2018年11月14日〜16日の3日間、東京ビッグサイトでIFFT/Interior Lifestyle Living(IFFT/インテリア ライフスタイル リビング)が開催されました。
東京から世界に向け、ライフスタイルを提案する国際商談見本市で、日本各地の家具産地をはじめ、テーブルウェア、ファッションアイテム、デザイン雑貨などを扱うメーカーやブランドが東京ビッグサイトに集結(一般来場者は入場不可)。
さまざまな展示品の中から今回は「子どものためのインテリア」にスポットを当て、職人たちのこだわりが詰まったブランドや商品の取材レポートをお届けします。
温かみのある木のおもちゃはママ職人たちが一つずつ手作り
山のくじら舎
会場でひときわ来場者の目を引いていたのが、山のくじら舎のブース。自然に囲まれた高知県安芸市に工房を持ち、木製ベビー玩具や子ども用おもちゃをひとつひとつ手作りしています。
高知県は、実は日本一の森林県とも呼ばれることもあるそう。温暖ですが寒暖差が大きく、厳しい気候の中で育った木は強度と豊富な油脂分を含んでいるため年月を経ると光沢を増していきます。特に土佐ヒノキは使い込むほどに強度を増していくため、おもちゃにはぴったり。使用されているのは切り株や間伐材で、森林環境の保全にも大きく貢献しています。
おもちゃは、赤ちゃん用の歯固めからおままごとセット、大工道具セット、手押し車などさまざま。基本は土佐ヒノキですが、おもちゃの種類によってサクラやケヤキも使用されています。
一番人気は「おふろでちゃぷちゃぷ」というお風呂で遊べる海の生き物11種類セット。クジラやイルカ、カメなどのかわいい生き物たちを、付属の網ですくって遊べる楽しいおもちゃです。入浴中だけでなく積み木のように遊んだり箱に戻すパズル遊びをしたりといろいろな使い方ができるのもポイント。水に強い土佐ヒノキで、自然の質感を最大限に生かすため無塗装で仕上げられています。発売から根強い人気を誇っています。
職人はほぼすべてが子育て中のママ。母親ならではの視点で、子どもの口に入らないサイズ、子どもが投げてしまっても壊れにくい形状や強度など細かく確認して製作を進めているとのこと。
ほかにも、トンカチやネジで家などを組み立てられる「ちびっ子大工道具セット」(税抜き28,000円)や、少し大きくなっても遊べそうな「十二支パズル」(税抜き12,000円)、丁寧なイラスト入りで楽しく学べる「あいうえおつみき」(税抜き25,000円)などをラインナップ。これらはすべて公式オンラインショップで購入できます。
「家の中で自然を身近に感じてほしい」という願いから誕生した子ども家具
丸紀
和歌山県の紀州材を使用した建材・家具インテリア雑貨の製造販売を手がける丸紀。家具やインテリアの取り組みを行うwoodpark事業では、木のぬくもり・木のある暮らしを提案するブランド「M.tree」などで子ども家具を企画・製造しています。
現在、M.treeで打ち出しているのは、赤ちゃんの頃から小学生、もっと大きくなっても長く使える機能的で上質なものばかり。背もたれのデザインが豊富な「こども椅子」、絵本が取りやすく子どもが自分でお片づけもしやすい「表紙の見える絵本棚」、ほかにも木の乗り物などがそろっています。MCシリーズの「MC DESK&CHAIR(本棚付)」は、成長や用途に合わせて形を変化させられるデスク。学習机として使わなくなったらドレッサーにしたり、脚部分を取り外してロータイプの机にするなど、家族みんなで長く使える仕組みになっています。
使われているのは紀州材のスギ、ヒノキ、北欧パイン。商品により最適な木材を選んでいて、美しい木目と心を癒してくれる香りを特に大事にしているそう。現代の子どもは自然と触れ合う機会が少なくなっていて、アウトドアが好きな家庭でも公園や森へ毎週末行けるとは限りません。そんな状況でも「木の家具を取り入れて家の中で自然を少しでも感じてほしい」という家具職人の強い思いが伝わってきます。現状では、ハンドメイド・手仕事のマーケットプレイス「Creema」にて家具を販売しているそう。
