地震に強いマンションの条件とは? 知っておきたい4つのポイント

東日本大震災以来、日本各地で大きな地震が相次いで発生しています。また、歴史を振り返ると、関東地方や東海地方では周期的な大地震が発生していることが知られています。地震対策については、国や自治体はもちろん、家庭での対策に関心を持つ人が増えているようです。この記事では、地震に強いマンションの条件や地震保険について説明します。

「マンションは地震に強い」は本当か?

万が一の事態にも備え、強いマンションを選ぶために注目すべきポイントは?

建物の地震に対する強さを表すには、「耐震性(たいしんせい)」という基準を用います。マンションと木造家屋を比べると、なんとなくマンションのほうが地震に強そうだと感じる人が多いかもしれません。たしかに、一般的な中高層マンションは鉄筋コンクリート構造を採用しており、在来工法で建てられた木造家屋よりは、耐震性が高くなる傾向があります。しかし、実際は「建てられた時期」や「どのように造られたか」によって、耐震性は大きく異なるのです。建物を建てるときには、建築基準法という建築物に対する最低基準を定めた法律を守る必要があります。

耐震性については、この建築基準法に記載された「耐震基準」に適合することが求められるのです。耐震性を評価する際の「建てられた時期」の目安は、1981年6月1日以降に建築確認済証が発行されている建物であるかどうかです。この基準を一般には「新耐震基準」と呼んでいます。この新耐震基準を満たした建物であれば、地震に強いと考えてよいでしょう。あとは「どのように造られたか」がポイントとなります。設計が新耐震基準を満たしていても、施工段階で手抜き工事が行われてしまえば、耐震性には疑問符がつくためです。

地震に強いマンションの条件とは?

建物が建つ地面のことを「地盤」と呼びます。地震で地盤が揺れても、その上の建物が倒れたり壊れたりしなければ、その建物は「地震に強い」といえます。地震に強いマンションを探すには、地盤構造形状メンテナンスの4つの観点が重要です。以下で詳しく説明します。

マンションの強さを考える上でメンテナンスの内容は欠かせません

1.地盤

建物は、基礎の上に建てられます。その基礎は地盤の上に設けられます。そのため、地盤がしっかりしていないと、どんなに強固な基礎を造ってもあまり効果はないといえるでしょう。耐震性を考える際には、建物を建設する地盤が最も重要なポイントです。

たとえば、砂地盤などの場合、地震の震動で地盤が液体状になる「液状化」が起こる可能性があります。液状化すると、建物が乗っている基礎がぐらつくため、建物が傾いたり、倒壊したりすることもあるのです。

マンションの場合も、地盤は最重要視すべきポイントといえます。中高層マンションの場合は、建物の重さをしっかり支えることができる地下深くの岩盤層まで杭を打ち込む場合がほとんどです。それでも地震の震源が近かったりすると、揺れが強くなるなどのリスクはあります。埋め立て地などの軟弱な地盤に建っているマンションの場合は、建物自体は丈夫であっても、周辺の道路などが液状化して交通が遮断され、孤立してしまう可能性があります。軟弱地盤に建つ建物の場合は、地震の際の安全対策をしっかりチェックしておきましょう。

2.建物の構造

新築マンションであれば、新耐震基準に適合しないと建てられないため、設計段階では一定以上の耐震性があるといえます。一方で、中古マンションや賃貸マンションの場合、その耐震性はわかりにくいものです。リノベーションされて外観やインテリアは新しく見えても、地震の際に問題となる耐震性は専門的な検査をしない限りわかりません。それでも、構造的に見分けるポイントはあります。たとえば、低層マンション(5階以下)で採用されている「壁式構造」は、柱や梁を使用せず、四方の壁・床・天井という“面”で建物を構成しているため、耐震性に優れているといわれています。

このほか、耐震性に大きく影響するのが、壁の材質・構造とその量です。壁にもいろいろありますが、耐震性を確保するには、「耐力壁(たいりょくへき)」と呼ばれる壁を、なるべく多く、バランスよく造ることが重要です。

これに対して、柱が多い建物は耐力壁が少なくなるため、耐震性を確保することが難しくなります。地震の力は主に水平方向に作用するため、たとえば、1階が柱のみのピロティ形式の建物は横方向の揺れに弱いため、耐震性は低くなります。

