マイホーム購入者のニーズが多様化するにともない、抑えたコストで自分好みの間取りやデザインの空間をつくれる「リノベーション」の注目度が高まっています。しかし、一般社団法人 リノベーション住宅推進協議会事務局の武部さんは、「リノベーションという言葉の認知度は高まっているものの、まだ新築志向が優勢で理解度が低い」と言います。
今回は、リノベーションを行うことで理想のマイホームを手に入れた人たちをご紹介しましょう。
お気に入りのアクセントクロスを貼って、寝室のイメージを一新
Sさんは、10年ほど暮らしてきた分譲賃貸マンションを買い取ってリノベーションを行いました。築年数が経過した物件でよく見かける3DKの間取りで細かく仕切られていましたが、6畳の洋室と8畳のダイニングを繋げて14畳の伸びやかなリビングを有する2LDKに一新。今までは手狭で置くことが難しかったソファで寛ぎながら、ゆったりとテレビを観ることができるようになったそうです。
和室は洋室に変更し、寝室として活用しています。広く明るく見せるため、他の居室は白を基調としていますが、寝室はお気に入りのブルーのアクセントクロスを貼り、風水効果を期待してピンクのカーテンを設置。家全体に貼ってしまうと主張が強すぎたり、コストが掛かりすぎたりしてしまうアクセントクロスは、このようにプライベートな空間のみポイントで使用すると良いでしょう。就寝の度に気持ちが切り替わり、ぐっすりと眠れそうです。
お金をかけるところとDIYで対応するところ、メリハリの効いたリノベを実践
当初はリノベーション済みのマンションを購入しようと考えていたNさん。物件を見学した時に「リノベ前の中古物件を購入して自分たち好みにアレンジしては?」と勧められたこと、抑えたコストで自分好みの家が手に入ることに魅力を感じていたことから、中古マンションを購入することに。設計は建築設計事務所に依頼しました。
リビングに隣接する和室をなくし、独立していたキッチンを対面式にして、ワンルームのような一体感のあるLDKに。料理をしながら家族と会話をしやすい間取りに変更しました。友達や親戚を招き、リビングで鍋パーティやクリスマスパーティを楽しんでいるそうです。
自室には、趣味の山歩きに欠かせない自転車を見せながらしまうスペースを確保するなど、住み心地を高めています。
特筆すべきは、廊下からリビングダイニングにかけて、パインの無垢フローリングを敷設したこと。実家が桜の無垢フローリングを採用していて、無垢フローリングの良さを知っていたことから、費用は嵩みますが「ここだけは妥協したくなかった」とNさんは語ります。一方、リビングには壁面収納の造作を予定していましたが、予算の関係上、オープン収納を自ら設置することに。ホームセンターで材料を買い、自作した棚を設置したそうです。限られた予算でも、自分たちでDIYを行いながら、住み心地を高めることができる好例です。
無垢材や漆喰など自然素材を多用。庭に面したサンルームも心地よい住まい
築40年超えの中古住宅を購入してリノベーションしたGさんは、ご希望だったサンルームを新設しました。庭の緑を眺めたり、愛猫が日向ぼっこをしたり、トレーニングをしたりと、多目的に活用できます。愛猫に配慮し、リビングダイニングや寝室にペットドアを設置し、自由に駆け回れるようにする工夫も。人もペットも快適に暮らせる空間です。また、寝室にはウォークインクローゼットを設けるなど収納を充実させることで、表に物を出さず、すっきりと過ごせるようになりました。
床にはハードメープルの挽き板フローリングを敷設。壁には漆喰を塗装しています。キッチンカウンター正面の壁にはモザイクタイルを、洗面所にもガラスモザイクを貼るなど、装飾デザインの会社に勤めていたという奥さまのこだわりが詰まっています。タイルなどの素材はたくさんのサンプルを取り寄せ、見比べながら色合いを検討。たくさんの選択肢から設備や素材を選ぶことができるのは、リノベーションの醍醐味と言えるでしょう。
家じゅうの床にパインの無垢材を敷設。経年変化が楽しめる空間に
