誰も住む予定なし! 両親が住んでいる実家を相続する場合、どうすればよい?

Q.離れて住む高齢の両親の相続が気になってきました。子である私たちは3人とも故郷を離れており、誰も住まないと思います。住む予定のない実家を相続する可能性がある場合、どんなことを考えておけばよいでしょうか。(30代 女性)

●ファイナンシャル・プランナー大林香世さんによる解説

A.「住まない家」であっても、所有していれば税金がかかり、手入れも必要です。いずれ誰かが住むのか、貸し出すのか、売却するのか。相続後の実家について家族で意思を確認しておきましょう。

不動産を保有していると、毎年お金がかかる

少子化が進む昨今、せっかく実家の不動産を相続しても、もてあます方も多くなってきました。相続する子等にとっては現在の生活圏から遠く、住まいとして必要でない家や土地。しかし、思い出深い実家を手放す決断はできなくて、とりあえず相続して今後のことを考える、という場合も多いようです。

しかし、住まない家であっても、その維持にはお金も手間もかかります。固定資産税は毎年1月1日現在の土地や家屋等の所有者に課税されますし、住民税(均等割)はその地に住所がなくても、事務所や家屋を持っている人に課税されます。火事に備えて、火災保険への加入も必要でしょう。人の住まない家は荒れますし、庭に雑草がはびこり庭木が繁ると防犯上も問題になるので、時々掃除や手入れに通うことも必要になり、交通費もかかります。掃除に通うなら電気や水道も止められず、電気代・水道代がかかります。

空家対策特別措置法の施行で、住宅用地であっても固定資産税の負担が重い場合も

また、2017年5月に完全施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特別措置法)」により、土地にかかる固定資産税の特例が適用されず、空き家の管理について行政から指導などを受ける可能性もあります。

住宅用地については、固定資産税や都市計画税には、一定面積までの土地の課税標準(税額算定の基準となる価格)が低く抑えられる「住宅用地の特例」があります(表1)。しかし、空家対策特別措置法では、適切に管理されておらず早急に対策が必要な「特定空家」については、自治体の助言・指導・勧告・命令などが定められており、自治体から「勧告」を受けると「住宅用地の特例」から除外されます。「命令」に背くと50万円以下の罰金が科されます。「命令」を受けた空き家に改善がみられなければ、自治体が「行政代執行」により樹木の伐採や建物の解体を行い、その費用を請求される場合もあります。

<表1 固定資産税・都市計画税の住宅用地の特例>

区分 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200平米までの部分 価格×1/6 価格×1/3
一般住宅用地 200平米を超えた、小規模住宅用地以外の住宅用地 価格×1/3 価格×2/3

相続発生前に、親子で、兄弟で実家の今後について話そう

このように、住む予定のない家や土地をとりあえず相続すると、毎年お金がかかり、適切に管理できなければ、その負担はいっそう重くなる可能性があります。また、年数が経つほど建物は古びていくので、売却したり、貸家にしたりといった実家の活用を考えるにも条件が悪くなっていきます。

できれば親御さんが元気なうちに、相続後の実家について、家族で話し合っておきましょう。まずは、相続して実家に住みたいと考えている相続人はいないのか。だれが相続するのか。相続人が複数いる場合、共有名義で相続することもできますが、将来売却することになった場合などに揉める可能性が高くなるので、避けたほうがよいでしょう。

実家に住むつもりの相続人がいなければ、実家不動産を手放しても構わないのか。実家や先祖代々の土地への思い入れの強い親の意思をおもんばかったり、兄弟や親族などに反対されたりして、売却に踏み切れない方も多いようです。相続が発生する前に、それぞれの気持ちを確かめ、相続後にもめるリスクを減らしておきたいものです。

(最終更新日:2019.10.05)
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