日本では木造住宅がまだ一般的ですが、建築工法にはさまざまな種類があります。なかでも、コンクリート打ちっぱなしの住宅はおしゃれで人気があるため、憧れる人が多いのが特徴です。しかし、コンクリート打ちっぱなしが実際にどんな家なのか、詳しくは知らない人もいるでしょう。そこで、コンクリート打ちっぱなし住宅の特徴やメリット・デメリット、費用や注意点などについて解説していきます。
コンクリート打ちっぱなしってどんな家?
コンクリート打ちっぱなし住宅とは、鉄筋コンクリート構造(RC造)の家を指します。仕上げ材を使わず、コンクリートの型枠を外したままで仕上げる手法が特徴です。コンクリートを打ち込んだ面を壁としてそのまま使用し、柱には鉄筋が用いられます。
コンクリート打ちっぱなしは主に、ラーメン構造と壁式構造の2種類に分類できます。ラーメン構造とは、柱と梁でジャングルジムのような形状の骨組みを作って、そこに壁や床などを設置する工法です。骨組み同士がとても強固に接合される反面、地震の横揺れに弱いという欠点があります。
一方、壁式構造は柱と梁の代わりに床と壁と天井を接合して、建物の荷重は壁で支える構造となっています。厚みのある鉄筋コンクリートの壁しかない構成となるので、室内に柱や梁が出っ張ることがなく、すっきりとした室内空間を演出できます。さらに、ラーメン構造と比較すると、地震や防音に強いという利点があります。
コンクリートの家にするメリット
コンクリート打ちっぱなし住宅には、多くのメリットがあります。
耐火性
まず、耐火性がとても優れているという点があげられます。コンクリートは不燃性で、火や熱に強いという特性を持つ素材です。1000度前後の高温の炎に1~2時間さらされても、燃え落ちることはありません。ですから、都心部のように家と家が近距離で密集しているような地域であっても、火事が燃え移る危険性が低くなります。そうした防災面の安全性の高さから、木造住宅に比べて、火災保険や地震保険の保険料を大幅に低減することができます。
防音性
つぎに、防音性に関しても優秀です。コンクリートは比重が重く、音を通しにくいのが特徴です。そのため、木材などの素材に比べると、高い防音性が期待できます。ピアノなどの楽器を楽しみたい人や、大きめの音で映画などを鑑賞したい人には、コンクリートが持つ防音性が大いに役立つでしょう。とりわけ、コンクリート打ちっぱなしの地下室なら、より高い防音空間をつくることが可能です。
また、コンクリートの防音性は自宅からの音漏れを防ぐだけでなく、近隣からの物音や人の声などを遮断するのにも有効です。結果的に、騒音トラブルのリスク軽減にもつながるでしょう。
デザイン性
デザイン性の高さも、メリットのひとつです。コンクリート特有の無機質さやシンプルさは、都会的なモダンテイストを演出するのに適しています。枠内にコンクリートを流し込んで形成するという性質上、好きな形状にしやすい点も見逃せません。柱の位置や間取りなどの制限を受けることがないので、木造住宅では不可能な形状も実現できるでしょう。クールでおしゃれな外観や、個性的でスタイリッシュな室内空間を手に入れたい人は、コンクリートの優れたデザイン性に注目しましょう。
広々とした空間を確保
さらに、大きな空間をつくりやすいという点も魅力です。コンクリート打ちっぱなしの住宅は、強度の高いコンクリート壁で建物を支えるため、柱が必要ありません。ということは、柱を必要とする住宅に比べて、広々とした空間を確保することが可能です。
コンクリートの家にするデメリット
コンクリート打ちっぱなし住宅には、いくつかのデメリットもあります。
結露・カビが発生しやすい
そのひとつが、結露・カビが発生しやすいことです。コンクリートは、混ぜ合わせたセメントと砂利に水を加えることで高い強度を生み出します。このときに加えられた水は、コンクリートが凝固したあと3~8年程度の長い時間をかけて徐々に乾燥していきます。つまり、水分が完全に乾燥するまでの間は、常に家のなかに水蒸気が漂っている状態だということです。そして、この水蒸気が結露やカビを発生させる原因となります。ですから、コンクリート打ちっぱなしの住宅で暮らすに当たっては、湿気対策が重要になります。
