住むマンションを検討する際は、部屋の内部だけでなく、マンション自体の設備や周辺環境も重要です。
チェックすべきポイントはいくつもありますが、なかでも忘れてならないもののひとつに公開空地の存在があげられます。しかし、そもそも公開空地自体を知らないという人もいるでしょう。
そこで、マンション購入時の参考になるように、公開空地とは何なのか、そのメリット・デメリットについて解説します。
公開空地って何?
公開空地についてまず知ってほしいのが、その読み方です。「こうかいくうち」と読みます。「こうかいあきち」ではありません。大規模マンションを建設した際、地域住民に公園として公開された場所のことを公開空地といいます。
正確には公園だけでなく、遊歩道なども地域住民に開放されていれば公開空地となります。ただし、その場所はあくまでもマンションの所有物であり、私有地です。そのため、犬の散歩禁止や自転車の乗り入れ禁止などのルールは、マンション側で自由に決めることができます。
そもそも、なぜマンション所有者が地域住民に自分たちの私有地を開放するかというと、1971年に創設された「総合設計制度」に基づき、大規模開発における特例を受けられるからです。具体的には、建築基準法で定められたマンションの容積率を上限よりも割り増しにしてもらえたり、高さ制限や斜線制限を緩和してもらえたりできます。つまり、マンションの戸数を増やしてより多くの利益が期待できるようになるため、公開空地を積極的に設けているというわけです。
提供公園と公開空地の違い
公開空地と似たものに提供公園があります。敷地の一部が公園として地域住民に開放される点は公開空地と同じです。ただ、大きく異なるのは、その所有権がマンションではなく、自治体にある点です。つまり、マンションを建設中に私有地だった公園を自治体に無償で譲渡したものが提供公園なのです。
マンション所有者にとっては丸損のようにも思えますが、公開空地と同様にマンション建設に関する制限を緩和してもらえるメリットがあります。ほかにも、提供した土地に関しては固定資産税などの支払いがなくなる点もメリットです。どうせ公共の場として利用するのなら、税金の負担が少ないほうが得だというわけです。
また、公開空地の場合はマンション所有者が加入している管理組合が管理を行いますが、提供公園の場合は譲り受けた自治体が管理を行うことになります。そのため、公園の利用方法などをマンション所有者や管理組合が決めることはできません。あくまでも自治体が定めた利用基準に基づいて、提供公園は管理されることになるのです。
公開空地のあるマンションに住むメリット
住民たちの憩いの場として、また子どもたちの遊びの場として公園は欠かせない存在です。しかし、通常のマンションの場合、必ずしも近くに公園があるとは限りません。公園が遠いと、毎日子どもを連れて通うのは大変です。その点、公開空地のあるマンションならいつでもすぐに公園に行くことができます。しかも、マンション施設の一部なので誰にも気兼ねなく利用できる点がうれしいところです。そのうえ、マンションの住民同士はもちろんのこと、外部からの出入りも自由であるため、マンション以外の近隣住人とも交流することも可能です。
一方、マンションによっては公開空地ではなく、マンション住人しか使えない専用公園を設けているケースもあります。ただ、そういったタイプの公園はマンション側と近隣住人との間であつれきが生まれるおそれがあるのも事実です。というのも、公園というのは公共の施設というイメージが強いため、マンション住人だけが利用可能という状況は多くの人にとって不愉快に感じてしまうからです。その点、公開空地なら近隣住民から煙たく見られるおそれは低くなります。これも、公開空地のあるマンションを選ぶメリットのひとつといえるでしょう。
公開空地のあるマンションに住むデメリット
マンションの敷地内に公開空地が設けられていれば、そのエリアに関しては基本的に誰でも自由に出入りができるようになります。公園を利用するのはもちろんのこと、その敷地内を横切って近道をしても特に問題はないわけです。そうなると、公開空地には外部の人が多数入ってくることになります。見知らぬ人が増えれば、当然プライバシーやセキュリティー面での不安が出てくるおそれがあります。特に、さまざまな人がいる都会では、敷地の一部を開放したためにマンション内の治安が悪化するといったことにもなりかねないのです。
そのため、公開空地のあるマンションの購入を検討する場合は、周辺エリアがどのような治安状況であるかをしっかり見極めなければなりません。もし周辺の治安があまり良くないようであれば、公開空地が設置されることでマンションの環境にも悪影響を与えるおそれがあるので注意が必要です。
公開空地のあるマンションにする注意点
公開空地のあるマンション購入を検討する際は、その公開空地が実際にどのような状態になっているのかを確認することが重要です。というのも、公開空地だからといって必ずしもオープンな状態になっているとは限らないからです。
なかにはアプローチが閉鎖的だったり、オープンスペースとしての役割を果たしていなかったりする場合もあります。たとえば、特に公園などがあるわけでもなく、その他の環境整備もされていないので入ってくる人もいないといったケースです。極端な場合には、立ち入り禁止の看板を掲げて関係者以外の出入りを禁じているところもあるほどです。
仮に公開空地のメリットを期待してマンションを選んだとしても、そのような物件では想像していたような効果は得られないでしょう。そのため、公開空地はただあればよいというものではない点はしっかりと理解しておく必要があります。
公開空地のあるマンションで住むのに向いている人
なるべく多くの人と分け隔てなく交流したい、コミュニケーションを広げていきたいと考えている人なら、公開空地のあるマンションはおすすめです。特に、そのスペースを催し物の会場や防災訓練の場などに積極的に活用しているところであれば、有意義な交流を図ることができるでしょう。
ただ、いくら人との交流に積極的でも所有意識が強い人には公開空地のあるマンションは向いていないかもしれません。勝手にマンションの敷地内に入ってくる人たちを見て自分の所有エリアを踏み荒らされているような気分になってしまうからです。そのため、もし公開空地のあるマンションを検討するなら、自分が所有意識の強い人間かどうかをよく考えてみる必要があります。
公開空地のないマンションでもいい?
確かに、近隣住民との交流という意味では公開空地のあるマンションは魅力的な物件ではあります。ただ、そういった魅力はプライバシーやセキュリティを犠牲にしてでも得なければならないものではないはずです。
もし、それらに対して不安を覚えるようであれば、無理に公開空地のあるマンションを選択する必要はありません。重要なのは公開空地かどうかではなく、公園などの設備が充実しているかどうかです。
たとえば、近くに環境のよい公園がある物件を見つければ、デメリットに不安を感じることなく公開空地のあるマンションと同様のメリットを得られることになります。交流の場がほしいと考えている人は公開空地だけにこだわるのではなく、そういった代案についても検討してみることが大切です。
マンションを買うなら要確認!
マンション物件において公開空地はメリットにもデメリットにもなりうる存在です。そのため、マンションを購入するのであれば、購入予定の物件に公開空地のスペースがあるのかどうかを確認しておくことが大切です。そのうえで、購入してから後悔することがないように、自分や家族にとって本当に必要なものなのかをよく検討しておきましょう。
(最終更新日:2019.10.05)