Q.近所の方に、「家の玄関に車が突っ込み、ドアを取替えることになって大変だった」という話を聞きました。他人ごととは思えず不安になりましたが、他人の車が家に突っ込んで来た場合、逆に誤って自分の車が他人の家に突っ込んでしまった場合は、何か保険が使えるのでしょうか。
A.車が家に突っ込んで損害が発生した場合には、自動車保険や火災保険の補償対象となる場合があります。
最近、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故のニュースを耳にすることも多いですね。、想定したくはないですが、自分の身にも起こりえることです。車でなくとも、自転車の運転を誤ってよその家の車庫を壊してしまったり、歩行者にケガを負わせたり・・・ということもあり得ます。被害者になるだけでなく、加害者になるリスクにも備えるために、損害賠償や被害の回復に、どんな保険が使えるのか、確かめておきましょう。
火災保険で「建物外部からの衝突」が補償される場合も
建物に車が突っ込むような事故で損害が発生した場合には、火災保険から保険金が支払われる場合があります。火災保険には「建物の外部からの物体の落下、飛来、衝突、もしくは倒壊」も補償対象としているプランがあるからです。火災保険の補償内容は、保険会社ごとの商品、契約形態によって異なるので、ご加入中の火災保険の補償内容を確かめておかれるとよいでしょう
なお、火災保険は表1のように、火災だけでなく、風災や落雷のような自然災害による損害なども補償します。「台風で飛んできた物で屋根が壊れた」「台風で窓が割れ、風雨が入り込んで電気製品が壊れた」といった場合も補償対象となります。
ただし、その損害が他人によるものの場合には、まずその加害者の損害賠償責任が問われます。加害者が加入している対物賠償責任保険などから損害賠償がなされれば、加入中の火災保険から保険金は支払われません。
火災保険で補償される主な損害
□損害保険金 火災、落雷、破裂・爆発
□風災・雹(ひょう)災・雪災※
□建物の外部からの物体の落下、飛来、衝突もしくは倒壊または建物内部での車両もしくはその積載物の衝突もしくは接触
□給排水設備に生じた事故による漏水、放水または溢(いっ)水による水濡れ
□騒擾(じょう)およびこれに類似の集団行動ま損害保険金たは労働争議に伴う暴力行為もしくは破壊行為
□盗難によって生じた盗取、損傷または汚損※
□通貨または預貯金証書の盗難※
□持ち出し家財の損害※
□水災※
□不測かつ突発的な事故による破損・汚損※
□費用保険金 損害防止費用
□災害時の臨時費用※
□残存物の取り片づけ費用※
□失火見舞費用※
□地震火災費用※
※ 一定の制限付で補償される場合があります
損害賠償責任を負った場合には、賠償責任保険の対象に
車を他人の家に突っ込んだりして損害を与え、加害者となった場合には、損害保険の「賠償責任保険」が頼りになります。「賠償責任保険」は他人に損害を与えて、法律的な損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる保険です。
この「法律上の損害賠償責任」には、民法、商法その他一切の法律に規定されている損害賠償責任が含まれていますが、その中で主になるのが、民法709条に規定されている「不法行為責任」です。
・民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
ただし、賠償責任保険では、「故意」による損害には保険金は支払われないので、「過失」による損害が補償されることになります。車が家に突っ込んで損害を与えたような場合には、この「賠償責任保険」が頼りになります。
自動車保険の「対物賠償責任保険」は、車によって損害賠償責任を負った場合が対象に
多くのマイカー保有者は、自動車保険に「対物賠償責任保険」をセットして加入しています。
「対物賠償責任保険」とは、契約の車の事故により、他人の財産や物に与えた損害に対して法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる保険です。よその家や建物に誤って車を突っ込み、損害を与えてしまった場合には、この「対物賠償責任保険」から、1事故について保険金額を限度として保険金が支払われます。
対物賠償責任保険の被保険者は、記名被保険者だけでなく、被保険自動車を使用・管理中の記名被保険者の配偶者や同居の親族、別居の未婚の子なども被保険者になります。
対物賠償責任保険の保険金額は、低く設定しておいたほうが保険料負担は抑えられます。しかし、下の表のように、被害の額がかなりの高額になる場合もあるため、「無制限」にしておくと安心です。
なお、対物賠償責任保険に加入していても、保険金支払いの対象外となる場合があります。表3のように、地震や津波による損害は対象外ですし、その保険の記名被保険者やその家族(配偶者、子、親)の財物を壊した場合も保険金の支払い対象外です。
ただし、被害者救済の観点から、無免許運転や酒酔い運転による事故は、保険金支払いの対象となります。
対物賠償保険で保険金が支払われない主な場合
□契約者、記名被保険者などの故意によって事故が起きた場合の損害
□戦争、内乱、暴動などの異常な事態によって生じた損害
□地震・噴火またはこれらによる津波によって生じた損害
□台風、洪水、高潮によって生じた損害
□被保険自動車を競技、曲技もしくは試験のために使用すること、または被保険自動車を競技、曲技もしくは試験を行うことを目的とする場所において使用することによって生じた損害
□次の者の所有、使用または管理する財物が滅失、破損または汚損された場合に被保険者が被った損害
・記名被保険者
・被保険自動車を運転中の者またはその父母、配偶者もしくは子
・被保険者またはその父母、配偶者もしくは子
「個人賠償責任保険」もいざという時に損害をカバー
さらに、「個人賠償責任保険」も賠償責任保険の代表的な保険です。個人賠償責任保険は 火災保険や自動車保険にセットして加入している場合も多いので、保険証券を確かめておきましょう。
個人賠償責任保険も、記名被保険者だけでなく、契約者だけでなく、本人の配偶者、本人またはその配偶者の同居、本人またはその配偶者の別居の未婚の子も被保険者になります。被害者に対する損害賠償金(治療費、修理費、慰謝料など)、弁護士費用・訴訟になった場合にそれに要する費用、調停・和解・仲裁の場合にそれに要する費用が保険金支払いの対象となります。
たとえば、「自転車で走行中に歩行者とぶつかりケガを負わせた」「自転車の運転を誤り、よその塀に突っ込み、壊した」といった場合に保険金が支払われます。
ただし、「台風でカーポートの屋根が飛び、隣家の屋根を壊した」といった場合には、台風という自然災害による不可抗力として過失がないとみなされれば、補償対象にならない場合もあります。自然災害がきっかけでも、たとえば、カーポートが老朽化していて壊れかけており、管理に過失があったとみなされれば、損害賠償責任が問われ、補償対象になる場合もあります。
このように、車が他人の家に突っ込んだり、他人に損害を与えたりした場合には、火災保険や自動車保険、個人賠償責任保険などの損害保険が頼りになります。しかし、どんな場合にどれくらいの補償があるかは、契約内容によっても事故の内容によってもケースバイケースなので、いざ事故となったときに「こんな事故だからこの保険」と判断できないかもしれませんが、「もしかしたら、この保険が役に立つかも」ということだけでも思い出して連絡してみることが大切です。
保険会社で、契約内容と事故内容を確かめ、補償対象になるかを確認してくれます。請求しなければ保険金は受取れません。いざというときに「こんなときに役に立つ保険に入っていたはず」と思い出せるように、既加入の保険証券を確かめておきましょう。
(最終更新日:2019.10.05)