東京都内でありながら自然が豊かで、ゆったりとした時間が流れる「青梅」。昭和初期の風情を残すレトロな街並みで知られ、街のあちこちに地元の映画看板師による手描きの映画看板が掲げられています。また、「青梅マラソン」や「だるま市」といったイベントも盛況で、開催時には多くの人が訪れることで知られています。
そんな青梅で数年前から暮らしているHさんにお話を伺いながら、「将来性」「交通の利便性」「教育・文化環境」「住環境」「コストパフォーマンス」5つの基準で、街の特徴をご紹介します。
青梅ってどんな街?
市民・企業・行政が一体となって街づくりに取り組み、面白くなってきている街
かつては青梅街道の宿場町として栄えた、青梅の中心市街地。20年ほど前からは「昭和レトロな街」として知られるようになりましたが、郊外型のショッピングセンターなどに人が流れ、商店街は次第に空き店舗が増えていきました。
そんな状況を改善すべく、青梅市では、地元の市民・企業・行政が一体となって中心市街地活性化に取り組み始めています。駅から徒歩5分の住江町駐車場では、地元の有機野菜や地元食材のおいしいものが手に入る「おうめマルシェ」を毎月開催。古くなった商店街の空き店舗に新規開業者を募集する「アキテンポ不動産」などの取り組みによって、街中にクラフトビール食堂やロードバイクステーション、家具・雑貨といったクラフト作家の工房などが集まり、活気を取り戻しつつあります。
[街の声]
「まちつくり青梅」という会社が、行政や商工会議所、商店街や地元企業の出資を受けてさまざまな事業を企画。地域の方々と連携し、新しい動きを仕掛けています。5年ほど前から、青梅駅周辺が面白くなってきた印象です。(青梅在住・Hさん)
【将来性】古い街並みや建物保存が進む一方、青梅駅前では再開発計画も進行中
青梅市には、明治創業の鰻割烹『寿々喜家』や昭和初期の玩具店を改修したゲストハウスカフェ『青龍kibako』、昭和中期の織物倉庫を改修したオーガニックレストラン『繭蔵』など、歴史的建造物が数多く残り、今なお現役で活用されています。
古き良き街並みや建物が残されている一方で、青梅駅前では再開発に向けた施設整備も進行中です。また、市街地では市民会館の跡地に「新生涯学習施設」を建設中。2019年春には、小型ホールと音楽練習室や会議室を備えたコミュニティ施設が竣工予定です。フランス人女性写真家シャンタル・ストマン氏による、青梅の映画看板をテーマにしたドキュメンタリー映画『OMECITTA』がこけら落としで上映される予定もあるそうです。
[街の声]
青梅駅前の再開発は、都心のようにビルやタワーマンションを建てるのではなく、青梅にふさわしい、身の丈に合った開発を目標に事業検討を進めているとのこと。元々、青梅はアーティストやクリエーターの移住が多い街なのですが、そういった個性的な人たちが今まで以上に集まり、街を盛り上げてくれるような街になることを期待しています。(青梅在住・Hさん)
【交通の利便性】都心まで1時間少々。始発電車で通勤時間も楽しめる!?
都心から西へ50キロほど離れた、ベットタウンとして機能する青梅市内には、JR青梅線の10駅が存在します。青梅駅から立川駅まで約30分、新宿駅までは1時間15分程度。東京駅までは約1時間半程度でアクセスでき、23区内に無理なく通勤・通学できる環境です。青梅駅や河辺駅を始発とする電車も多いため、ゆっくりと座って通勤できることも魅力でしょう。
また、青梅駅や河辺駅からは、郊外へ延びるバス路線も充実していますし、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)をはじめ道路網も発達しています。北関東・東北、神奈川・東海方面のどこへ行くにもアクセスが良く、週末のドライブや遠出もしやすい環境とあって、自動車保有率の高いエリア。駅近の物件であれば自動車がなくても生活できますが、大型商業施設などを利用したいのであれば、自動車があった方が便利です。
[街の声]
JR青梅特快は青梅駅が始発のため、混雑時以外は座って都心まで移動できます。朝晩の通勤ラッシュには青梅ライナーが走り、有料ではありますが指定席での通勤も可能。都心で用事を済ませた帰りに指定席をとり、新宿駅構内でお酒とおつまみを買って乗り込むのがちょっとした楽しみです。終電が遅くまであることも嬉しいポイント。終電間近の時間帯は、中央線からの直通運転がないため立川などで乗り換えが必要ですが、0時近くに新宿駅を出ても間に合います。
青梅駅から西のエリアは運行本数が少なく無人駅が多いのですが、時々イノシシや鹿がぶつかって電車が停まってしまうことがあるのはご愛敬。また、大雪の日は帰宅が困難になるため、不可抗力だと割り切って家で待機することをお勧めします。(青梅在住・Hさん)
【教育・文化環境】私立の保育園が30カ所あり、全入に近い入りやすさ!
