「史上空前のサウナブーム到来!」という切り口のTV報道や雑誌・Web記事を目にすることも多いのではないでしょうか。実際、旅館やホテル、スーパー銭湯やスパ施設、エステサロン等にも「サウナ」は珍しくありません。おかげで専門の施設に行かなくても、何かのついでにサウナで時間が過ごせるようになりました。サウナは身近なものとして定着し、その中で質の向上や楽しみ方の工夫の拡散が「ブーム」となっているのかもしれません。もはや「日常」となったサウナを自宅でも楽しみたい。そんな“サウナー”の願いをリーズナブルに実現できる家庭用サウナが人気と聞き、体験できるショールームを訪ねました。
通販家具や家電感覚で家庭用サウナが手に入る
神戸市兵庫区にある神戸メディケアのショールームには、夫婦で訪れる人が多いそうです。目的は「家庭用サウナとはどんなものか」を確かめるため。これから家を建てる人が、「ずっとあこがれていたサウナをわが家に」「マイホームの夢を実現したい」と情報を集め、Web検索でたどり着くのがこのショールームです(完全予約制)。
「キッチンや照明などと異なり、サウナの設備はどこで売っているかわかりにくいため、基本は施工会社や工務店に相談となります。しかし施主様が希望されるのは、既存の間取りの『この洗面台の横に置けないか』『空きスペースをサウナにできないか』というものが多い。住宅設備としてのサウナは、専門の職人が現場に入り、設計を変更したり内装をやりかえたりと大ごとになることも。そもそも予想以上に場所が必要なことや、予算がかかり、最後の最後であきらめることもあるようです。サウナ好きであるほど、その“がっかり”は大きいでしょうね」(神戸メディケア 濱井善海さん)
同社では、近隣に多かった学生向けマンションの管理会社やオーナーから、増加する新築マンションとの差別化を相談され、部屋の付加価値を高めるために室内に置けるサウナを提案。そうしたマンションやホテルなど、業務用設備としてスタートし、販路を広げて行きました。それが2010年代になると「検索で知った」という個人客の問い合わせ、注文が増え、現在は販売先の約7割を個人客が占めます。
人気の要因は、設置の手軽さです。組み立て家具のように自分で組み立てることができ、しかも接合用のネジや部品を使わない、かんたんなはめ込み式。組み立て後は、家庭用AC100V電源のコンセントにさし込むだけで利用可能です。まさに家電感覚で使えます。
そしてもうひとつの人気の要因は魅力的な価格です。定番の「1人用ゆったり」サイズが39万8000円。少し小さい「1人用コンパクト」が29万8000円(いずれも税、送料別)。マイホーム購入予算の調整で諦めた人も、専用のスペースが確保できずに諦めた人も、このサウナにたどり着くことで「諦め」が「夢の実現」へと一変します。
サウナ好きもサウナ嫌いも納得する快適機能
組み立て式の「NATURAL SPA」は、壁面とベンチの遠赤外線パネルが体を芯から温める方式です。室温が90度前後で空気から「熱い」刺激を受けるサウナと異なり、室温は約60度前後。暑苦しさや息苦しさを感じません。
実は、記者は「サウナは苦手」派でした。発汗と爽快感自体は嫌いではないのですが、顔面や喉に感じる熱気が苦手で、ホテル等のサウナも長く入っていることができません。そのため「どうぞ試してみてください」と濱井さんに笑顔で勧められ、「NATURAL SPA」に入った時も「どう平静を装って出てくるか」を考えていました。
しかし、ドアを閉めると感じるのは意外な心地良さ。取材時は着衣のままでしたが、それでもすぐに体の内面からポカポカし始め、頭・体・足とムラ無くホワーッと温まります。さらに足もとは岩盤浴タイル。座っているだけでリラックスしてきます。温暖な場所で日光浴をしている感じで、「刺激」への抵抗感がなく、取材でなければずっと入っていられそうです。実際体への負担が少ないため、20分〜30分、ゆっくりと楽しむこともできるそうです。室内には読書灯が設置され、照明を5色に変えるカラーセラピー機能も搭載されています。
「ショールームまで来られるご夫婦には、男性がサウナ大好き派、女性がサウナの魅力は今ひとつ分からない派という組み合わせも多い。互いに「説得する」「諦めさせる」ための最終段階ですから、こちらも責任重大です。しかし、女性に遠赤外線サウナを実際に体験いただくと、ガラリと意見を変える方もいます。体を温める、長くゆったりと過ごせる、発汗によるリラックスや美容効果への期待など、ご自身の価値観とサウナが結びつくようです。納得されると、むしろ女性の方がサウナ設置に積極的です」(濱井さん)
もちろん、本格的なサウナ好きを納得させる製品も用意されています。蒸気を噴くんだ熱気を用いる高温フィンランド式サウナ「ロウリュウ」です。室内のストーブで天然香花石を加熱し、そこに水をかけて発生する蒸気を含んだ熱気(ロウリュウ)がゆっくりと広がり、徐々に体感温度を上げていきます。設置は専門業者が担当し、温度調整等が必要なため、価格は約90万円からとのことですが、「サウナ好き」を自認する人ほど、実際に体験すると「これが欲しかった。これがサウナ」と太鼓判を押す本格派です。
わが家の自慢、自分の時間、健康的な生活習慣
ショールームで体感することで納得する。そうした人が多い(記者も含め)ということは、「家庭用サウナ」は、新たな「サウナブーム」の切り口となるのかもしれません。サウナが家庭に入ることでの生活の変化を、医療・介護用品も扱ってきたからこそ感じると濱井さんは言います。
「たとえば高齢者と同居されているご家庭では『サウナなんて危ない』と反対されるご家族もいます。しかし、低刺激、温熱効果、発汗促進などを体感で理解されると、高齢のご家族の室内での楽しみとして捉え、再考していただけます。長期休みが近づくと『孫が来るまでに用意したいから』という要望も増えます。お風呂はどの家にもありますし、入浴は当たり前の生活習慣ですが、そこでの過ごし方、くつろぎ方は人それぞれですよね。同じように、わが家のサウナでゆっくりくつろぐ。それが当たり前になるだけで、生活の豊かさがずいぶん大きくなると思います」(濱井さん)
家の中に新しい家電や家具が加わることで、暮らしがブラッシュアップするように「家庭用サウナ」を検討するのは、もう「ブーム」なのかもしれません。
取材、画像協力/神戸メディケア
(最終更新日:2019.10.05)