2018年10月15日~19日の5日間、幕張メッセでCEATEC JAPAN 2018(シーテック ジャパン 2018)が開催されました。
CEATECとはアジア最大級の規模を誇るIT技術とエレクトロニクスの国際展示会のこと。今年はCPS(消費者価格調査)/IoTを活用し、経済発展と社会的課題の解決を両立する「超スマート社会(Society 5.0)」の実現がテーマです。
各社のブースには先端技術を搭載したさまざまな近未来製品がラインナップ。今回は住設関連の企業の参加も多く、暮らしに役立つような、住まいに関する先端技術・製品を調査してきました。
その取材レポートをお届けします。近い将来、私たちの暮らしは様変わりする!
住まいを構成する建材がIoTとつながり、便利で安心な暮らしを実現
IoTホームLink「Life Assist」(ライフアシスト)/LIXIL
LIXILは“住まいの内と外、そして社会のつながり”をテーマに、住宅建材・設備機器にIoTを融合させた商品や研究活動を紹介。独自システムのIoTホームLink「Life Assist」(ライフアシスト)は、センサー感知やスマートスピーカー等によるきっかけと、建材や設備、機器等の動作を自由に組み合わせることができます。
しかも、ひとつのきっかけで同時に複数動作をさせることが可能です。たとえば「おはよう」と言ったらシャッターが開き、室内灯が点灯する。朝の忙しい時に限ってエアコンのリモコンが見つからなかったり、2階の電気を消し忘れたりすることもあります。そんな場合も「行ってきます」のひと言で、家中のシャッターが閉まり、エアコンと室内用の電源が切れます。音声による操作が可能なので、誰でも簡単に操作することができます。
また、パッケージの「ご家族みまもり」パックを使用すれば、カメラで家の様子をモニタ、子どもが帰ってきたら動画を撮って働いているお母さんのスマホへメールを送るといった見守りが可能です。さらに、不審者が敷地内に入ってきた時の検知も可能です。
温湿度センサーによって自動でエアコンの操作もできます。気温が28度以上になったらエアコンのスイッチが自動的に入るよう設定をしておけば、熱中症対策になります。小さなお子さんや年配の方と暮らしている家庭は、こうした機能があると安心です。
AI搭載の自走式盆栽「BonsAI」/TDK
TDKは盆栽にAIを搭載した自走式盆栽「BonsAI」を出品。これは自社技術と自然を掛け合わせたもの。「BonsAI」には「水やりモード」「会話機能」、そして「日当たりモード」といった3つの機能を搭載。
「水やりモード」はセンサーによって土の乾き具合を感知。乾くと「水が足りないよ」と人に向かっておねだりをしたり、地面をちょろちょろと動き回ったりします。
「会話機能」では世界中の偉人が残した名言からアドバイスをくれ、“悩み相談”にも応じてくれます。太陽の光を浴びるとショートセンサーで明るい場所を求め、自ら日光浴をします(会場が屋内だったため、このデモはできませんでした)。
人と盆栽のコミュニケーションを可能にする「BonsAI」、商品化は未定とのことでしたがぜひとも商品化を実現してほしいですね。
モバイル型ロボット『RoBoHoN』の英語学習の活用/シャープ
シャープは自社が開発した携帯型ロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」を活用する英語教室の本格導入を目指しています。個人向けのコミュニケーションロボットとして使われることが多い「ロボホン」ですが、応用で英語学習やプログラミングとして使えないかという、新たな試みがこちら。「ロボホン」に搭載されている音声認識・発話機能を活かし、英会話を学びます。子どもたちが英語で話しかけると、「ロボホン」がそれに応答してくれます。
ただ、ネイティブに近い発音で話さないと答えてくれません。そのため、子どもたちはネイティブの発音を意識しながら話しかけるようになります。「ロボホン」が、どう認識しているかは背中の画面で確認できるので、それで正確な発音に近づけられよう修正できます。ゆくゆくは自宅学習での活用も考えているそうです。
ミラーディスプレイの進化版
魔法の鏡(スマートミラーディスプレイ)/スタンレー電気
スタンレー電気は、鏡とディスプレイの両立を実現したミラーディスプレイ「魔法の鏡(スマートミラーディスプレイ)」をデモ展示。従来方式はモニターの前にハーフミラーが置いてあるので、映り込みが大きく見にくいという弱点がありました。
そこで、部分的に透明状態と鏡状態の切り替えができるミラーLCDを採用することで周囲環境に影響を受けない見やすいミラーディスプレイを実現。ローカルディミング(バックライト分割駆動)により部分的なモニター状態でも、鏡状態でも高い表示品位の両立が可能になりました。必要な時に鏡とディスプレイをスイッチングできる世界最大級のサイズです。鏡とモニターの大きな違いは立体的に見えるどうか。鏡だと、例えば鼻のてっぺんから頬にかけて奥行きを感じられますが、モニターだとそれがありません。ミラーとモニターを切り替えるニーズは、このあたりにあると考えているそうです。
スマートフォンで口臭リスクを見える化/LION
LIONは口臭リスクを見える化するスマートフォンアプリ「PePERO」をお披露目。舌の画像を撮影するとAIで解析して口臭レベルを判定し、結果に応じてさまざまな口腔ケアをアドバイスしてくれます。
口の中は自分自身のことなのに、分からないまま、何もしないという人が多いのが現状です。そこでAIを使って「見える化」することで、多くのことが明確になります。
