世帯年収900万円、共働き夫婦の無理ない住宅ローン資金計画、借入額の試算シミュレーション

世帯年収900万円の共働き夫婦が住宅ローンを借りる場合、適正な借入額はどれくらいになるのでしょうか。返済比率から適正な借入金額をシミュレーションすると同時に、夫婦の収入を合わせて住宅を購入するリスクについて理解し、リスクを踏まえて借り入れを検討することをおすすめします。また、お子さんのいるご家庭のために【フラット35】子育て支援型・地域活性化型についてもご紹介します。

世帯年収900万円の共働き夫婦、借入可能額はいくら?

ここに共働きの夫婦と子ども一人のAさんファミリーがいます。現在の夫の年収は540万円、妻の年収が380万円、合計920万円です。夫婦の合計の税金や社会保険料を除いた手取りの年収は780万円くらい、月にすると65万円ぐらいでしょう。

Aさんファミリーが、マイホームを購入するために住宅ローンの融資を受ける場合、夫婦それぞれがいくらまで融資を受けることができるでしょうか。返済比率(年収に対する年間返済額の割合。返済負担率ともいう)をもとに、借入限度額を計算してみましょう。

なお返済比率は金融機関ごとに、その基準が決められており、その基準を超える金額を借り入れることはできません。たとえばある金融機関では年収に応じて三段階の基準を決めていますが、年収ごとにもっと詳細に返済比率を定めている金融機関もあるようです。

【ある金融機関の返済比率】

 年収  返済比率
 250万円未満  30%
 250万円以上400万円未満  35%
 400万円以上  40%

【【フラット35】の返済比率】

 年収  返済比率
 400万円未満  30%
 400万円以上  35%

ここでは、【フラット35】で融資を受けることとして話を進めましょう。まず、返済比率から年間の返済額の上限を計算します。計算式は次の通りです。

年間返済額の上限=年収入(税込)×返済比率(返済負担率)

ここでは、夫婦の収入を合算して融資を受けるケースを想定していますが、【フラット35】の場合、収入合算者の年収の全額まで収入合算することができます。

夫婦の年収を合わせた世帯年収は920万円ですから、年間返済額の上限は322万円(920万円×35%)となり、1ヶ月の返済上限額は26万8,000円となります。

もちろん、実際の融資審査は他の項目についても審査が行われますが、返済比率だけを考えれば、夫婦で毎月の返済額が約26万8,000円となる融資額までは借り入れができるということです。

毎月の返済額から借入可能な金額を計算するには?

次に、毎月の返済額から借り入れ可能額を計算してみましょう。住宅ローンの返済早見表というものがあり、ネット上で見ることができます。この返済早見表を使うと、仮に100万円を借りた場合の、毎月の返済額をいくらになるかを調べることができます。

実際の融資審査では、自動車ローンやスマホの割賦購入契約の支払金額も含めて返済比率を計算することになりますが、ここでは住宅ローン以外の融資は受けていないこととします。

返済期間は35年、金利は2.0%、元利均等払いとすると、100万円当たりの毎月返済額は3,312円です。Aさん夫婦の毎月返済額の上限は26万8,000円ですから、借入可能額は約8,091万円(26万8,000÷3,312円×100万円)とわかります。

【フラット35】の貸付上限は8,000万円ですので、Aさん夫婦が収入合算して融資を受ける場合、最大で8,000万円の融資を受けることができることになります。ちなみに、この場合の毎月返済額は、約26万5000円です。

なお、毎月の返済額から借入可能な金額を計算する場合、【フラット35】:住宅金融支援機構のサイトで簡単にシミュレーションすることができますので参考にしてください。

【【フラット35】を利用した場合のAさん夫婦の借入可能額は?】

返済期間35年、金利2.0%、元利均等払いとした場合

 借入可能額  毎月の最大返済額
8,000万円 約26万5,000円

世帯年収900万円の適正な借入額はどれくらい?

【フラット35】の返済比率は、年収400万円未満で「30%」、年収400万円以上であれば「35%」となっていますが、一般的に、住宅ローンの適正な返済比率は「20%から25%以内」だといわれています。その信憑性をここでは具体的には検証しませんが、実際に私の複数のクライアントで検証しても確信の持てる数字です。

返済期間35年、金利2.0%、元利均等払いとし、返済比率を20%と25%で計算した場合、Aさん夫婦の借入可能額は下の表のようになります。各家庭の家計状況によって違いはありますが、一般的には、この金額が適正な借入金額といえるでしょう。

