分譲マンションの維持・管理は、管理会社が行うものと思っている人も少なくないのではないでしょうか。マンションの管理組合や理事会は、町内会のようなものと理解している人もいるでしょう。しかし、マンションの管理状況などを判断するうえでは、管理組合および理事会の存在はとても重要です。ここでは、購入するマンションを選んだり、住みよい住環境を作ったりするために必要な管理組合や理事会の役割などについて説明します。
まずは管理組合の役割を知っておこう
「管理組合」とは、分譲マンションの所有者(区分所有者)全員が建物・敷地および付属施設の管理を行うために構成する団体のことです。マンションの「専有部分」は、当然、区分所有者が単独で管理しなければなりません。しかし「共有部分」や「敷地」は、区分所有者全員の共有財産になるため、全員が協力して管理する必要があります。共有部分や敷地の維持・管理、運営をスムーズに行うための団体が、分譲マンションの管理組合なのです。
マンションの専有部分と共有部分の区別は、所有権で決まります。専有部分は、壁や床、天井に囲まれた居住空間のことです。共有部分は、エントランス、共用廊下、屋上などの建物部分、エレベーターや電気、給排水などの共用設備をいいます。また、ベランダやバルコニー、専用庭、窓、サッシ、玄関ドアも共有部分です。
建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第3条は「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。」と規定しています。この法律により、区分所有者はその意思に関係なく管理組合のメンバーになるのです。マンションの所有者は、別の場所に居住していても組合員になります。譲渡や相続などで区分所有者になった場合も自動的に組合員になり、売却などで所有者でなくなった場合は組合員ではなくなります。区分所有者は、自分の意思では管理組合を脱退することはできないのです。
また、重要事項に関する意思決定を行うときは、総会を開き、組合員の話し合いや議決によってさまざまな決定をします。実際には、委託した管理会社が維持管理のサポートを行っているのが普通です。しかし、管理会社はあくまでも管理組合をサポートする存在であり、マンションの維持管理、運営の主役は管理組合およびマンションの区分所有者ということになります。
理事会は管理組合の執行機関
管理組合が行う業務の執行機関が「理事会」です。組合員全員が毎回そろって話し合いをするのは難しいため、組合員のなかから数名の代表者(役員)を選んで理事会を組織します。つまり、管理組合の代表者で組織されるのが理事会なのです。
マンションの運営や維持・管理の方針については、基本的に理事会で話し合われ、決定します。ただし、理事会といってもほとんどの理事は、不動産やマンション管理についての専門家ではないため、管理会社がサポートするのが一般的です。
理事会役員の主な仕事とは
理事会役員の主な仕事は、理事会への出席、事業計画(年間)と予算の把握、管理費・修繕積立金の管理、総会の実施などです。理事会役員は、月1回程度のペースで開催される理事会へ出席することが最も重要になります。理事会の成立要件はほとんどの場合、管理規約で「理事の半数以上の出席をもって成立する」などと定められているためです。理事会がうまく機能するためには、成立要件を満たす理事の出席が必要になります。
管理会社に管理を委託している場合、事業計画案や予算案は管理会社が作成するのが一般的で、理事会や総会での承認後に、理事会が事業計画や予算を執行するのです。たとえば、4月に設備点検、5月に消防設備点検など事業計画に沿って運営します。
また、設備の不具合などの対応などその都度、理事会が予算の範囲内で対応しなければならないのです。したがって、理事会役員は事業計画と予算を正確に把握しておかなければなりません。さらに、マンションで起こったトラブルなどについても、理事会で協議し解決策を検討します。
管理組合の予算は、組合員である区分所有者から徴収した管理費や修繕積立金です。マンションの規模によっては、徴収した管理費や修繕積立金の総額が数百万~数千万円になることもあります。そのため、徴収したお金を適切に管理することも、理事会役員の重要な仕事のひとつです。管理会社に委託している場合は、理事会で管理費会計や修繕積立金会計について管理会社から報告を受けます。
