自転車絡みの事故が多発していることから、自転車保険の加入義務化が全国各地の自治体で進められています。しかし、「ニュースなどで見聞きしたことはあるものの、まだ何もしていない」「どんな自転車保険に入ったらいいのかわからない」という人も多いのではないでしょうか。
自転車を利用する以上、どんなに気を付けていても重大事故を起こす可能性がありますし、もし事故を起こせば多額の賠償金を請求されるかもしれません。同様に、自分が被害者になる可能性もあります。自転車保険とは何なのか、自治体による義務化はどこまで進んでいるのか解説します。
自転車保険とは?
自転車保険は、その名の通り、自転車を運転中に発生した事故による損害を補償する保険です。自分がケガをしたときなどの補償「傷害保険」と、第三者に怪我をさせてしまったとき、自動車など財物を壊してしまったときに相手の損害賠償金をカバーする「個人賠償責任保険」の2種類がセットになっている商品が一般的です。
一般社団法人日本損害保険協会の調査によると、「11歳の男の子が自転車で帰宅途中に歩行中の女性に衝突。意識が戻らない状態となり、9,521万円の賠償金を支払うように命じられた」というケースや、「男子高校生が対向車線を自転車で直進してきた男性と衝突。言語機能の喪失など重大な障害が残り、9,266万円の賠償金を支払いが命じられた」といったケースもあるとのこと(※)。未成年であっても多額の賠償責任が生じる可能性があり、事故に備える自転車保険に注目が集まっています。
全国の自治体の動きは?
全国の自治体では、自転車保険の加入を義務化する動きが広がっています。
東京都三鷹市
自転車保険の加入を推進する条例を初めて制定したのは、東京都三鷹市。2004年4月1日に「三鷹市自転車の安全利用に関する条例」を制定しました。現在は新たに「三鷹市自転車の安全で適正な利用に関する条例」を策定しており、第1章・第4条の4に「自転車の利用者は、自転車損害賠償保険等への加入に努めなければならない」とあります。
東京都
2017年2月1日に改正した「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」第1章・第27条に「自転車利用者は、自転車の利用によって生じた他人の生命、身体又は財産の損害を賠償することができるよう、当該損害を塡補するための保険又は共済への加入その他の必要な措置を講じるよう努めなければならない」と記しています。
このほか、各都道府県でも自転車保険の加入を義務化が進められています。
兵庫県
2015年1月「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」
大阪府
2016年7月「大阪府自転車条例」
滋賀県
2016年10月「滋賀県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」
鹿児島県
2017年3月「かごしま県民のための自転車の安全で適正な利用に関する条例」
埼玉県
2018年4月「埼玉県自転車の安全な利用の促進に関する条例」
京都府
2018年4月「京都府自転車の安全な利用の促進に関する条例」
また、2018年6月には「自転車活用推進計画」が閣議決定しました。2020年度までに、国レベルで自転車の活用を推進すると同時に、自転車保険の加入促進についても明記されています。
自転車保険に入る方法は? どの保険を選べばいいの?
自転車保険の加入を義務付ける動きが加速している中で、私たちはどんな保険に加入すれば良いのでしょうか?
自転車に特化した保険は大きく分けて、自転車販売店で加入する「TSマーク付帯保険」と「個人賠償責任保険」に分類することができます。また、個人賠償保険や傷害保険に、自転車に関する補償が含まれているケースもあります。
TSマーク付帯保険は、自転車そのものにかける保険
自転車保険に加入する方法として多いのが、自転車の購入時や、修理を依頼したタイミングに、自転車販売店で加入するケースです。公益財団法人・日本交通管理技術協会が販売する自転車保険「TSマーク付帯保険」への加入を勧められることが多く、保険料は自転車の整備料金に含まれます。
有効期限は整備を受けてから1年のため、保険の加入=定期的に自転車の整備を行うことになります。青色の第一種TSマークと、補償内容が手厚い赤色の第二種TSマークの2種類があり、いずれも自転車に付帯する保険となります。
自転車に乗った家族や友人なども補償の対象となりますが、自転車乗車中の事故以外には適用されません。「TSマーク付帯保険」を扱う自転車安全整備店の所在地は、公益財団法人・日本交通管理技術協会のウェブサイトからご確認ください。
自転車に特化した保険なら、対物・対人ともに補償
前述の「TSマーク付帯保険」はポピュラーな自転車保険ですが、すべてのシーンで補償を受けられるわけではありません。補償内容は第三者を怪我させてしまった場合などの「対人補償」のみ、物を破損してしまった場合の「対物補償」は含まれません。「対人補償」に関しても、重度の後遺症を伴うケガや死亡時以外、保険金が支払われません。
自転車に特化した保険のほとんどが、「対人補償」「対物補償」に加え、自身がケガをした場合の補償も含まれています。自転車に乗っていない場合の交通事故も補償の対象となり、いざという時に安心です。
また、示談代行サービスやロードサービスなどを付帯している保険が多いことも特徴。ほとんどの自転車保険がウェブサイト上で加入できるほか、スマートフォンからの加入や、コンビニエンスストアの店頭端末で加入できる保険も増えています。
実は、すでに自転車保険に加入していることも!?
自治体の義務化をきっかけに、自転車保険の加入を検討している人も多いでしょう。しかし、自動車保険や火災保険、傷害保険などに加入した際、特約として個人賠償責任補償が付帯されているケースも少なくありません。地域によっては、学校で加入している場合もあり、二重加入になってしまう恐れもあります。自転車保険の加入を検討する際は、すでに加入している保険契約の内容をよく確認の上で商品を選びましょう。
(最終更新日:2019.10.09)