「通勤時間は短ければいい」と考える人は多いかもしれませんが、通勤時間と生活の関係性を深く見てみると、必ずしもそうは言いきれません。通勤時間「1時間以上」と「15分未満」の生活を比較するとともに、暮らしとの関係性について紹介します。
通勤時間1時間以上の人は東京23区内で28.8%
通勤時間と幸福度の関係性や、移動時のストレスの調査など、移動時間が人にもたらす影響についてさまざまな話題が注目されています。特に、東京23区内の通勤ラッシュによる混雑状態は、国外と比較しても非常に過酷といえるでしょう。通勤時間を短くしたいと願う人も多いと思いますが、皆さんの通勤時間はどれくらいですか?
ちなみに、関東圏に住まい、通勤時間に1時間以上かけている人は、関東圏在住者全体の28.8%(※)。都心の約3人に1人が、通勤時間に1時間以上の時間をかけています。
一体、なぜ出勤に1時間もかかる場所に住んでいるでしょうか。また、どのような影響をもたらすか…そんな出勤時間と暮らしの関係の疑問を紐解いていきます。
(※ 住宅・土地統計調査 平成25年住宅・土地統計調査 確報集計より抜粋)
通勤時間1時間以上の大半が持ち家住まい
まず、通勤時間の差にはどんな関連があるのでしょうか? 通勤時間の差と生活様式の関連性をデータから読み取ると、住まいが“持ち家”か“賃貸”かの違いが通勤時間に影響をもたらすことがわかりました。
通勤時間15分未満では賃貸の住まいを選択している人が多い一方、30分以上になるにつれ徐々に持ち家住まいの割合が増加します。特に通勤時間1時間~1時間30分では、持ち家住まいが賃貸住まいの2倍以上に。1時間30分以上の通勤時間がかかる場合、賃貸の住まいを選ぶ人はほぼいなくなります。
移動時間をとるか? 家をとるか?
通勤時間が短い代わりに都心の賃貸物件を選ぶか、長い時間をかけて通勤してでも持ち家を買うか? どちらを良しとするかは、人によって違ってくるでしょう。また、選ぶ判断は経済状況や家族構成などの条件でも変わっていくものです。
2つの選択肢を考えるときの判断材料として、通勤時間の過ごし方や、通勤時間がもたらすライフスタイルの変化を考えてみましょう。
実際に東京23区内に出勤しており、出勤時間が1時間以上のSさんと15分未満のOさんにヒアリングしました。
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移動時間を有効活用! 通勤時間1時間以上派の意見
まず、郊外に自宅を構え、通勤に1時間かかるSさんに、実際通勤してみてどうか本音を聞きました。
「読書や考え事に使う」長い通勤時間だからできること
「通勤時間は趣味の読書をしたり、その日のタスクを整理したりする時間です。以前20分ほどの通勤時間を経験したこともありますが、1時間ぐらい時間がないと逆に何をする気も起きないですね。その点、通勤時間が長ければ有効活用できるので魅力的です」(Sさん)
通勤時間が長いからこそできることがあるのですね。普段PCやタスクから離れられない人も、こうした通勤時間を利用することで自分を見つめ直す時間が取れるかもしれません。
「座れるから逆に楽」満員電車の圧迫感から解き放たれる
「私の場合、郊外のベッドタウンから快速に乗車しますが、ほぼ毎日座れます。通勤時間が長いとつらいのは立ち続けることだと思いますが、逆に満員電車になる前に乗ってしまえば楽ですよ」(Sさん)
いっそのこと始発駅などに住んだほうが、通勤時間のストレスは軽減できるのかもしれません。時間の長さだけではなく混雑具合も考慮すると、条件は大きく変わりそうです。
ちなみに、交通機関での移動時に発生するストレスについての研究結果によると、混雑時は各駅停車より快速のほうがストレス値は少ないそう。もしも住まいを探すなら、快速の停車駅があるエリアに注目しても良いかもしれません。
「通勤より家の時間が大事」住まいにこだわった結果
「自分が心から落ち着ける家を持てたことで、心の余裕は以前より増えました。ちょうど結婚というきっかけもありましたが、今後家族が増えることなども想像しやすい環境になったなと思います」(Sさん)
引っ越し以前は通勤時間が長いことについて悩む時間もあったというSさんですが、結果として長期的な心のゆとりを手に入れることができたと実感しています。インテリアにこだわったり、休日に遠出をしたりと、今までと違った楽しみも見つけたそうです。
通勤1時間の経験者が語るデメリット
「やはり毎日のことですから、通勤時間は疲れます…。飲み会など、夜の付き合いがあると特にしんどいです。終電を逃したときのダメージも大きいですね」(Sさん)
夜まで続くスケジュールが多い人には、1時間の通勤時間は大きなリスクにつながるかもしれません。Sさんは、飲み会の二次会はパスしてすぐに帰るよう心がけているそう。通勤時間による拘束は、その他の予定にも影響をもたらします。
寝たい! 時間が無駄! 通勤時間は最短派の意見
普段は自転車で勤務し、気候や天候に応じて10分程度の交通機関利用をするOさん。家賃の高い賃貸物件に住んでいることをふまえ、理由を聞きました。
「できるだけ家にいたい」出社までの時間に選択肢を
「出社前の時間、休んだり自由にできたりする選択肢があることって大事じゃありませんか? 朝から時間に追われるとやる気がなくなります」(Oさん)
その日の気分やタスクに合わせて、睡眠時間を十分にとったり、弁当を作ったりしているというOさん。一日の始まりを好きに過ごせる自由は、それ以降の仕事の質にも関わるそうです。
「休む時間が削られると体がもたない」労働時間が多いから
「私の仕事は残業が多いですから、仕事以外の時間は1分でも長く休みたいんです。心身健康な状態を維持することを優先すると、移動時間は無駄だなと思います」(Oさん)
自転車通勤ができる距離だと、日々の運動不足も解消しやすいもの。また、病院や行政機関なども勤務地に近いほうが行きやすいでしょう。こうしたさまざまな点を考慮した結果、通勤時間を削減することは合理的な答えだったということです。
「通勤時間がないとフットワークが軽い」アクティブ派に好都合
「帰りがけに寄り道しようとか、新しい店を発掘しようとか、活動エリアを深掘りする楽しみが増えます。通勤時間という概念がそもそもないので、会社を出たらすぐに帰宅せず、遊びます」(Oさん)
自転車移動がメインということもあり、勤務地を中心にした3駅程度の範囲の店は熟知しているというOさん。おすすめの居酒屋や隠れ家スポットも教えてくれました。
時短通勤の経験者が語るデメリット
「会社が近いと、頭の片隅で仕事のことを常に考えていますね。本当のオフはなくなるかもしれません。休みの日もすぐに会社に行けてしまうから、気になるタスクに手を出してしまうことも…」(Oさん)
Oさんが平日に休みをとった際、出勤中の社員と遭遇して気まずかった経験もあるそうです。休みでも仕事と接点がある環境は、意外なストレスかもしれません。
通勤時間の長短は自分のスタイルに合わせて
通勤時間によって生まれるメリット・デメリットはそれぞれ。自分にあった通勤時間を導き出すために、働き方や自分の性格の特徴を改めて見直してみると良いかもしれません。
また、自分がどんな暮らしや住まいを手に入れたいのかも考えてみると良いでしょう。通勤時間と天秤にかけたとき、どちらを優先するのか整理すると、最適な答えが見つかるはずです。
(最終更新日:2024.04.19)