通常、マンションでは、年に1回管理組合の組合員全員を集めて総会を開催します。総会を実施するのも、理事会の役割です。理事会では、総会で決議する議案を作成します。理事会で決定した事項のみを、総会で審議することになるのです。総会では、管理費会計や修繕積立金会計の報告を行い、次年度の事業計画案や予算案の承認を求めます。また、管理費や修繕積立金の改定など重要な議題についても、総会で審議・決議するのが一般的です。なお、総会の招集は区分所有法第35条(招集の通知)により、開催日の少なくとも1週間前に、会議の目的である事項を示して、各区分所有者に通知しなければなりません。ただし、この期間は規約で伸縮することが可能です。
役員にはそれぞれ役職(理事長、会計担当理事など)が割り振られ、その役職に沿った活動もすることになります。理事長は理事会と管理組合を代表し、区分所有法上の「管理者」にもなっていることがほとんどです。理事会や総会を招集し、議長になります。そのほか、業務委託契約の締結、総会での事務報告なども理事長の役割です。副理事長は理事長の補佐役で、理事長が転居などやむを得ない事情で役割を執行できない場合、理事長の職務を代行します。理事は理事会の構成員で、理事会では管理規約で定められた事項について審議するのです。管理組合によっては、業務の項目について会計担当理事、広報担当理事、防火担当理事などを置いている場合もあります。
また、管理組合には、理事会役員のほかに「監事」を置かなければなりません。監事の役割は、管理組合の会計と理事会の業務状況についての監査・報告です。通常、管理組合には、1~数人の監事が置かれます。監事と理事を兼任することはできないため、監事は必要な場合に理事会で意見を述べることはできますが決議には加わりません。通常総会の際には、事前に収支報告書の監査を行い、総会で報告します。管理業務の運営や会計状況に不正があると認められた場合は、臨時総会を招集することができます。
理事会役員はどうやって決まる?
理事会役員は多くの場合、持ち回り、立候補、推薦のいずれかの方法で決まります。まず、立候補・推薦を募り、それでも定員が足りないときは持ち回りになるのが一般的です。そのため、分譲マンションに長く住んでいる場合、どこかのタイミングで役員が回ってくる可能性が高くなります。任期は、1年交代や2年交代、1年~2年ごとの半数交代など管理組合によって異なります。理事会役員は総会で選出されますが、理事長と副理事長は理事のなかから互選により選任されることがほとんどです。
良いマンションは理事会の活動が活発
理事会の質は、マンションの管理状況に直結します。管理の良いマンションは、理事会や管理組合がしっかり機能しているのです。委託している管理会社に、マンションの維持・管理や運営についての的確な指示を出すことができます。そのため、マンションを購入するときは、理事会の活動状況もチェックすると良いでしょう。理事会の活動状況は、管理費会計で判断することができます。管理費会計は、毎月の管理費がどのような使途で支出され、残高はいくらかが記載されている会計資料です。この資料は、不動産会社や売主に依頼すれば事前に見ることができます。
管理費会計が毎月赤字になっている場合などは、将来、管理費が値上がりしていく可能性があります。管理費が高すぎると、売却時に売れにくくなるということもあるので注意が必要です。適切な管理費で良い管理ができているかということが、マンションを選ぶ際には重要になります。また、管理費や修繕積立金の滞納状況を見ることも、理事会が正常に機能しているかどうかを判断するポイントです。長期にわたって滞納が続き高額になっている場合には、理事会が機能していない可能性もあるので滞納状況をチェックするようにしましょう。
理事会の持つ重要な役割を理解しよう
マンションの居住者が住みやすい環境を維持・管理、運営するためには理事会の役割がとても重要になります。実際に、マンションの維持・管理や運営について指示を出すのは理事会になるためです。管理会社は理事会の指示に従って、サポートを行います。そのため、理事会がうまく機能していれば、長いあいだ、住みやすいマンションで在り続けることが可能なのです。マンションを選ぶときや自分が理事会役員に選ばれたときのためにも、 理事会の持つ重要な役割を理解しておくようにしましょう。
(最終更新日:2019.10.05)