マンションで起きると厄介なトラブルのひとつに「水漏れ事故」が挙げられます。場合によっては、被害が自宅だけで済まず、階下の部屋にまで及んで大きなトラブルに発展するおそれもあるため油断できません。今回は、そんな怖い水漏れ事故の発生原因をはじめ、いざ当事者になったときにどう対処すれば良いのかを詳しく解説していきます。
マンションで水漏れ事故が起きる原因とは?
鉄筋コンクリートで造られていることが多いマンションは、一見すると水漏れ事故とは無縁に思えます。ところがマンションの水漏れ事故は意外と多く発生しており、決して他人ごとではないのです。戸建ての場合、水回りは1階に集中しているうえに自分たち以外は住んでいないため、水漏れ事故が起きても被害は小さくて済みます。しかし、集合住宅であるマンションはそうはいきません。水漏れの規模によっては階下にまで被害が及び、被害額が大きくなるおそれもあります。万が一の事態を避けるためにも、マンションの水漏れ事故には十分注意しておかなければなりません。
マンションで水漏れ事故が起きてしまう原因は、主に2つあります。
1つ目は「住人の故意や過失によって起きてしまう人為的な原因」、2つ目は「配管の故障や老朽化などで起きる設備的な原因」です。どちらの原因で起きた水漏れ事故かにより、その後の責任の取り方や対処が変わってきます。いざ水漏れ事故が起きたときに正しく対処できるよう、どんな原因があるのかを知っておきましょう。
1.入居者が原因の場合
マンションの水漏れ事故の原因のひとつが「入居者の不注意」によるものです。たとえば、お風呂をためようとして蛇口をひねったものの、失念して長時間お湯を出しっぱなしにしてしまうケースが挙げられます。排水が追い付かず、洗面所にまでお湯があふれて水浸しになった経験のある人もいるのではないでしょうか。ほかにも、洗濯機のホースが配水管から外れて水がすべて流れ出てきてしまったり、ベランダの排水口に大量の水を流したりするのも水漏れ事故の原因になります。
さらに、掃除をしようとして水を流したものの、防水処理されていなかったために水漏れすることもあります。玄関やトイレなど、一見水洗いできそうなところも防水処理されているとは限らないので、注意しましょう。トイレにトイレットペーパー以外のものを流したり、台所の排水口に大量の油を流したりするのも、配管が詰まって水漏れする可能性があります。いずれも入居者の不適切な使い方が原因となるため、十分に注意しなければなりません。
2.建物や設備に問題がある場合
水漏れ事故は、入居者の不注意だけで起きるわけではありません。設備や建物自体の老朽化や故障などにより、水漏れしてしまうケースもあるのです。たとえば、排水管の老朽化によるひび割れや接続不良が起きると、そこから水が漏れてしまいます。また、外壁に生じたわずかなひび割れから、雨水が侵入して雨漏りを引き起こすこともあります。設備や建物は日を追うごとに劣化していくため、築年数が経過した物件ほど水漏れ事故が起こる可能性が高まるでしょう。
さらに厄介なのが、建物や設備の問題はなかなか目につきにくいという点です。壁の中を通っている配管などにトラブルが生じると、水漏れの箇所や状態を確認するのが難しくなります。水漏れ事故の発生そのものに気づきにくいですし、水漏れしている場所によっては、すぐに補修作業が行えず被害が広がってしまうおそれもあるのです。このような建物や設備の問題による水漏れ事故は、必ずしも築年数の古い物件で起きるとは限りません。築浅の物件でも、建築時の接続不良や人為的なミスなどにより、水漏れしてしまう可能性は十分にあります。築浅物件だからと油断せず、水漏れの症状を発見したらすぐに管理会社などへ連絡するようにしましょう。
水漏れ事故の責任は誰が取るべきなのか?
水漏れ事故が起きた場合、最も気になるのが「責任の所在」ではないでしょうか。水漏れによって家具や建物などに何らかの被害が生じてしまえば、当然加害者が被害者に損害賠償しなければなりません。被害の規模によっては高額の損害賠償金が発生するので、責任を誰が取るのか正しく理解しておきましょう。まず、建築工事に問題があったことで起きた水漏れは、分譲業者や施工会社に責任が生じます。配管の接続不良や部品の間違いなど、建築時に何らかのミスがあったケースが該当します。
人為的な原因で起きた水漏れ事故なら、それを起こしてしまった人が責任を取らなければなりません。分譲マンションであれば部屋の所有者、賃貸マンションなら賃借人が責任を負うのが一般的です。設備や建物の老朽化などが原因であれば、欠陥のあった箇所を所有している人が損害賠償を行います。具体的には、専有部分で起きた水漏れはその部屋を所有する人、共用部分であれば管理組合に責任が生じます。管理組合はマンションの部屋の所有者がほぼ全員加入しているはずなので、実質的には所有者全員で一緒に責任を負うということです。
もし水漏れの被害者になってしまったら?
マンションの最上階に住んでいる人を除き、上の階の部屋で起きた水漏れ事故で被害を受けてしまう可能性もあります。自分が被害者になってしまった場合は、すぐに管理会社や管理組合に連絡し、原因を突き止めるようにしましょう。「そのうち水漏れも止まるだろう」と楽観視していると、いつまで経っても水漏れが止まらず、被害が広がってしまうおそれがあります。また、実際に被害を受けた証拠を残すためにも、水漏れしている状況がわかる写真や動画を撮っておくことも必要です。
ちなみに、上の階からの水漏れに気づいたとしても、直接上の階の住人と話し合うのは避けましょう。話の内容や態度などによっては、余計なトラブルになりかねません。水漏れ事故は、原因を特定して適切に対処し、被害を最小限に食い止めることが何より大切です。上の階の住人にスムーズに対応してもらうためにも、管理会社などから連絡してもらうのが一番です。
自分が加害者になってしまった場合は?
自分の不注意などで水漏れ事故を起こしてしまったときには、できる限り早く対処して水漏れを止めることが先決です。異常を見つけたら、すぐに管理会社や管理組合に連絡し、調べてもらうようにしましょう。このとき、階下の部屋にも水漏れが及んでいないか、状況を確認してもらうことも大切です。ただ、壁や床の中の配管などから水漏れしている場合、自分では気づかないうちに被害を与えている可能性もあります。階下の部屋の住人や管理会社などから「水漏れしているようだ」と連絡があったときは、門前払いせず誠実に対応しましょう。
床下を通る共用配管からの水漏れが疑われる場合などは、フローリングなどを剥がして調べることもあります。水漏れを放置するとカビや建物全体の劣化など、さまざまなリスクがあるので、できる限り調査に協力することも大切です。被害の大きさによっては、個人で損害賠償を行うケースもあります。万一に備えて、あらかじめ個人賠償責任保険に加入しておくと良いでしょう。
加害者になる可能性も念頭に
水漏れ事故は、単に床や壁が水浸しになるというだけでなく、建物そのものに大ダメージを与えてしまうリスクもあります。マンションに住んでいる場合は、自分だけでなく階下の住人にまで迷惑をかけてしまう可能性もあるので、くれぐれも注意しなければなりません。被害が大きくなるのを防ぐためにも、異常を見つけたら可能な限り早期解決を目指して行動することが大切です。自分では気づかないうちに加害者になっている可能性もあるため、個人賠償責任保険に入るなどして日ごろからリスクに備えておきましょう。
(最終更新日:2019.10.05)