介護が必要になったら、まず何をする? 利用できるサービスや制度を知ろう

年末年始で実家に帰省した際、久しぶりに親や親せきに会い、「なんだか歳を取ったな…」と感じた人もいたのではないでしょうか。今や介護は他人事では済ませられない身近な問題。いざというときにあわてないように、今のうちから基本的な知識を身に付けておきましょう。この記事では、介護が必要になったときに役立つサービスや制度を紹介します。

介護保険制度のしくみ

介護サービスが必要になったら、自治体の窓口や地域包括支援センターなどに「要介護認定」を申請します。審査員が自宅などを訪問し、本人や家族と面談した後、自治体は主治医に意見書の作成を依頼します。介護認定審査会が介護の必要性と要介護度を審査し、申請から30日以内に介護度が決まります。

介護度は「要支援1~2」「要介護1~5」の7段階に分類され、これらに該当する場合、介護サービスを受けることができます。

要支援1:食事や排泄などほぼ自力でできるため、介護状態とは認められないものの、何らかの見守りや助けを必要とする状態
要支援2:要支援1と同様、食事や排泄などはほぼ自力でできるものの、生活の一部について部分的に介護を必要としている状態。適切な介護予防サービスによって改善が見込まれる場合
要介護1:生活の一部で部分的に介護を必要とする状態
要介護2:生活の一部で部分的に介護を必要とし、食事や排泄などで軽度の介護を必要とする状態
要介護3:中程度の介護を必要とする状態。衣服の着替えなど日常生活の動作全般で介助が必要な場合など
要介護4:重度の介護を必要とする状態。排泄や入浴、着替えなどに全面的な介助が必要な場合。認知症にともなう問題行動が多い場合など
要介護5:最重度の介護を必要とする状態。食事や排泄が一人でできず、意思の伝達がほとんどできない。ほぼ寝たきりの場合など

要介護1~5の認定を受けた人は、在宅で介護サービスを利用する場合、居宅介護支援事業者と契約し、その事業者のケアマネジャーに依頼し、本人や家族の意向などを踏まえて介護サービス計画(ケアプラン)を作成してもらい、具体的に利用するサービスを決めます。
要支援1・2と認定された人は、地域包括支援センターで担当職員が介護予防サービス計画 ( 介護予防ケアプラン ) を作成してもらいます。ケアプランに基づいた利用者負担は、費用の1割または2割※です。

※65歳以上の第1号被保険者については、原則合計所得金額160万円(単身で年金収入のみの場合、年収280万円)以上の所得がある人は2割負担( 第2号被保険者は、所得に関わらず1割負担 )

利用できるサービス

利用できるサービスには、大きく分けて「自宅で受ける」「施設に出かける」「施設で暮らす」といった3種類のサービスがあります。

自宅で受ける」場合は、訪問介護を受けて日常生活のサポートをしてもらったり(ホームヘルプサービス)、自宅でリハビリ(訪問リハビリテーション)や看護、相談を受けたりすることができます。

施設に出かける」場合は、入浴や食事の介助を受けるデイサービスや、入浴・食事の介助のほか、理学療法士・作業療法士などが行うリハビリテーションやレクリエーションで機能回復を目指すデイケアセンター、短期間宿泊するショートステイ、通所・訪問・宿泊を組み合わせた小規模多機能型居宅介護を利用できます。

ショートステイと短期入所療養介護(医療型ショートステイ)は、家族の介護負担軽減を図るために必要なサービスです。

施設で生活する」場合は、特別養護老人ホームで生活介護を受けたり、介護老人保健施設でリハビリをしたり、介護療養型医療施設で医療処置を受けることができます。

介護リフォームの助成制度

介護が必要になった場合、段差をなくす、手すりを付けるなどの改修工事が必要になることも。その際、住宅改修が必要な理由などをまとめた必要書類を添えて申請書を出すと、工事完成後に、住宅改修費用の一部が支給されます。要支援・要介護区分にかかわらず一人につき、支給限度基準額20万円の9割にあたる18万円が上限です(2万円は自己負担)。また、20万円を超えた場合、超えた額は全額自己負担となります。

階段や廊下に手すりがあるだけでも、移動が楽になります。ちょっとした工夫や配慮が役に立つことも

具体的には次のような工事が対象になります。

1.手すりの取り付け:階段や廊下、玄関、浴室、トイレなどに手すりを付ける工事
2.床の段差の解消:玄関や通路、浴室、トイレなどの段差をなくしたり、スロープを付けたりする工事
3.床や通路の材料の変更:車椅子で移動しにくい畳をフローリングに変更したり、浴室や階段の床材を滑りにくい床材に変更したりする工事
4.引き戸などの扉の取り替え:開き戸を引き戸にする工事など。
5.洋式便器への取り替え:足腰への負担が大きい和式トイレから、座って用を足せる洋式トイレに交換する工事など。
6.上記1~5に付帯して必要な住宅改修

なお、「介護の必要の程度」が3段階以上、上がったときや転居したときは、もう一度、20万円までの支給申請(自己負担1割)が認められます。このほかにも各自治体が独自の補助金を設けていることがあるので、確認をしてみましょう。

また、2021年12月末日までに一定のバリアフリーリフォームを行った場合、諸条件を満たせば工事費用(最高200万円)の10%、つまり最大20万円を限度に控除を受けることができる住宅特定改修特別税額控除も押さえておきましょう。

働きながら介護をするために

介護をしながら働けるよう、さまざまな制度や公的給付も用意されています。たとえば、介護休業を会社に申請すると、要介護状態の対象家族ひとりにつき通算93日まで、3回を上限に分割して介護休業をとることが可能です。介護休業中は原則として、休業開始前の賃金の67%が支給される介護休業給付金が支給されます(給付には事業主に1年以上雇用されていることなどの条件があります)。

介護はいつ始まるかわかりません。事前にこうした制度を把握しておくと、いざというときに役立つでしょう。

(最終更新日:2019.10.05)
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