住宅ローン減税が3年延長へ! 消費税8%と10%、控除額はどう変わる?

住宅ローンを借り入れてマイホームを購入した場合、「住宅ローン減税制度」という税制優遇の適用を受けることができます。2019年2月5日の閣議決定によると、消費税が引き上げられる2019年10月1日から2020年12月31日までに入居する住宅に限り、住宅ローン減税を受けられる期間を、現行の10年間から13年間に延長する見通しです。

住宅ローン減税制度の控除期間が3年間延長

住宅ローンを借り入れて住宅を取得した場合、一定の要件を満たせば、住宅ローン減税制度が適用されます。この制度は、住宅ローン年末残高の1%相当分の所得税が10年間にわたって控除されて減税される仕組みです。とても大きな税制優遇であり、マイホームを取得する多くの方がこの制度の適用を受けています。

2014年4月から消費税率が8%に引き上げられたのに伴い、増税分の負担を軽減するために、それまでよりも大幅に控除額が拡充されました。消費税率が8%の住宅の場合も、今後10%になった場合も、10年目まではこれまでどおり住宅ローン年末残高の1%相当分の所得税が控除されます。消費税率10%の場合、プラスして11年目から13年目まで、建物購入価格の2%(2/3%×3年間)、もしくは住宅ローン年末残高の1%相当分の還付を3年間続ける場合と比べて少ない方の金額が減税となります。なお、概要は以下の通りです。

【消費税率8%の住宅の控除額(現行)】

住居の種類  居住年 控除期間 住宅借入金等の年末残高(A) 対象税 各年分の
住宅ローン控除額
 最大控除額
(10年合計額)

認定長期優良住宅
認定低炭素住宅

~2021年12月 10年 限度額
5,000万円
所得税 (A)×1.0%  500万円
その他の一般住宅 ~2021年12月 10年 限度額
4,000万円
所得税 (A)×1.0%  400万円

※所得税から控除しきれない部分は、その年の所得税の課税総所得金額等の額の7%を限度(最高13万6,500円/年)として、翌年の住民税額から差し引く

【消費税率10%の住宅の控除額(見通し)】

住居の種類  居住年 控除期間 住宅借入金等の年末残高(A) 対象税 10年目までの
各年分の
住宅ローン控除額

11~13年目の
各年分の
住宅ローン
控除額

認定長期優良住宅
認定低炭素住宅

2019年10月
~2020年12月
13年 限度額
5,000万円
所得税 (A)×1.0%  建物購入価格の2/3%か、住宅ローン年末残高の1%のいずれか少ない金額
その他の一般住宅 2019年10月
~2020年12月
13年 限度額
4,000万円
所得税 (A)×1.0% 

※所得税から控除しきれない部分は、その年の所得税の課税総所得金額等の額の7%を限度(最高13万6,500円/年)として、翌年の住民税額から差し引く

上表の見方について、具体的なケースで考えてみましょう。

たとえば、「その他一般住宅」を取得するために住宅ローンを借りて、ある年の年末のローン残高が4,500万円だったとしましょう。この年の控除額は「住宅借入金等の年末残高」の限度額である4,000万円の1%相当額、つまり、40万円になります。この年に50万円の所得税を払う収入の人の場合、所得税額50万円から控除額40万円が差し引かれ、納税額は差額の10万円ですみます。

一方、同じく控除額が40万円で、この年に15万円の所得税を払う収入の人の場合は、所得税全額の15万円が控除されて所得税は0円になり、さらに控除しきれない残りの25万円のうち、住民税控除上限額である13万6,500円が、翌年の住民税から差し引かれます。このケースでは、控除額は40万円ですが、実際の減税額は所得税・住民税の合計で28万6,500円となり、差額の11万3,500円は減税にはなりません。

このことからわかるように、住宅ローン減税制度は、消費税が8%の段階でも、10%になってからでも、税金をたくさん払うことができ、かつ、住宅ローンを4,000万円以上、あるいは5,000万円以上借りて返済することができる高所得者ほど減税メリットを受けられる仕組みになっています。そのため、消費税の増税によって負担が増すのは、所得の高い人以上に所得の低い人だという声もあります。

いつ、どんな家を買うかで控除額が変わってくるため、慎重に比較検討を

消費税がかからない中古住宅は、住宅ローン減税の控除額が少ない

個人から中古住宅を購入する場合、そもそも消費税はかかりません。住宅ローンを借りて消費税がからない住宅を取得すると、消費税の負担がない代わりに住宅ローン減税の控除額が少ないことに注意が必要です。

【消費税がかからない住宅の控除額】

住居の種類  居住年 控除期間 住宅借入金等の年末残高(A) 対象税 各年分の
住宅ローン控除額
 最大控除額
(10年合計額)

認定長期優良住宅
認定低炭素住宅

~2021年12月 10年 限度額
3,000万円
所得税 (A)×1.0%  300万円
その他の一般住宅 ~2021年12月 10年 限度額
2,000万円
所得税 (A)×1.0%  200万円

※所得税から控除しきれない部分は、その年の所得税の課税総所得金額等の額の5%を限度(最高97,500円/年)として、翌年の住民税額から差し引く

消費税率8%・10%の場合と比較すると、「住宅借入金等の年末残高」の限度額が低くなっています。このため、たとえば、「その他一般住宅」を取得するために住宅ローンを借りて、ある年の年末のローン残高が4,500万円だったとすると、この年の控除額は、住宅借入金等の年末残高」の限度額である2,000万円の1%相当額、つまり、20万円しか減税されないことになります。

インターネットや雑誌などで、住宅ローン減税制度の仕組みが紹介されるときは、消費税率8%・10%の住宅のケースを目にすることが多いと思います。それらを見て、消費税がかからない住宅の控除額も同じだと勘違いしないよう注意したいものです。

増税前と後、どちらに購入した方がお得なのか

消費税がかかる住宅とかからない住宅とでは、住宅ローン減税制度の控除額が異なることを紹介しました。新築は価格が高いなどの理由で、個人から中古住宅を購入することを検討する場合、消費税がかからない代わりに住宅ローン減税制度の控除額も少なくなることに注意が必要です。ただし、消費税の10%引き上げを機に、すまい給付金の対象者や金額が拡充されます。給付される収入の上限が510万円から775万円に緩和され、給付額は最高30万円から50万円にアップするため、トータルで考えると増税後に購入した方が得なケースも出てくるでしょう。
そのほか、新たなポイント制度の創設や、贈与税非課税枠の拡大も予定されています。数年内に住宅の取得をしようと考えている人は、自身が増税前と後に、それぞれどのような支援策を活用できるのか、関心を持っておきたいものです。

(最終更新日:2019.10.05)
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