汚れが目立ちやすい
汚れが目立ちやすいという点にも気をつけなければいけません。コンクリート打ちっぱなしは、表面に仕上げ加工を行わないことで特有の外観を演出できるのが魅力です。しかし、塗装やタイル張りなどがないぶん汚れがつきやすく、ついた汚れが目立ちやすいという欠点を持ちます。
また、コンクリートは吸水性が高いので汚れた水を吸収しやすく、表面のシミがカビなどの発生原因になります。特に、コンクリートの外壁や屋根は、雨による汚れや変色の被害を受けやすいでしょう。
建物自体がかなり重い
建物自体がかなり重いこともデメリットのひとつです。コンクリートは木材と比較して重い素材ですから、コンクリート打ちっぱなしの住宅は地盤が軟弱な土地に向きません。もしも不向きな土地に建てる場合は、セメント柱状杭工法・鋼管杭工法・木杭工法などの地盤改良工事が必要になります。
熱伝導率が高い
熱伝導率が高いことにも十分注意しなければいけません。コンクリートには、熱が伝わりやすいという性質があります。そのため、冬は寒くなりやすく、夏は熱くなりやすい傾向が見られます。
ヘアークラックの発生
ヘアークラックの発生にもしっかりと配慮しましょう。ヘアークラックとは、コンクリートのひび割れの一種です。表面に生じる小さなひび割れを指し、収縮クラックとも呼ばれています。構造的に問題はないものの、見栄えが悪くなるため気になる人は補修するとよいでしょう。なお、0.3mmを超える大きなひび割れは「構造クラック」と呼び、建物の安全性が損なわれる可能性がありますので、放置せずに、早期の補修が必要です。
施工業者選び
加えて、コンクリート打ちっぱなしの工事は、高い技術を持つ施工業者でなければ行えないこともデメリットです。腕のよい施工業者を見つけられるかどうかが、快適なコンクリート打ちっぱなし住宅を建てるための鍵となります。
住宅建設にかかる費用は?
コンクリート打ちっぱなし住宅の建設にかかる費用は、依頼する施工業者や選択するデザインなどにもよりますが、基本的に高額となります。
坪単価の相場には幅があるものの、50万~110万円程度が目安です。地下室を設置したり地盤改良工事をしたりすると、工事費用の総額はさらに高額になります。
塗装にかかる費用は?
塗装にかかる費用は、工法によって異なります。撥水剤を使った工法なら、1平方メートルあたり1,000~2,000円程度かかり、耐久年数は2~7年です。
カラークリヤー工法の場合、1平方メートルあたり2,000~4,000円程度、耐久年数は5~15年となります。再現工法であれば、1平方メートルあたり4,500~6,500円程度、耐久年数は10~20年です。
コンクリートの家にする際の注意点
コンクリート打ちっぱなし住宅を建てる際、注意したいのが完成までに時間がかかることです。フルオーダーメイドのため、工事期間が長くなりがちです。
また、設計図が完成するまで、工事費用が算出できない点にも注意しなければいけません。設計を依頼した時点では工事費用が確定せず、設計図の作成が終わってから金額調整となります。
コンクリートの家で快適に暮らすためにすべきこと
コンクリート打ちっぱなし住宅にはいくつかのデメリットがありますが、対策を施すことによって快適性を高めることが可能です。
結露とカビについては、「除湿器を使う」「暖房にはエアコンを利用する」「水分を発生させる石油ストーブの使用は避ける」などの対策を徹底しましょう。
高い熱伝導率に対しては、外断熱工法を施すことで対処します。
つきやすい汚れに関しては、「定期的に汚れを落とす」「光触媒フッ素コーティングを塗布する」などのメンテナンスを行うとよいでしょう。
家の特徴を踏まえて検討を!
コンクリート打ちっぱなし住宅はおしゃれで人気がありますが、憧れの気持ちだけで安易に建てるのは避けましょう。本当に快適な生活が送れるのか、デメリットが気にならないほどメリットに魅力を感じられるのかなど、しっかりと検討を重ねたうえで判断しましょう。
(最終更新日:2019.10.05)