長く住めるスケルトン・インフィル(SI住宅)、ほかの構造との違いは何?

みなさんは「スケルトン・インフィル」という言葉を知っていますか? 「スケルトン」は構造躯体を、「インフィル」は内装・設備のことを指し、スケルトン・インフィルの概念をもとに建てられた住まいは、スケルトン・インフィル住宅(SI住宅)と呼ばれています。スケルトン・インフィル住宅とはどんな家なのか、メリットやデメリットについても解説します。

スクラップ&ビルドから、ロングライフ住宅へ

少々古いデータですが、国土交通省「平成8年建設白書」の第2章第2節によると、イギリスの平均住宅寿命は約75年、アメリカが約44年なのに対し、日本は約26年と短め。日本の住宅は建物を壊しては新築する、いわゆる「スクラップ アンド ビルド」を繰り返してきました。

もちろん、日本は地震をはじめ自然災害の多い国ですから、他国と単純に比較することはできないでしょう。しかし、建物の耐久性やメンテナンスのしやすさに配慮し、家族構成やライフスタイルの変化に対応しやすいつくりで建てられた、いわゆるロングライフ住宅であれば、もっと長い間、建物を有効に活用することができます。50年、100年と長きにわたり、快適に住み続けることも夢ではないのです。

スケルトン・インフィルとは?

建物を「構造躯体(=スケルトン)」と「間取りや内装(=インフィル)」に分けて考える「スケルトン・インフィル」

そこで出てくるのが、「スケルトン・インフィル」という概念です。柱・梁・床といった構造躯体(=スケルトン)と、間取りや内装(=インフィル)を分けて考えることで、手を加えながら長期的に建物を活用することができます。
一般的に、寿命の長い構造躯体に比べ、内装・設備は短い期間で老朽化が目立つ、故障する、住む側の生活スタイルが変わって使いづらくなるといったことが起こります。スケルトン・インフィルを念頭に、耐久性のある構造躯体と可変性が高い内装を併せ持つ家を建てることができれば、快適性を保ちながら住み慣れた住まいで長く暮らし続けることができるでしょう。

スケルトン・インフィルのメリット

それでは「スケルトン・インフィル」という概念をもとに家を建てると、どのようなメリットがあるのでしょうか? いくつかの視点からみていきましょう。

間取りの可変性

スケルトン・インフィルの住宅は内装や間取りの変更がしやすいため、ライフステージに応じて求める生活が変わっても、比較的柔軟に対応できます。例えば、子どもがいる家庭では、小さなうちは親が見守りやすいオープンスペースを設け、思春期になったら個室をつくり、お子様が独立したらそれらのスペースを活用してリビングを広くしたり、趣味のスペースにしたりできるでしょう。

また、年を重ねて足腰に不安を覚えるようになったら、段差をできるだけなくして手すりを設置する、コンパクトに生活できるような間取りに変更するといったリフォームが必要になるかもしれません。廊下やトイレなど、車椅子が入れる広さを確保する必要が出てくる可能性もあります。スケルトン・インフィルの住宅であれば、このように合理的なリフォームが可能です。

メンテナンスがしやすい

スケルトン・インフィルの住宅の場合、構造躯体と設備の配管などを切り離して考えることができます。二重床・二重天井を採用するケースが一般的で、天井に十分なスペースがあれば、電気配線やエアコンのダクトを好きな位置に動かしやすくなります。床下に十分なスペースを設けることで、キッチンや浴室、トイレなどの配管を移動したり、交換したりすることも容易になります。

マンションの場合、専有スペース内には配管スペース(PS)を設けないことで、構造上の制約にとらわれずに間取りを変更することができます。デッドスペースも少なくなり、空間を有効に使えるでしょう。

住まいにかかる費用を軽減し、エコにも貢献!

スケルトン・インフィルを念頭に家を建てたら、メンテナンスやリフォームを行いながら、同じ建物を長く使い続けることになります。老朽化や家族構成の変化などを理由に短期間で建て替えや住み替えをする場合と比べて、住居にかける費用を抑えることができるでしょう。大胆なリノベーションを行った場合でも、躯体は既存を活かしますから、廃材の発生を最小限に抑え、建築資材のロスがなくなります。エコにも貢献することができる、地球にやさしい選択ともいえるでしょう。

より安心して暮らせる

スケルトン・インフィル住宅は、構造躯体の耐久性が高く、長持ちすることを前提としています。そのため、丈夫で耐震性が高い住宅であると考えることができます。高い耐久性が、住む人にとって「安全に暮らせる」ことに対する安心感を生み、同じ家に住み続けることができる安心感も得られるでしょう。

スケルトン・インフィルのデメリット

スケルトン・インフィル住宅のデメリットは、初期の建築費用がかさむことでしょう。雨漏りや結露で構造躯体が傷ついてしまうような家では、長期にわたって住み続けることができません。地震や台風、火災などの災害時にも、ある程度耐えうる仕様を求めれば、おのずと建築費用や材料費が高くなります。
ただし、一般的な住宅が建て替えを検討する20~30年後、リフォームによって住み心地を高めながら住み続けることができる、子や孫に引き継ぐこともできると考えると、長い目で見れば「ローコスト」といえるかもしれません。

また、マンションの場合、スケルトン・インフィルにより自由に間取りを変更できるというメリットが、騒音トラブルにつながる可能性もあります。例えば、隣人が間取り変更を伴うリフォームを行った結果、浴室とあなたの家の寝室が隣接してしまうかもしれません。隣人が深夜に入浴する度、排水音が気になって眠れない…なんて可能性もあるのです。こうした可能性も想定し、事前に防音対策を講じておくとよいでしょう。

スケルトン・インフィルの家なら、リフォームをしながら長きにわたって快適に住み続けることができます。通常の家と比べて耐久性があり、間取りや設備を自由に変更しやすいため、資産価値を維持しやすいことも特徴。何らかの事情でその土地を離れる必要が生じても、買い手が付きやすい住宅ともいえます。先々を考えて、スケルトン・インフィルの家も選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか?

(最終更新日:2019.10.05)
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