青梅市の待機児童数は、2017年度のデータで12人。保育園の稼働率が高く、待機児童はほとんどいない状況です。毎週月曜日に昼市を開催している幼稚園や室内温水プールを備えた幼稚園、お寺にゆかりのあり広大な園庭で「庭育」を行う保育園、敷地内で野菜の収穫や泥遊び、動物とのふれあいも体験できる保育園など個性豊かな園が多く、子育ての方針に合わせた環境を選ぶことができます。
人気のある保育園は多少競争率が高いものの、場所にこだわらず、募集時期をチェックしていればスムーズに入園できそうです。ただし、保育園も幼稚園も延長保育の終了時間が少し早めなため、都心で働いて帰宅が毎日遅くなる共働き世帯には少し不便かもしれません。延長保育の状況は早めに確認しましょう。
[街の声]
結婚を機に、実家がある青梅に戻って家庭を構える方が多い印象です。引っ越して来た知り合いのママさんたちは揃って「青梅は子育てしやすい!」と話していますね。子育て環境だけでなく、育児に悩むパパ・ママのケアに取り組む保育園もあります。また、バイタリティに溢れたママが多いことも特徴。かつてバリバリ働いていたママさんたちが起業してチームを作り、ママ向けイベントを行ったり、地域のお店の協力を得て子供が仮装して街を闊歩する体験型ハロウィンイベントを立ち上げたりと、活発に活動しています。そうしたママさんを「支えたい」と思う人が多いことも、青梅の特徴かもしれませんね。(青梅在住・Hさん)
【住環境】駅近のスーパーが便利な河辺・東青梅と、商店街が魅力の青梅
河辺駅北口近くには、22時まで営業の『河辺とうきゅう(東急ストア)』と24時間営業の『西友河辺店』があり、仕事帰りの買い物にも便利。同じく24時間営業の『ビッグ・エー青梅河辺町店』や、全国の契約農家から直送される野菜や果物が買える『POD-KIVA青梅店』。『スーパーオザム河辺店』も徒歩圏内と非常に充実しています。
隣の東青梅駅前には『マルフジ東青梅店』があり、深夜0時まで営業。コンパクトな店内に青果・惣菜・加工食品など一通りの食品が並んでいます。1キロほど離れた千ヶ瀬バイパス近くには、商業施設『PLAZA5』も。ドラッグストアやスーパー、書店などが揃っており、青梅駅などから無料送迎バスでアクセスが可能です。
青梅駅前は一転、昔ながらの商店街があり、数々の名店と出会うことができます。野菜だけでなく季節の高級果物も取り揃える『やおうめ』や、精肉の他コロッケやサラダなどの惣菜も人気がある『一松肉店』、大正元年創業の老舗で地元のおでん屋さんの仕入れ先としても有名な『伊勢屋豆腐店(いせしん)』、画材やレトロ文具が充実する『みどりや文具』、料亭や生け花の先生たちに根強い人気の『丸梅花店』、日用金物を取り扱う『大野金物店』、陶器の目利きである店主が営む老舗陶器店『陶舗さの』など、買い物が楽しくなりそうな店ばかりです。
[街の声]
河辺駅近くの『河辺とうきゅう』は地元の日本酒・澤ノ井やご当地グルメ「御嶽汁」といった地域産品のフェアもよく開催しています。テナントも充実しているので便利ですね。『西友河辺店』も食品フロアが24時間営業で重宝しています。オーガニックスーパーの草分けと言われる『POD-KIVA青梅店』は、調味料や加工食品、自然素材の日用品が充実しています。『エムアイプラザ河辺店』は、三越伊勢丹ホールディングスの新業態店舗1号店。コンビニ以上百貨店未満がコンセプトで、地元の良いものや贈答品、プライベートブランドのシューズや衣料品も買えて便利です。隣の東青梅駅近くで愛用しているのは『三昭堂薬店』。調子が悪くなると、漢方薬の処方をしてもらいに行きます。(青梅在住・Hさん)
多摩川の地形を活かした公園から鉄道公園まで、特色のある公園が人気
