分譲マンションの一室を購入すれば、それは買った人の所有物として登記され、資産になります。これは「区分所有」という考え方に基づいており、マンションのような建物の部屋を買った人に対して、その部分の所有権が認められたということなのです。今回は物件の所有権について解説していきます。
「マンション」のベランダや1階の庭は誰のもの?
マンションを購入し、所有している一室を「専有部分」と呼びますが、実はベランダ・ルーフバルコニー・専用庭などは、「専有部分」には含まれません。
これらは部屋につながっており、通常は他人や隣人がそこに入ることはありません。ですから、部屋の持ち主にしてみれば、それらも自分たちの所有物のように思えてしまいます。実際に、分譲価格も専用庭やルーフバルコニーがついているために、少し高い場合が多々あります。
所有権のある「専有部分」に対して、これらは「共有部分」と呼ばれ、同じ分譲マンションの「区分所有権」を持つすべての人に、等分に権利がある場所になります。ベランダ・ルーフバルコニー・専用庭などは、火災や地震など万一の際に住民の避難路などに使用されます。
ですから、「共有部分」に位置づけられているのです。日常的に使用するのはそこに部屋が隣接している人ですから、とくに「専用使用部分」といわれています。「共有部分」である以上、管理組合の許可なくリフォームや撤去などはできません。
エントランス・廊下・集会所・駐車場、私にも権利はあるの?
分譲マンションには、エレベーター・駐車場・集会所など、多くの住民で利用する場所がたくさんあります。これらも「共有部分」になりますが、「専用使用部分」とは違って特定の人が独占的に使用するわけではありません。分譲マンションの一部として「区分所有権」を持つ人たちに対し、一定のルールの中で平等に利用する権利が与えられているのです。
このうち、エントランス・廊下・階段室・エレベーターなどの建物部分と、受水槽・集合郵便受けなどの建物付属物は、「区分所有法」によって「共有部分」に決められているので「法定共有部分」といわれ、「専有部分」や「専用使用部分」に変更することができません。
これに対して、集会所や管理事務室などは、マンションごとに規約で「共有部分」と決めるために、「規約共有部分」と呼ばれています。
注意が必要なのはマンションの敷地と駐車場です。敷地には所有権が設定されますが、マンションの場合は「区分所有権」を持つ人全員にそれを分割すると、非常に複雑な処理をしなければならなくなってしまいます。そこで、敷地の所有権は「専有部分」と一体化して、場所を特定せずに持ち分に応じて処理をされることになっているのです。
駐車場はさらに複雑で、マンションごとに「共有部分」として使用契約が必要であったり、別途「区分所有権」を設定して分譲したりするケースなど様々です。
「戸建て」ってどこまでが自分の物?
分譲マンションの「区分所有権」に比べて、戸建ての所有権はわかりやすいといえます。多くの場合は境界標が設置してあり、それと図面があればお隣さんや道路との境がはっきりします。
少し難しいのが、境界の壁(塀やフェンス)でしょう。当然のことながら、境界の内側になければ自分の所有物ではありません。その場合、仮にこちら側の面であっても、境界線上に設置している壁は勝手にフックなどを貼ったり打ったりしてはいけないのです。長屋造りの建物を仕切る壁や、境界線上に立てられた壁は共有物的な扱いになります。構造に支障がなければ、内側に釘を打つなどといったことは自由にできますが、建て替えるときなどには、お隣さんと話し合いが必要になります。
家の前などにある私道は、関係する家々が共同あるいは分割して所有することがほとんどです。その場合、それぞれ所有権を持っていますが、維持・管理は全員で行い、何かあって対処をするときには、全員の同意が必要になります。私道の所有形態や使用ルールはいくつかのパターンがありますから、確認しておく方がよいでしょう。
また、一戸建ては建築基準法に基づき建物を後退させる「セットバック」が必要なケースがあります。所有権やその行使については自治体によって運用が異なるので注意が必要です。
(最終更新日:2019.10.05)