3.建物の形状

耐震性を考えるときには、耐力壁の量だけではなく、バランスが重要になると述べました。そのバランスは、具体的には建物の形状で決まります。建物がシンプルで対称的な形であれば、耐震性は向上します。耐震性だけを考えれば、シンプルな箱型が最も優れた形状です。

マンションであれば、上層階に行くほど床面積が小さくなるピラミッドのような形状が最も耐震性が高い建物といわれています。なお、非対称形の建物だからといって、ただちに耐震性が低いというわけではありません。形状の持つ不利な点を技術的にカバーする、制振装置や免震装置を組み込むことなどで、耐震性を高めることは可能です。ただし、そのぶん建設費は上がるため、マンションなどでは分譲価格が高くなるようです。

地震と建物の形状に関わる問題では、高層マンションの「長周期地震動」と呼ばれる現象にも注意する必要があります。地震の震動と建物が持つ固有周期が一致すると、共振により揺れが増幅されることがあるのです。タワーマンションなどの高層階では、倒壊しなくても非常に大きな揺れに見舞われることがあるため、家具を壁面にしっかりと固定するなど、あらかじめ対策をしておく必要があります。

4.メンテナンス状況

中古マンションなどでは、築年数が数十年経っている建物を見かけることがあります。一般的に、建物は古くなると劣化するため、古ければ古いほど耐震性が低下するように感じるかもしれません。しかし、実際のところ、築年数の古さと建物の構造的な劣化の度合いは単純に比例するわけではないのです。適切なメンテナンスにより、経年劣化の悪影響を抑えることは技術的に可能です。たとえば、鉄筋コンクリート構造のマンションなどであれば、定期的に耐震診断を行い、構造的に劣化している部分を特定します。そして、その特定された部位を補強すればよいのです。

柱であれば、柱の周囲にカーボンファイバーを巻きつけて補強する工法など、さまざまな耐震補強工法があります。また、鉄筋コンクリート構造では、経年変化による細かなひび割れは耐震性に影響しない想定内の現象と考えられていますが、地震などにより生じる目立つひび割れについては補修が必要です。ひび割れをそのままにしておくと、そこから雨水などが染み込み、鉄筋まで浸透するとサビが発生します。鉄筋がさびると膨張するため、さらにひび割れが大きくなります。これを繰り返して、コンクリートと鉄筋が分離すると、鉄筋コンクリート構造の耐震性が急激に低下するのです。定期的なメンテナンスを怠らなければ、このような問題は未然に防ぐことができます。

マンションに地震保険は必要?

おろそかにしてしまいがちな保険。しっかり検討しましょう

戸建て住宅とは異なり、区分所有が基本のマンション所有者が地震保険に入るときは注意すべきポイントがあります。マンションは住居の居室などの「専有部分」と、廊下や階段やホールなどの「共用部分」から構成されています。マンションの専有部分は所有者の判断で地震保険をかけることができますが、共用部分については管理組合で議決権を持つ区分所有者の一定数の合意を取らなければ地震保険をかけることはできません。共用部分の保険料負担は区分所有者が按分するのですが、金額によっては反対意見が大きくなる可能性があり、合意形成が難しくなることもあります。

うまく合意に達して地震保険に入った場合でも、実際に地震が起きて、甚大な被害が発生した場合、手続きが複雑になりがちです。建て替えが必要な場合などには一定数の合意が必要になりますし、全壊ではなく部分的な損壊のケースに建て替えを行う際にも問題となる可能性があります。通常、地震保険だけでは、建て替えに必要な全額を賄うことは難しく、追加負担が生じます。そうなると、居住に問題のない部分に住む区分所有者が、建て替えのための負担増に同意するかどうかという難しいハードルを越える必要が出てくるのです。地震保険は入っていたほうがよいのはもちろんですが、それだけで解決する問題ではないといえます。

災害への備えもマンション選びのポイントに

命や財産を守るためには、災害に強い住まいを選ぶことは重要なポイントです。特に、地震国である日本では、防災意識は常に持っておく必要があるのです。マンションを選ぶ場合にも、地震への備えという視点から、厳しく評価する目を持っておきましょう。大切な家族を守るためにも、インテリアや日常的な生活のしやすさだけではなく、非常時の安全性についてもバランスよく考慮して、物件を選ぶとよいでしょう。

(最終更新日:2019.10.05)
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