青梅駅から徒歩15分ほどの距離にある『釜の淵公園』は大きく蛇行した多摩川の地形をそのまま活かしてつくられた公園。2本の吊橋から眺望を楽しめる他、芝生広場や雑木林、重要文化財指定の『旧宮崎家住宅』、『青梅郷土博物館』も見どころです。
河辺駅と小作駅の中間辺りに位置する『わかぐさ公園』は、広い芝生広場や小さなお子様が遊べる遊具が充実。こどもプールがあることも人気の理由です。
永山公園の一角に開園した『青梅鉄道公園』には、明治や大正の時代に活躍した蒸気機関車の車両が多数展示されています。実物に見て、触れて、ミニSL列車に乗車することもできるとあって、休日は多くの家族連れが訪れています。
[街の声]
イチオシは、多摩川沿いの『釜の淵公園』。森林散策をしたり、季節の植物に触れたり、河川敷で川遊びやバーベキューもできます。『わかぐさ公園』も人気で、青梅のみならず周辺エリアからも親子連れで遊びに来る姿をよく見かけます。古いSLや初期に使用された新幹線の車体が屋外に展示されている『青梅鉄道公園』も人気ですね。(青梅在住・Hさん)
総合病院を中心として医療機関が充実。安心して暮らせる環境
青梅市は、1,000人あたりの病床数が34床(※参考:東京の千人当たり病床数ランキング)。東京都の平均が10床、全国平均が12床であることを考えると、医療機関は非常に多いと言えそうです。河辺駅近くの『青梅市立総合病院』をはじめ、首都圏中央連絡自動車道沿いの『高木病院』や釜の淵公園近くの『青梅三慶病院』など総合病院が充実しており、『高木病院』は小作駅からシャトルバスが出ているため、自動車がなくても通院が可能です。
また、各種クリニックも点在しているため、用途に応じて通院先を選ぶことが出来そうです。
[街の声]
『青梅市立総合病院』は、各種設備が揃うオールマイティな病院。西多摩エリアや山梨、埼玉からの通院者もいるそうです。夜間・緊急外来もあり、若手医師が親身に対応してくれます。一通りの検査などにも対応してくれるので安心ですね。その他にも青梅市内には、地元で厚い信頼を得ている婦人科専門病院や整形外科などがあり、医療面は充実していると思います。40歳になると、青梅市民であれば無料で健康診断や乳がん検診を受診できることも有難いですね。(青梅在住・Hさん)
河辺駅周辺に飲食店が集中。郊外には職人の技が光る和菓子店が点在
河辺駅周辺には、ラーメンや定食、洋食、フレンチ、インドカレー、スイーツなど様々なジャンルの飲食店が揃っています。居酒屋やファミリーレストランなどチェーン店も一通りあり、飲食には困らないでしょう。
奥多摩方面へ近づくにつれて飲食店の数は少なくなりますが、茅葺屋根の古民家で手打ち蕎麦を楽しめる『玉川屋』や多摩川を眼下に豆腐懐石と日本酒を味わえる『澤乃井ままごと屋』など、趣のある店との出会いもあります。自然に囲まれ食材が豊富な環境にあり、奥多摩の湧水を仕込み水とした日本酒や豆腐は名産品として知られていますし、梅菓子やへそまんじゅうといった和菓子も人気があります。
[街の声]
河辺駅の周辺には洋菓子店やパン屋、飲食店も多くありますが、買い物帰りに食べたいのが何といってもクレープ。駅前の『EOLE』、線路脇の『CREPE COROMO』、どちらも食感が異なりおいしいです。東青梅のパン屋『火打ち屋本店』は、昔ながらのコッペパンや絶品ベーグルがお気に入り。上質な材料を使っていると感じる味です。『グート』のパンプディングや食パンも隠れた人気。『エスポア宏川屋』では国産ワインや手頃なオーガニックワイン、澤ノ井の季節限定酒を購入。お得意様割引もあります。『あさや豆腐店』の野菜が入った肉厚のがんも、原液の豆乳ボトル詰めも堪りませんね。
