近年、社員が副業をすることに寛容な会社が増えてきました。副業をすると、本業である勤務先からの給与以外の収入を得ることになるため、一定の条件を満たせば最寄りの税務署に確定申告をして税金を支払う必要があります。今回は、副業をして収入を得たときの税金について、みてみましょう。
副業による所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要
個人の所得にかかる税金は、1月1日から12月31日までの1年間の所得に課税されます。税金の種類は、国税の所得税(および復興特別所得税)と地方税の住民税です。
会社員の場合、会社がその人に代わって1年間の所得を計算し、税金の支払いを行います。毎年秋に行われる年末調整は、会社が社員一人ひとりの1年間の所得を精算するために実施するものです。会社が個人の申告・納税を代行するため、確定申告をした経験のない会社員の方が多いのではないでしょうか。
なお、1年間に一定額以上の医療費を支払った場合や災害などに遭って損害が生じた場合、住宅ローンを組んだ場合などは、確定申告をすることで税金の還付を受けることができます。
会社は、自社が社員に支払った給与に関しての所得計算や税金の支払いは行えますが、副業分の収入や所得を把握することはできません。そのため、副業をした本人が、申告期限(2018年分の申告期限は、2019年2月18日~3月15日)までに、確定申告を通じて本業の給与所得と副業分の所得とを合算して1年間の自分の所得金額を確定させ、源泉徴収された税金などとの過不足を精算する手続きをしなければなりません。
なお、確定申告は、国税である所得税(および復興特別所得税)に関する手続きですが、申告した内容は地方自治体に自動的に連携されて住民税の精算も行われます。
確定申告は、副業で収入を得ている人全員がしなければならない訳ではありません。副業による「所得金額」、いわゆる“儲け”や“利益”が1月1日から12月31日までの1年間で20万円を超える場合のみです。逆に言うと「所得金額」が20万円までであれば、申告をしなくても構いません。
「所得金額」の計算方法は、どんな副業かによって違う
副業がパートやアルバイトなどで給与が支払われる場合には、収入の金額が「所得金額」になります。
執筆料や講演料などによる報酬の場合は、仕事の依頼元から受け取った報酬から、その仕事をするために使った経費を差し引いた金額が「所得金額」になります。たとえば、執筆や講演の準備をするために、参考資料として書籍を購入したり、取材をしたりした場合は、書籍代や取材費用が経費になります。
近年は、クラウドソーシングサービスを提供している会社に登録して、自由な時間に自宅で、データ入力や原稿執筆、ロゴ作成、アプリの開発、Webサイトのデザイン、システム開発、アンケート調査などの仕事を、インターネットやメールなどを活用して行う方も増えています。これらの仕事も、受け取った報酬から、経費を差し引いた金額が「所得金額」となります。
転勤などに伴って、自宅を賃貸する場合には、家賃収入から管理費、固定資産税、都市計画税、火災保険料、建物の減価償却費等の経費を差し引いて「所得金額」を求めます。
このように、副業の種類によって、「所得金額」の計算が異なるため、日頃から領収書などをきちんと保管し、1年間の経費を管理・記録しておく習慣をつける必要があります。
なお、フリーマーケットアプリなどを活用して、営利を目的とせず、不要になった家具、洋服や生活用品など生活に通常必要な動産の譲渡による所得は、年間20万円を超える所得であっても非課税となり、基本的には確定申告をする必要はありません(ただし、貴金属や宝石、書画、骨董などで、1個または1組の価額が30万円を超えるものを超えるものの譲渡による所得は課税対象になります)。
「確定申告作成コーナー」で簡単に確定申告書が作成できる
例年、3月中旬(3月15日前後)が、前年分の確定申告・納税の期限になっています。
1月末までに本業の勤務先から受け取る「源泉徴収票」や、副業の依頼元から受け取る「源泉徴収票」や「支払調書」、1年間の収入金額、経費などの情報などを準備できれば、国税庁が提供しているインターネットサイト「確定申告書等作成コーナー」を活用し、パソコン、スマートフォン、タブレットで簡単に申告書等を作ることができます。画面の案内に従って金額等を入力すれば、税額などが自動計算されます。作成した申告書の提出方法は、「作成コーナー」からe-Taxで送信して提出する方法と、申告書をプリントアウトして税務署に郵送する方法の2通りがあります。
まとめ
副業をすると、確定申告をして追加の税金を払わなければならないだけではありません。仕事の依頼元から報酬を受け取ったときに、あらかじめ税金が源泉徴収されている場合は、確定申告をすることで税金が還付されることもあります。
副業をスタートするときには、翌年3月中旬までに確定申告をすることをあらかじめ想定し、日頃から収入と経費を細かく記録・管理しておけば、実際に申告手続き行うときにスムーズに進めることができます。
(最終更新日:2019.10.05)