歌舞伎が人気漫画「ONE PIECE」とコラボして話題となったニュースは記憶に新しいと思います。伝統芸能だけに限らず、こうした日本の伝統文化とコラボレーションする流れは、幅広いジャンルで行われてきましたが、その波が家電にも到来しました。
奈良県を拠点として「最先端技術と伝統工芸の魅力を引き出すデザインで、これまでにない体験ができる風流な空間をつくる」をコンセプトに掲げる家電ブランドFUMAが「香り導くサーキュレーター」を発売しました。
このサーキュレーター、デザインに独特の雰囲気があります。なんと伝統工芸品である有田焼と南部鉄器とコラボした製品です。なぜ家電と伝統工芸品なのか。その疑問について探ってみたいと思います。
伝統工芸品が抱える問題点
現在、日本の各都道府県で認定されている伝統工芸品数は約1,500品目あるといわれています。しかし、経営難や継承人不足が理由で、継続が厳しいという背景がありました。
「私自身の経験ですが、伝統工芸品の螺鈿(らでん)の細やかな細工を見たとき、その美しさに驚きました。同時に、制作に手間はかかりますが、こんなに美しいものが継承されずになくなるのは残念だと感じ、伝統工芸の良さをもっと身近に伝えられる事業を始めようと考えました」(FUMA企画担当:小田一平さん)
工芸品を家電の一部として採用し、販売することで、それらの問題を解決する手助けができると考えたのです。
空気の攪拌に加えて「香り」も楽しむ
「香り導くサーキュレーター」は、室内の空気を攪拌するという本来の目的に加え、「香り」を楽しむという嗜好が盛り込まれています。本体の土台とサーキュレーターとの間に専用のアロマストーンを配置。香師が特別に配合した、お香の香りが楽しめるアロマオイルを垂らすことで、その香りを風に乗せて運べるという仕組みです。
「有田焼、南部鉄器ともに香炉の素材として使われているものであり、硬く密度の高い素材のため、香りが吸着しにくく、香りを変えやすいという利点があります」(FUMA広報兼商品開発者:小田一平さん)
そういう意味では「現代版の香炉」ともいえる商品ではないでしょうか。
こだわりの「技術」と「デザイン」
「香り導くサーキュレーター」は送る風にもこだわりがあります。サーキュレーター部分に使われている工芸品を最大限に美しく魅せるため、ファンの部分を隠しつつ風を生み出せる最先端技術「コアンダ送風技術」を採用。それにより、扇風機のような肌あたりのきつい風ではなく、自然の風のような滑らかで優しい風を実現しました。風量は6段階から選べ、好みの風量によって運ばれてくる心地よい香りが、集中力の向上とリラックス効果をもたらせてくれます。
また、本体の土台部分は、なめらかで光沢のある木肌が特徴の「山桜」を使用。サーキュレーター部に「南部鉄器」と「有田焼」を全面に使っているため、空気環境や香りだけでなく、インテリアとして空間価値の向上にも期待できます。
伝統工芸×家電のこれから
伝統工芸に着目している企業は他にもあります。パナソニックは、この春に大阪、滋賀に分散していたデザイン拠点を京都に集結させました。京都の伝統工芸とともに、日本の感性とモノづくりの原点を探り、新たな家電デザインの創造に取り組んでいます。
「伝統工芸と先端技術、そしてデザインによって新しい体験価値を提案し、より多くの方に伝統工芸に興味を持っていただけるような新商品を作っていきたいです。また、日本だけでなく、海外の方にもその魅力が伝わるようなものにして、伝統工芸の活躍の場が広がることを期待します」(FUMA広報兼商品開発者:小田一平さん)
これまで先端技術を追求することに拘ってきた日本の家電業界。日本の伝統工芸の技術を採り入れることで新たな魅力を掘り起こそうとしています。
取材協力:FUMA
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