LIONが行った口臭に関する調査の結果では「相手の口臭が気になっても指摘しにくい」という意見が多くみられました。特に接客業のような現場では口臭によって営業機会の損失や顧客離反リスクにつながる可能性があります。口臭に対するエチケットやマナーの意識を高め、接客現場のおもてなしの質の向上や会社のより円滑なコミュニケーションができるようなサービスを目指し、2019年内の提供に向けて開発中です。
ロボットによるコミュニケーションで暮らしを豊かに
「minimaru(ミニマル)」が「aibo(アイボ)」と“会話”して掃除
日立はロボット掃除機「minimaru(ミニマル)」が「aibo(アイボ)」(ソニー)と“会話”して掃除をするデモ展示を公開。人が「アイボ、ミニマルで掃除をして」と話しかけるとアイボがミニマルを探します。ミニマルを見つけアイボが「ワンワン」と鳴くと、ミニマルがそれに応えて掃除を始めてくれます。アイボとミニマルが仲良くじゃれ合いながら掃除をする光景は、とてもかわいらしい。アイボの人に近づき寄り添うといった「感性的な価値」と、ミニマル家の隅々までしっかりと掃除をする「機能的な価値」を掛け合わせることで新たな価値を創出。用途の異なるロボット同士が会話する、コミュニケーションを図ることで、新たな可能性が広がります。このデモはそうした期待感を高めてくれました。
快適な住まいの定義を劇的に変化させるAIスマートホーム「CASPAR」/エコライフエンジニアリング
エコライフエンジニアリングはBrain of T社が開発したAIホームシステム「CASPAR」を出展。「CASPAR」は住んでいる人の生活習慣をAIによって理解し、居住者の快適な生活環境を共につくることができるプラットホームです。
スマートスピーカーは音声を認識し、指示に従って行動しますが、「CASPAR」は居住者の行動や好みに合わせて、自ら判断して行動します。「CASPAR」はIoTをそれぞれの機器からではなく、OS側から考えるのです。 生活習慣を学習して行動を予測し、自動で家電などをコントロールします。もし居住者がデータの修正を行なったら(たとえば空調の温度設定の変更や照明の色の変更など)、その修正結果のデータを蓄積し、今後の判断のために学習していきます。居住者が判断しなくとも、「CASPAR」自ら行動することで負担を大幅に軽減。より快適な生活を送ることができます。
空気・空調の未来像とは?
さまざまなシーンで「人を支える空気」/ダイキン
心地よい眠りと目覚めをサポート「Sheep Sleep」
「空気で答えを出す会社」とのスローガンを掲げるダイキンは、未来の空調として「人を支える空気」を展示。「Sheep Sleep」は一人ひとりに合わせた心地よい眠りと目覚めを温度、湿度、気流、光などの刺激によってサポートします。
センサーで人の動き、心拍数、湿度体温などを検知。人がベッド上に横になると、それを感知して室内の照明の照度を下げていきます。さらにその照明から空気砲をトントンと身体に向けて放出して、ゆりかご効果で入眠を促します。目覚めの時には照明が徐々に明るくなり、空気砲はポンポンと強めに当てて、人に叩かれているような感覚で起こしてくれます。
生活シーンに合わせた理想の空気質を創り出す「Beside」システム
その場の空気質を診断するセンサーで、部屋の状態を正確に診断する「Beside」システム。空調機器に適切な指令を出すことで温度、湿度、気流、清浄のほかCO2濃度までコントロールします。
たとえば、寝室で複数の人が寝ているとCO2濃度が上がります。そこに新鮮な風を送り込むことで室内のCO2濃度を正常値まで下げるのです。ただ単純に空気をそのまま取り入れてしまうと、花粉やPM2.5なども混合されてしまいます。そこで空気清浄機で使われている高性能のフィルターを用いて、キレイな空気だけに設定。花粉症の人が「Beside」システムを寝室で使用すれば、不快な思いから解放されるかもしれません。
食事を美味しくする空気
環境温度の変化によるワインの味の違いを体験
「食事を美味しくする空気の研究」のコーナーでは、環境温度の変化による赤ワインの味の違いを実際に体験しました。たとえば、暑い日に飲むビールのノド越しの爽快感やお吸い物の蓋を開ける時にフワッと広がる芳醇な香りなど、格別においしく感じるものがある一方、提供されて時間が経過したお刺身は乾燥して味が落ちているなぁと感じることがあると思います。
ダイキンでは、そうした料理の味は環境、特に温度と湿度によって大きく変化すると推定。最適な環境空間を提供することで、美味しい料理の状態を長く楽しめる状況・空間を作れないかと考えているそうです。温度と湿度が違うだけで、それほど味が変わるものなのでしょうか。ブース内と外で、同じセラーで同じように保管していた同種類の赤ワインの飲み比べを体験しました。
驚くことに、ハッキリと分かるほど味が違います。「赤ワインは常温で」といわれますが、そもそもフランスと日本では気候が異なるため、日本でも同様のことがいえるとは限らないわけです。ヨーロッパの常温は約18℃くらいですが、赤ワインをあまり冷やしすぎるとタンニンによる渋みが強く出てしまいます。渋みがまろやかになる16~18℃ぐらいの環境温度が、赤ワインのおいしさを堪能するのに適しているようです。
もちろん味の好みは個人によって異なりますが、環境温度の違いによって味の違いが生じます。AIの技術を用いて、食事のスタートから終わりまで料理に合わせた最適な温湿度制御のサービス配信を目指し、研究していくとのことです。
これらは遠い未来の家電だと思っていたものが、今や実現に近づいています。IoTの進化により、生活がどんどん便利になっていくことは間違いありません。IoTによって未来の生活はどのようなものになっていくのでしょうか。進化するIoTの今後の動向に、これからも目が離せません!
(最終更新日:2019.10.05)