リノベーションを前提として中古マンションを探したMさんは、売主の瑕疵担保責任を免除するという条件が付いた「訳あり」物件を購入。つまり、購入した物件に不具合があっても売り主は修繕の責任を負いません。設備の故障や配管の老朽化、雨漏りなどがあっても、購入した側が自費で直すことになります。しかし今回、Mさんは全面的にリノベーションすることを前提としていました。リフォームをする箇所には瑕疵保険が適用されることもあり、大丈夫だと判断したそうです。
間取りは2LDK。和室をなくし、ルーフバルコニーに面した広いリビングを確保。高台ならではの恵まれた眺望を楽しめます。
高台から街を見下ろす絶好のロケーションに加え、採光・通風も抜群の心地よい空間をさらに快適にするため、Mさんには「全ての居室に無垢材を使いたい」という希望がありました。マンションでは管理規約により無垢フローリングの敷設が難しいケースが多いのですが、Mさんは事前に管理規約を確認し、問題ないことを把握していたそうです。リノベーションは、自然素材の取り扱いに長けた会社に依頼。節目が表情をもたらし、月日が経つごとに飴色へ変化する様子を楽しめる、パインの無垢フローリングを敷設しました。クリア塗装にすることで、無垢材本来の色を活かしました。比較的やわらかな色の樹種を選ぶことで、明るい空間に、かつ植栽を置いた時に映える空間に仕上げたそうです。
ガラス引き戸や室内窓で間仕切り。デザイン性も開放感もアップ
以前からリノベーションにあこがれていたというIさんは、中古マンションを購入して、自分好みの空間をつくり上げることに。購入した物件は、リビングダイニングと独立したキッチン、和室、洋室が2つという3LD・Kの間取りでした。広々とした一体感のあるLDKにするため、和室をなくしてキッチンは対面式にしています。居室は1つ減って2つですが、寝室と登山用品などをまとめてしまえる趣味部屋を設けた他、寝室の隣にウォークインクローゼットを確保。ライフスタイルにマッチした空間が完成しました。
室内で目を引くのが、どこか懐かしい雰囲気の室内窓や建具。古家を解体した時に出たガラス引戸をインターネットで見つけて、Iさんが直接購入。施主支給しました。大工さんが枠を組んだり、塗装をしたりと、プロの技できれいに収めてくれたそうです。ノスタルジックな引き戸や室内窓が空間のアクセントになるだけでなく、ガラス越しに空間の繋がりが感じられるため、広さや開放感を演出できます。Iさんのように、趣味の登山道具を玄関ホールからいつでも眺めることができることも、メリットですね。
ガラスブロックやアイアン、ステンレスなど様々な質感の素材が調和
リノベーションを前提に、中古マンションの最上階・角部屋住戸を購入したKさんも、施主支給を行った1人。住宅設備などを自身で購入し、現場へ届ける「施主支給」を行うことで、中間マージンをカット。抑えたコストでの施工を目指しました。店舗内装も手掛ける会社にリノベーションを依頼し、ガラスブロックやアイアンのパーテーション、タンクレストイレまで自身で手配したそうです。
間取りは和室をなくし、対面式のキッチンを壁付キッチンに変更することで、リビングをできるだけ広く使えるように。間仕切りはできるだけ設けずシンプルに仕上げました。
玄関や寝室、トイレの壁にはガラスブロックを採用。どこにいてもやわらかな自然光が入ります。バロックモチーフのアイアンのパーテーションは、Kさんが以前からイメージを温めていたもの。空間のアクセントとしつつ、キッチンを緩やかに間仕切りしています。その他にも、水回りの床や壁にはモザイクタイルを貼ったり、オールステンレスのスタイリッシュなキッチンを設置したりと、質感の異なる様々な素材を取り入れて美しい空間に仕上げました。
まとめ
リノベーションによって、新築のような真新しさを感じる空間も、さまざまな素材やデザインにこだわった空間も、思い描いた間取りそのままの家も作ることが可能です。中古物件を住宅購入の候補に入れることで予算にゆとりができ、より多くの希望を反映できた人々がたくさんいます。限られた予算で多くの希望をかなえたいとお悩みの人は、中古物件を購入してリノベーションを行ってみてはいかがでしょうか?
(最終更新日:2019.10.05)