マイホームを探す際、新築だけでなく、中古住宅も視野に入れる人も少なくないはず。そこで押さえておきたいのが、2017年に創設された「安心R住宅」制度(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)。節税効果も期待できる「安心R住宅」の特色について、調べてみました。
「安心R住宅」とは?
「中古住宅」というと、どんなイメージを抱くでしょうか。「新築に比べて価格を抑えられる」「リフォームによって自分のニーズに合わせられる」など、メリットも多い一方、「中古は汚いのではないか」「雨漏りやシロアリが心配」「耐震性が不安」などといったマイナスイメージをもつ人もいるのではないでしょうか。
こういったイメージを払拭し、 「住みたい」「買いたい」と思える既存住宅を選択できるようにするため、国土交通省は2017年、「安心R住宅」制度を創設。国が定めた調査基準をクリアした建物に対し、国の関与のもとで事業者団体が「安心R住宅」の標章(ロゴマーク)を付与することで、物件選びに役立つ情報を分かりやすく提供する仕組みです。2018年4月1日から広告での使用が開始されました。
ちなみに、「安心R住宅」の「R」は、Reuse(リユース/再利用)、Reform(リフォーム/改装)、Renovation (リノベーション/改修)を意味しています。
「安心R住宅」制度ができた背景は?
理由は大きく分けて二つ考えられます。
一つは、住宅購入希望者の固定概念を取り払うためです。前述のように、中古住宅のイメージは「不安」「汚い」といったマイナス面を思い浮かべる人が大半です。それは、建物の構成要素が多岐にわたり、複雑なため、素人にとって分からない部分が多くあるからです。標章を設けることで建物の品質を以前より容易に判断できるようになります。
もう一つは、家族の形態が変化したことで、中古住宅が市場に多く流通するようになったからです。子世帯は、親世帯から独立して住むことが当たり前となりました。親が年老いて他界したり、施設に入所したりすると、それまで住んでいた家は空き家になってしまいます。このようなケースが増えていることから、今後も中古住宅はますます増加していくと考えられます。住宅の需要と供給のバランスを保つためにも、中古住宅購入が増えることが望ましいと国は考えているのです。
「安心R住宅」の特徴とは?
「安心R住宅」のロゴマークの使用には、「安心」「きれい」「分かりやすい」の3つの要件を設けています。
基礎的な品質があり「安心」
・新耐震基準を満たしている
・専門家によるインスペクション(建物状況調査など)の結果、「既存住宅売買瑕疵保険(※)」の検査基準に適合している
※購入した中古住宅に、構造耐力上主要な部分や雨水の侵入を防止する部分に隠れた瑕疵があった場合、補修費用などが支払われる保険
リフォーム工事がされていて「きれい」
・リフォーム工事によって従来の既存住宅の「汚い」イメージが払拭されている
・リフォーム未実施の場合は、リフォーム提案書があり、費用や工事後のイメージがわかる
・広告などで外装、内装、水回りの現況写真がチェックできる
情報が開示されていて「わかりやすい」
・検査済証や点検記録などの有無を示した「安心R住宅調査報告書」を不動産業者から入手できる
・さらに、希望すれば商談時などに詳細情報が開示される
※「安心R住宅」は、国の登録を受けた事業者団体(一般社団法人など)の構成員(会員企業である不動産業者)の責任のもと、国が定めた要件に適合することを表示するものであり、国による個別審査を受けたものではありません
築年数が古くても住宅ローン控除が受けられる場合も!
「安心R住宅」は、「既存住宅売買瑕疵保険(※)」の検査基準に適合している必要があり、同保険に加入することで、住宅ローン控除を受けられる場合があります。
中古住宅で住宅ローン控除を受ける要件の一つには、耐用年数による制限があります。木造は20年以内、それ以外の鉄筋コンクリートなどの建物は25年以内。これ以上になると、住宅ローン控除の対象外となります。
しかし、築年数が20年、もしくは25年以上の中古住宅でも「既存住宅売買瑕疵保険」に加入することで、住宅ローン控除を受けられるチャンスが広がります。これは、「既存住宅売買瑕疵保険」の加入証明書が税務署に提出する「耐震基準を満たす中古住宅の取得に係る税の証明書類」として有効なためです。
物件広告をチェックする際、「安心R住宅」のロゴマークに注目すれば、節税効果も期待でき、中古住宅選びの不安も減らせるのではないでしょうか。
※住宅ローン控除を受けるには、このほかの要件も満たす必要があるため、注意が必要。事前によく確認しましょう