土地の価格には4つの種類があり、そのひとつに公示価格があります。変動する土地の価格としてテレビや新聞などでも発表されているため、聞いたことがあるという人も多いことでしょう。公示価格は、土地などの不動産について売買契約をする場合に知っておくべき重要な事項です。そこで、公示価格とはどのようなものかについて詳しく解説していきます。
公示価格って何?
公示価格とは、地価公示法に基づいて土地鑑定委員会が公表する土地の価格を指します。土地鑑定委員会は、1969年に設置された国土交通省の機関のひとつです。土地の価格を公示するだけでなく、評価の適正化を図り、固定資産税や相続税の評価額を決めるための調査も行います。
また、公示価格のもととなっている地価公示法とは、適正な地価を公示するために規定されている法律です。一般の人では判断しにくい土地の取引価格に指標を与えることで、公平な市場取引ができるように制定されています。公示されるのは、毎年1月1日時点での価格で、発表は3月中旬頃に行われます。そして、この発表により公示地価の標準値がわかるようになっているのです。
路線価との違いって?
公示価格と並んで土地の価格の種類のひとつである「路線価」は、正式には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類に分けられます。ただし、一般的には「路線価」というと「相続税路線価」を指し、相続税・贈与税を算出するために税務署が算定した評価額を意味します。
対して「固定資産税路線価」とは、土地ごとの固定資産税評価額を決める際の基準とするため、市区町村が算定している評価額を指します。相続税路線価は公示価格の8割、固定資産税路線価は7割程度の価格が相場です。
公示価格などは土地そのものに対して価格がつきますが、路線価は道路に対して価格がつけられます。税務署が相続税法に基づいて道路に価格を設定し、その道路から一定の距離内で接している土地について評価を与え、価格を決めるものです。1つの道路に接する土地の単価はすべて同じであるという判断がなされる評価方法となっています。具体的な路線価は、路線価図・評価倍率表のWEBサイトで簡単に確認ができます。
ただし、同じ道路に接している土地がすべて全く同じ形をしているとは限りません。このため、路線価を基準としながらも、さらに個々の土地の形状を考慮したうえで決定されます。また、異なる評価額を受けた複数の道路に面しているケースでは、1つの土地に対して複数の評価額が付けられる場合もあります。さらに、幅の広い規模の大きな道路の場合、同じ道に接していても、道のどちら側に接しているかによって異なる価格が付けられることもあるのです。
公示価格はどんな風に決まる?
公示価格は、不動産鑑定士と国土交通省の土地鑑定員会の両者がかかわって決められるものです。具体的には、まず2人以上の不動産鑑定士が介在し、土地に対する鑑定評価を行います。
不動産鑑定士
不動産鑑定士とは不動産業界のなかではトップレベルとされている資格で、不動産鑑定評価や鑑定知識を活かしたコンサルティング業務が主な仕事です。特に、不動産鑑定評価業務は不動産鑑定士の独占業務となっています。現地で土地の調査を行い、土地の収益の見通しや取引事例を分析して評価を決めるのが不動産鑑定士の役割です。
土地鑑定委員会
そして、不動産鑑定士が評価したものを審査・調整し公示するのが土地鑑定委員会の役目となります。土地鑑定委員会は土地取引状況についての調査票を買主に配り、その調査結果の集計を取って判定します。調査票の内容は、契約年月日や取引価格といった簡単な質問がほとんどです。調査により出た結果は、一般的な土地の取引時だけでなく、公共の用地を取得する際の価格算定でも利用されます。
公示価格と税金の関わり
公示価格は税金とも大きなかかわりをもっています。地価公示価格をもととして決められるものに、固定資産税評価額があります。
固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、固定資産税・都市計画税・登録免許税・不動産取得税を決めるうえでもとになる評価額のことです。
固定資産税とは、毎年1月1日現在で所有する土地や建物などの固定資産に対して課される地方税をいいます。都市計画税とは、都市計画事業や土地区画整理事業などに充てることを目的に、土地と建物それぞれに課されている都税あるいは市区町村税です。
登録免許税は不動産を購入する際やローンなどでの抵当権設定時に行う登記にかかる国税をいいます。そして、不動産取得税とはその名の通り、不動産の取得に際してかかる地方税のことです。
ほかにも増改築や贈与などのときにも課税されます。固定資産税評価額は3年に1度のサイクルで評価額の見直しが行われることが原則です。1994年度の評価額以降は、公示価格の70%の水準となるように調整されています。
公示価格の使い方は?
一般的には、土地の取引の際に参考にするのが公示価格の主な使い方です。土地の売買を行う際に、その土地にどのくらいの価値があるのかを判断するための目安にすることができます。
たとえば、公示価格の評価地点よりも駅に近いといったように条件がよい場合であれば、公示価格よりも高い評価額となることが通常です。
また、同じ道に接している同評価地点にある土地であっても、接する道路が狭いと公示価格よりは安くなることが予想されます。公示価格は一般の人にも公開されている地価で、法人に限らずだれでも利用することが可能です。このため、個人で住居や土地の購入を検討している場合のエリア選定の参考にすることができます。
公示価格を調べる方法
公示価格は、国土交通省の「標準値・基準値検索システム」を利用することで、だれでも調べることが可能です。
「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」のページを開いたら、最初に希望の「都道府県名」を選択します。さらに、「市区町村名」を選択すると出てくるのが検索条件を指定する画面です。
「検索条件指定」の画面では、地価公示と都道府県地価調査のどちらか一方だけを調べたいか、両方を調査対象とするかについて選択します。
加えて、「調査年」や「用途区分」「地価」の入力も必要です。調査年については、地価公示を対象とする場合であれば1970年以降、都道府県地価調査を対象とするなら1997年以降の年を選択しなければいけません。「検索ボタン」をクリックすると該当する所在地などの情報とともに公示価格が表示されます。
所在地について住所だけではイメージがわかない場合には、地番の後に記載されている「地図で確認する」を開くと地図からも確認することが可能です。
実勢価格が公示価格通りとは限らない!
公示価格はインターネットの検索でも簡単に調べることができます。ただし、検索結果として出てくる金額は指標の価格です。実際に売買するときの金額ではありません。必ずしも公示価格通り、あるいは公示価格に近い価格で購入できるとは限らないことを知っておく必要があります。
また、公示価格の対象となる地点であっても、不整形であったり、間口が狭かったりすると、公示価格よりも相当安くなるケースもあります。さらに、市場環境に急激な変化が起これば、実勢価格も大きく変動する可能性があるという点にも注意が必要です。公示価格はあくまでも参考の価格として理解しておくようにしましょう。
公示価格を参考にして取引を!
不動産取引をする際には、必ずしも自分の土地の価格が公示価格通りになるわけではありません。しかし、土地の価格の相場が全くわからない一般の人にとっては貴重な参考情報となります。指標の価格がわかることで、その土地の公示価格の上がり下がりといった全体的な傾向を判断することも可能です。後々後悔することにならないためにも、不動産取引をする際には公示価格を参考にして、価格が適切であるかをしっかりと見極めておくようにしましょう。
(最終更新日:2019.10.05)