私たちが日々利用する宅配便サービス。日用品から食料品、洋服まで、あらゆるものがネット通販で買えるようになった昨今、1日に何度も宅配便が届くという方も少なくないのではないでしょうか。私たちの生活になくてはならない宅配便について、知っておきたい新たな動きをレポートします。
宅配便の再配達の多さが社会問題に
近年のネット通販の普及で買い物はとても便利になりました。しかしその反面、宅配便の取扱量は急増。2017年には年間42億個を超え、そのうち約2割を再配達が占めるという状況に(※)。それにより、再配達に伴う労働生産性の低下や、CO2排出による環境への負荷など、社会問題化しています。
※国土交通省「宅配便の再配達削減に向けて」より
特に問題となっているのが、再配達の多さ。今回は、再配達の削減に向けて期待されるLIXILの戸建て住宅用宅配ボックスと、昨年から今年にかけて実証実験が行われたヤマト運輸の新しい宅配サービスについてご紹介したいと思います。
再配達の軽減には戸建て用宅配ボックスの普及が急務
宅配便の取扱量のうち約2割を占めるという再配達は、現在宅配業者の大きな負担になっています。不在時でも荷物を受け取れることから、近年新築マンションの多くに設置されるようになった宅配ボックスですが、戸建て住宅への採用率はわずか1%未満(※)。再配達の軽減に向けて、戸建て住宅への宅配ボックスの普及が急務といわれています。
そうした状況のなか、住宅設備機器メーカー大手のLIXILが2018年10月に販売を開始したのが、業界初(※)の戸建て用IoT対応宅配ボックス「スマート宅配ポスト」です。
※LIXIL調べ
IoT機能で「荷受けの通知」「複数荷物の受け取り」「集荷依頼」も可能
利用したことのある方はご存知かと思いますが、通常の宅配ボックスは、すでに荷物が入っている場合、受け取ることができません。宅配ボックスがあるので安心していたら、持ち戻りされてしまったという経験のある方も多いのではないでしょうか。
LIXILの「スマート宅配ポスト」は、IoT機能によりスマートフォンと双方向につながることで、「荷物が届いた場合の通知」や、「カメラ機能での荷物の見守り」ができるほか、従来の宅配ボックスでは難しかった「複数の荷物の受け取り」や「集荷の依頼」もできるようになっています。
スマートフォンと連動すると、こんなに便利!
「発売から約2カ月ですが、シンプルでスマートなデザイン性の高さと、複数荷物の受け取りができる機能、集荷の依頼ができる機能が、特にご好評いただいています。宅配ボックス市場は、今後戸建て住宅を中心に急速に拡大することが予想されます。スマート宅配ポストが再配達削減の助けになるとともに、今後はユーザーの皆様にも宅配業者さんにもさらに便利な仕組みづくりができればと思います」(LIXIL コミュミニケーションズ&CR部 酒井 亮介さん)
戸建て用IoT宅配ボックスの今後の展開に期待
業界初の戸建て用IoT宅配ボックスとして、販売を開始したLIXILの「スマート宅配ポスト」ですが、今後はクラウドサービスにより様々な業界と連携することで、さらに便利なサービスを模索していく予定だとか。
ネット通販の拡大による宅配便の増加は、今後も続くことが予想されます。宅配業者にとっては再配達の問題とともに、ドライバー不足も深刻です。私たちユーザーにも、宅配業者にも、荷主となる事業者にも、便利で快適な仕組みが生まれるとうれしいですね。
宅配便を好きな時間、好きな場所で受け取れるオンデマンド配送サービス
宅配便の新しい動きとしてもうひとつ、2017年4月から2018年6月まで神奈川県藤沢市で実証実験が行われた、ヤマト運輸の「ロボネコヤマト」プロジェクトをご紹介します。
「ロボネコヤマト」は、ヤマト運輸とディー・エヌ・エー(DeNA)が共同で推進するプロジェクト。好きな時間好きな場所で荷物を受け取れるオンデマンドの宅配サービス「ロボネコデリバリ―」と、地元商店の商品をネットで購入し運んでもらえる買い物代行サービス「ロボネコストア」の2つの実証実験が行われました。
今回特に注目したいのは、利用者がスマートフォンで荷物の受け取り日時と場所を指定できる「ロボネコデリバリ―」です。車内に保管ボックスを設置した車両を使用し、AIにより最適化された配送ルートを走ることで、受け取り時刻はなんと10分刻みで指定が可能。対象エリア内であれば、最寄駅や会社、公園など好きな場所で受け取ることができます。荷物の受け取りは、利用者自身が保管ボックスを開けて取り出すという仕組みです。
宅配便が届くとわかっていても、予定は常に変わるもの。家でじっと待っていられないこともありますよね。利用者の細かいニーズに対応することで不在率が減り、再配達の減少につながることは間違いありません。
また、今回ドライバーは運転に専念し、荷物の発送・受け取りに関与しない形で実験が行われたのは、将来の自動運転による配送サービスを想定してとのこと。
「ロボネコヤマト」の実証実験はすでに終了しており、今回の実験成果を踏まえて、今後の新サービスの展開が期待されるところです。