ここ数年、マンション価格が高騰を続けています。その一方で、一戸建ての価格は上昇幅が少ないため、マンションよりも一戸建て住宅の方が割安という現象が起きています。「都内で一軒家なんて手が出ない」と諦めていたものの、いざ家探しをしてみたら「マンションよりも一戸建ての方が安かった」なんて事態も。一戸建ての購入事情を探りました。
マンションの価格が高騰する一方で、一戸建ての価格は安定している
(株)東京カンテイ「一戸建て住宅データ白書2017」によると、首都圏の新築一戸建ての一戸当たりの平均価格は3,999万円。対するマンションは5,544万円で、一戸建ての割安感が際立っています。昨年の平均価格と比較して一戸建てが1.3%増なのに加え、マンションは9%増であることからも、マンションの価格高騰に対し、一戸建ての価格に大きな変動がないことが伺えます。
何で、マンションの価格が高騰しているの?
なぜ、マンションの価格は高騰し続けているのでしょうか? 理由の一つとして「建築費用の高騰」が挙げられます。2011年3月の東日本大震災にともなう復興需要や、2013年9月に決定した東京オリンピックの開催に向けた様々な施設の建設ラッシュとインフラ整備により、建築材料費が高騰。合わせて人材も不足しているため、建築費用が大幅に上がってしまったのです。また、東京オリンピックの開催決定後、「地価の上昇」も顕著に。特に都心部でこの傾向が強く、駅近の利便性が高い土地は目に見えて高騰しています。好立地に建てられることが多いマンションは、投資や節税を目的として購入する人が多いことも、価格の上昇を後押ししています。
ちなみに、建築材料費が上昇しているのは主に、鉄筋コンクリート造の建物です。木造や鉄骨造の一戸建てに関しては、マンションほど建築材料費の影響を受けていないため、安定した価格で推移しています。
マンションから一戸建てに狙いを切り替える人が増えている
前述の通り、マンションを購入する人のうちの一定層は、投資や節税を目的としています。また、転勤の可能性がある方は、将来の賃貸や売却を見据え、マンションを購入した方が借り手や売り手が付きやすい傾向にあります。しかし、定住を考えている人にとって、現在の新築マンションは明らかに割高です。比較すると一戸建てが割安に感じられるため、マンションの購入を予定していた人が一戸建てに切り替える動きが出ています。「庭が欲しい」「ペットが買いたい」「両隣や上下階を気にせず、子どもが思い切り走り回れる家に住みたい」「管理費や修繕積立金が負担」といった想いのある人にとって、現在の価格差は一戸建てに舵を切る大きな決め手になっているようです。
一戸建てかマンションか、最終的にはライフスタイルで選ぶべし!
これから住宅を購入するなら、一戸建てとマンションのどちらを選べばいいのでしょうか? 家族構成やライフスタイルなど、様々な要素を総合的に判断しなければなりません。一般的な一戸建てとマンションの特徴は、以下の通りです。
【一般的な一戸建てとファミリータイプのマンションを比較】
|
一戸建て |
マンション |
立地 |
駅からやや離れた住宅街が中心 |
駅近など好立地の傾向 |
環境の特徴 |
庭付きなら自然とともに暮らせる |
共有スペースを利用できる |
広さ |
90平米以上が主流 |
70平米前後が主流 |
駐車場 |
敷地内に停められる家が多い |
機械式が主流 |
バリアフリー |
体力が衰えると階段の昇降が辛い |
新しい物件はほぼ段差がない傾向 |
プライバシー |
比較的保ちやすい |
騒音に気を遣う必要がある |
生活ルール |
近隣住戸に配慮しルールを順守 |
特に決まりはない |
セキュリティ |
自己防衛が必要 |
防犯カメラ完備など様々な対策 |
維持管理費 |
自分の裁量で決められる |
管理費や修繕積立金が必要 |
増改築・修繕 |
自分のタイミングで自由にできる |
管理規約に従いながら行う |
住み替え |
売却に時間がかかる傾向 |
比較的売却しやすい |
資産価値 |
建物が老朽化しても、土地の価値が残る |
RC造の耐用年数は長いが、築年数の経過に伴い価値が下がる傾向 |
あくまで一般的な特徴のため、駅近で庭や駐車場がない一戸建てもあれば、最寄り駅から離れたマンションもあります。また、管理が行き届いたヴィンテージマンションは築年数が経過しても、資産価値がほとんど下がらないケースもありますので、ケースバイケースで判断する必要があります。
ただ一つ言えることは、一戸建てがマンションよりもずっと高額だった1990年代のように「一戸建ては高いから」と諦める必要はないということです。ライフスタイルに合わせて、「ゆったりと子育てしやすい一戸建ての環境と通勤環境」もしくは「マンションの利便性と価格の妥当性」といった観点で、自身が住まいに何を求めているのか、冷静に考えてみましょう。
(最終更新日:2019.10.05)