなります。
売主が個人の場合には、売買交渉の際に売主と話し合って既存住宅売買瑕疵保険に加入するかどうかを決めてください。実際に保険に加入するのは住宅の検査を行う検査事業者になります。
売主が宅建事業者の場合は、既存住宅売買瑕疵保険に加入できるかどうかを業者に確認してみましょう。事業者が中古物件の売買で瑕疵担保保険を利用するには、保険法人の審査を受けて登録することが必要です。一般社団法人住宅瑕疵担保責任協会のサイトで、登録事業者を検索することができるので取引を考えている業者が登録事業者かどうか確認してみてください。
リフォームで瑕疵担保責任保険の補償を受けることもできます。その場合、中古物件の場合と同様に、保険法人の検査を受けた登録事業者を選ぶことが必須です。こちらも一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会のサイトで検索可能ですので、事前に確認しておきたいです。
なお、中古住宅やリフォームの場合、補償期間が短くなるので注意してください。
【瑕疵担保責任保険の補償期間】
瑕疵担保責任保険は本来事業者の保険です。しかしマイホーム購入者にとっても、不安を軽減してくれる有益な保険です。より安心してマイホームを購入するために、内容を知っておくといいでしょう。制度を理解しておけば、万が一事業者が倒産してしまった場合にも迅速・かつ適切に補償を受けることができるはずです。
(最終更新日:2020.11.05)