また、和菓子の名店がたくさんあります。職人の技が光る昔ながらの小さな和菓子店が多いのも青梅の特徴。日向和田の『は万の』では夏限定の水まんじゅう「たま川」がお勧め。同じエリアには、梅酒を配合したかすてらや青梅ソフトクリームが地元で人気の『紅梅苑』もあります。今井の『久保田商店』は酒まんじゅうの専門店。少し温めると香ばしく、より美味しく食べられます。千ヶ瀬町にある『御菓子司あら井』の青梅煎餅は、昔ながらの懐かしいおやつ。バニラアイスにトッピングすると、よく合います。(青梅在住・Hさん)
【コストパフォーマンス】利便性なら河辺駅、コスパなら東青梅や青梅駅か
河辺駅の土地価格は、17万1,615円/平米(56万7,323円/坪)。3年前は17万3,700円/平米(坪単価57万4,214円/坪)と若干下がっていますが、ほぼ横ばいといったところ。
これは、拝島駅の土地価格17万833円/平米(56万4,738円/坪)と同程度。商業施設が充実した駅前の環境が評価されていると言えそうです。
隣の東青梅駅の土地価格は、9万8,544円/平米(32万5,766円/坪)、もう一駅先の青梅駅は9万4,168円/平米(31万1,301円/坪)と、だいぶリーズナブルに。予算と住環境を考えながらエリアを決めると良いでしょう。
【「青梅」近辺の土地価格、坪単価比較】
土地価格 | 坪単価 | |
小作駅 | 14万9,057円/平米 | 49万2,750円/坪 |
河辺駅 | 17万1,615円/平米 | 56万7,323円/坪 |
東青梅駅 | 9万8,544円/平米 | 32万5,766円/坪 |
青梅駅 | 9万4,168円/平米 | 31万1,301円/坪 |
宮ノ平駅 | 7万2,075円/平米 | 23万8,264円/坪 |
[街の声]
住宅を購入してすぐに価値が上がるようなエリアではありませんが、腰を据えて暮らしながら色々な活動に取り組みたい方には、心からお勧めできる街です。マンション・アパート・一軒家などの住宅タイプだけでなく、「多摩川に近い」「酒蔵に近い」「古い町並みの中にある」といったロケーションで決めても楽しいかもしれません。都心に比べて面積が広い物件が多く、隣家との間がかなり離れているため、周囲の視線を気にせず暮らせます。一度青梅での暮らしを体験したら、23区の物件には戻れないかも!? 雰囲気の良い古民家も多く、探している方が非常に多いです。手つかずの古民家をリノベーションして暮らしやすくするのは決して簡単ではありませんが、たまに掘り出し物件が出ることもあります。大手の総合住宅検索サイトよりも、地元の不動産会社のサイトをこまめにチェックする方が、お宝物件が見つかりやすいと思います。是非、根気よく探して、青梅ライフを満喫して欲しいですね。(青梅在住・Hさん)
昭和の面影を残しながら、市街地の活性化に尽力。活気を取り戻しつつある街
最後に、青梅で暮らすHさんに街の魅力を聞いてみました。
[街の声]
商店街のあるエリアは昭和初期の風情を残すレトロな街並みが広がり、映画看板があちこちに飾られているので歩くだけで楽しいです。青果・精肉・生花の老舗や歴史的建造物、青梅の地酒・澤乃井が飲める古き良き居酒屋も現役。飲食店で飲めば、キャラクターが濃い人と出会うことが多く、そんな地元民の人柄も含めて面白い街だと感じています。
また、青梅大祭をはじめとするお祭りなどイベントが数多く催されていること、市街地から徒歩10分も歩けば、自然豊かな永山丘陵や多摩川に行けることも魅力のひとつではないでしょうか。
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(最終更新日:2019.10.05)