木工職人が本気で作るおままごとキッチンは、ふるさと納税の返礼品でも大人気
船山木工
同じく和歌山県の船山木工が手掛けているのは、ままごとキッチンシリーズ。木のぬくもりが感じられる国産ヒノキを主に使用し、リビングに置いてもほかの家具になじみやすいのが大きな特徴です。
ラインナップはコンパクトなキッチン台「W590シリーズ」(税抜き48,000円)、きょうだいがいてもゆったり遊べる「W870シリーズ」(税抜き62,000円)、収納としても使える「船山木工の冷蔵庫」(税抜き43,000円)。
すべて、木工家具を手がける熟練職人がひとつひとつ製作しています。子ども用というにはもったいないほど、細部までこだわったリアルなつくり。例えば流し台の蛇口は本物。取っ手やフックなども、本物の家具に使う部品を取り入れています。収納の両開き扉にはダンパーが内蔵されているので、ゆっくり安全に締まる仕組みになっており、子どもがバタンと勢いよく閉めて手を挟むことがありません。
和歌山県のふるさと納税返礼品として登録されていましたが、「子どもや孫のプレゼントに欲しい」と注文が殺到。今回の出展を機に販売先がさらに広がりそうです。
現代のライフスタイルに合った間仕切りは、子どものリビング学習にぴったり
THE MAJIKIRI PROJECT
最後にご紹介するのは、日本の伝統的な建具・間仕切りを現代のライフスタイルに取り入るため立ち上げられたTHE MAJIKIRI PROJECTです。
間仕切りとは、空間を壁ではなく半固定的なもので仕切ること。屏風やついたてなどがこれに当てはまり、日本では平安時代から取り入れられてきたものです。壁が多い西洋の家のつくりとはまた違って、空間を分断することなく圧迫感のない仕切りを作ることができると最近ではこの間仕切りが再評価されてきています。
同プロジェクトでは、間仕切りをストレスフリーな空間づくりに活用するための移動式家具「自分アドレス」を発表。折りたたみ式のコンパクトな間仕切りで、どこでも好きなところに自分だけのプライベート空間を作ることができるというものです。使われているのは国産ヒノキ。なめらかな手触り、あたたかみのある質感、ストレスから開放される香り……。ヒノキの癒し効果は科学的に実証され、医療の現場で取り入れている国もあるほど。木は金属より光の反射率が低く、まぶしさを軽減してくれるので目が疲れにくいという効果もあります。
企業向けには、フリーアドレスのオフィスでマイデスクを作るために使うという想定ですが、一般家庭では大きなダイニングテーブルを仕切るのに便利。最近ではリビング学習する子どもが増えていますが、デスクを置くスペースがなくても、この自分アドレスがあればダイニングテーブルが学習机に早変わり。仕切ることで集中しやすくなり、壁のようにすべて遮らないため親の目も届きやすくなります。
もちろん子どもの勉強だけでなく、書道や茶道、裁縫など集中して何かの作業をしたいときに重宝しそうです。今回の出展が「自分アドレス」の初披露となっており、今後オンラインショップやインテリアショップ、百貨店などで取り扱いがスタートしていくとのこと。今後の動向や取り扱い先についてはホームページをチェックしてみてください。
急ぎ足でせわしなく駆け回る現代の暮らし。便利な生活で満ち足りているようで、実は大切なものを見失っているのかもしれません。のびのびと成長しているように見える子どもたちも、きっと同じ。未来を担う大切な子どもたちには、こうした家具やおもちゃを通じて自然の心地よさや木のぬくもりをもっと身近に感じてもらいたい。そう強く感じた取材となりました。
(最終更新日:2019.10.05)