2008年からスタートしたふるさと納税制度は、各自治体による返礼品の充実と、税金控除の上限額引き上げ、手続きの簡略化によって利用者が急増。あまりの過熱ぶりに、総務省から豪華な返礼品を見直すよう通達が出されるなど、様々な話題で注目を集め続けています。2018年現在、ふるさと納税はどのような状況になっているのかをまとめました。
2017年はふるさと納税の返礼品競争が加熱
まずは、2017年のふるさと納税を振り返りましょう。自分が選んだ自治体に寄付を行える「ふるさと納税」は、返礼品として実質2,000円の負担で地域の特産品ももらえるとあって人気を博しました。都心と地方の税収の格差是正を目的とした制度ですが、返礼品競争が過熱し、寄付金額とほぼ同額の高額な返礼品や、ブランド品や金券といった「地域の特産品」とは呼べないような返礼品を用意する自治体も。ネットオークションで転売する人なども出たことから、総務省は2017年4月、各自治体の自粛要請の通知を実施。ふるさと納税の返礼品は寄付金額の3割以下にすること、家電や金券といった換金性が高い返礼品は自粛することを求めました。
しかし、町内の各旅館・ホテル、飲食店などで利用できる金券「くさつ温泉感謝券」を返礼品としている群馬県草津町など複数の自治体が「返礼品の送付が地方創生に役立っている。法令上もモラル上も問題はない」と反発。その結果、総務省側が態度を軟化し、押さえ込みはやや緩和されました。
2018年7月に総務省が発表したふるさと納税の実績を見ると、自粛要請があったにもかかわらず、ふるさと納税の利用者も、総額も増加しています。
2018年のふるさと納税事情はどうなっているの?
2018年に入っても、総務省VS自治体の攻防は続いています。4月には、ふるさと納税の返礼品競争に歯止めをかけるため、総務省が「返礼品を原則として地場産品とすること」を求める通知を都道府県に出しました。ただし、この通知に法的拘束力はなく、あくまで自粛要請です。最終的な判断は自治体に委ねられるため、結果としては通知に従わなかった自治体に寄付が集中する事態が発生しています。
そのため、7月には返礼割合が3割を超えている、地場産品ではない返礼品を送付している、8月までに返礼品を見直す意向がないという条件に当てはまった、ふるさと納税の「反抗自治体」を公表。大阪府泉佐野市や佐賀県みやき町をはじめとする12の自治体名を公表しました。
今のところ、コスパ抜群のお得な返礼品は健在!
公表された12の自治体の中でも、大阪府泉佐野市の受け入れ額は抜きんでており、実に135億円。人気の秘密は、全国各地の名産品や缶ビール、格安航空会社で使えるポイントといった豊富なラインナップにあります。地元の野菜や泉州タオルなどもありますが、1,000種類近い返礼品の中には、同市にはゆかりがないものも少なくありません。また、金券に近い感覚で利用できる格安航空会社のポイントは返礼率50%、A5ランク黒毛和牛は何と返礼率100%以上、ビールや発泡酒も返礼率5割を超えていますが、2018年8月時点で自粛の動きはありません。
同じく「反抗自治体」に挙げられた佐賀県みやき町や、静岡県小山町では、大手旅行会社の旅行券を50%還元で用意。いずれも現時点で取り扱いを続けています。いつ、どの自治体が見直しを表明するか分からない状況は依然として続いていますが、今のところはコストパフォーマンスに優れた返礼品が揃っていると言えるでしょう。
寄付金の使い道にフォーカスしたふるさと納税が増えている
総務省は、ふるさと納税をどのように活用して欲しいと考えているのでしょうか? ふるさと納税の使い道や成果を明確にする取組みや、ふるさと納税者との継続的な繋がりを持つ取組みを全国に広げることを推奨している総務省は3月、内閣府と連携して「ふるさと納税活用事例集」を作成。各自治体の好事例を取りまとめています。
総務省は、クラウドファンディング型のふるさと納税を推奨
総務省は、ガバメントクラウドファンディング(GCF、Government Crowd Funding)を推奨しています。これは、クラウドファンディング型のふるさと納税で、財源不足に悩む地方自治体のプロジェクトに寄付をすることで協力する仕組み。通常のふるさと納税と同様に、寄付金が税金の控除対象となります。資金の用途が明確で透明性が高く、安心して利用できます。博物館の再生や医療施設の建設、イベントの実施など、用途は様々。プロジェクトを成功に導くサポートができるとあって注目を集めています。
また、4月にスタートした「ふるさと起業家支援プロジェクト」の活用も推進。ふるさと納税を活用して地域の起業家を応援することもできます。
ふるさと納税の寄附金で映画を製作する自治体も登場!
佐賀県唐津市では、同市を舞台とした映画「花筐」を昨年公開。大林宣彦監督が余命宣告を受けながら撮影したことで話題となりましたが、ふるさと納税制度を活用して製作費を募りました。大阪府茨木市では、茨木が生んだノーベル文学賞作家・川端康成の傑作を原案とした群像コメディ映画「葬式の名人」を製作。来年の公開を目指しています。いずれも、納税額に応じて本編エンドロールに氏名を表記するなどの返礼があるとのこと。相応の納税額を求められるものの、映画好きには堪らない特典かもしれません。
このように、返礼品を選ぶだけでなく、使い道から選ぶスタイルも浸透しつつある、2018年の「ふるさと納税」。あなたは、どのように活用しますか?
(最終更新日:2019.10.05)