【適正な返済比率で見たAさん夫婦の借入可能額は?】

   返済比率20%の場合  返済比率25%の場合
借入可能額 約4,618万円 約5,765万円

ただ、ここで考えていただきたいのは、夫婦で約4,600万円(返済比率20%の場合)、もしくは約5,700万円(返済比率25%の場合)もの借り入れが本当に必要かどうかという点です。

仮に夫が単独で住宅ローン融資を受けた場合の毎月返済額は、返済比率20%の場合で9万円、返済比率25%の場合で11万2,500円となります。この毎月返済額で融資を受けられる額は、先ほどと同じ条件の場合、3,188万円から3,967万円です。

こうした住宅ローンの借り入れ以外にも、それまでに住宅購入のために続けてきた貯蓄があったり、親からの資金援助を受けることができたりする場合もあるでしょう。

詳しい理由は改めてお話しますが、物件価格の高い都心の新築マンションなどを購入するような場合を除けば、Aさん夫婦の収入であれば、何も夫婦で住宅ローンを組む必要はないように私は思います。

住宅の購入額を抑えて、夫の収入の一部と妻の収入は生活費の他、将来に必要となる子どもの教育資金や自分たちの老後資金として貯蓄に振り分けることも検討してみてはいかがでしょうか。

共働き夫婦、2人で借りるなら検討したいペアローン

ここまで、夫と妻の収入からそれぞれ借入可能額を計算してきましたが、このように夫婦それぞれが自分の収入に応じてローンを組む、一軒の家を購入する方法を「ペアローン」といいます。

たとえば、気に入った住宅があるけれど、夫の収入だけでは足りないといった場合に、夫婦で住宅ローンを組んで購入するのです。

2本の住宅ローンを組むことになるので、手数料などの諸費用は2本分かかってしまいますが、夫婦の収入を最大限に活かして住宅ローンを借り入れることができます。また、団体信用生命保険は夫婦それぞれが加入するので、夫婦どちらかに万一のことがあった場合には、夫もしくは妻の借入金額については、保険金で相殺されることになります。

同じように夫婦の収入を合わせて住宅ローンを借りる方法には、ペアローンの他に収入合算という方法として「連帯保証」「連帯債務」があります。それぞれについて表にまとめたので参考にしてください。

【収入合算の方法】

   連帯債務  連帯保証  ペアローン
 特徴  夫婦2人で1本の住宅ローンを組む(【フラット35】、財形住宅融資の他は、一部の金融機関のみ取り扱い)  夫と妻のどちらかが住宅ローンを組み、もう一人が債務を保証する  夫婦が同じ金融機関でお互いに連帯保証人になり、それぞれが住宅ローンを組む
 主債務者  夫と妻  夫もしくは妻(どちらか1人)  夫と妻
 所有権  夫と妻  夫もしくは妻(どちらか1人)  夫と妻
 事務手数料・印紙代  1本分  1本分  2本分
 最長返済期間  主債務者の年齢で判定  主債務者の年齢で判定  夫婦それぞれの年齢で判定
 住宅ローン控除  夫と妻の両方が、それぞれの持ち分に応じて受けられる  主債務者のみ受けられる  夫と妻の両方が、それぞれのローン残高に応じて受けられる
 団体信用生命保険  主債務者のみ加入できる(【フラット35】では夫婦で加入できる)。夫婦で加入の場合、万が一どちらかに何かあればローンの残債すべてが完済  主催者のみ加入できる。主債務者に万が一があった場合、残債すべてが完済  夫と妻がそれぞれ加入できる。どちらかに万が一があった場合、それぞれの残高のみ完済

共働き夫婦が収入合算で【フラット35】の融資を受けるには?

ここで改めて、夫婦の収入を合算して【フラット35】の融資を受ける方法についてご説明しておきましょう。

【フラット35】の融資を受ける場合、夫婦で収入合算するには「連帯債務」という方法になります。連帯債務で借り入れる場合、民間金融機関では収入合算者(収入を合算する人)の年収の2分の1までしか合算できないのが一般的ですが、【フラット35】では収入合算者の年収の全額まで合算することができます。

また、民間金融機関では夫婦のどちらか一方(主債務者となる人)しか団体信用生命保険(団信)に加入できないのが一般的ですが、【フラット35】であれば夫婦で加入できるのもメリットといえるでしょう。

【連帯債務とは?】

特徴 夫婦2人で1本の住宅ローンを組む(【フラット35】、財形住宅融資の他は、一部の金融機関のみ取扱)
主債務者 夫と妻
所有権 夫と妻
事務手数料・印紙代 1本分
最長返済期間 主債務者の年齢で判定 ※【フラット35】では年収によって連帯債務の年齢になる場合がある
住宅ローン控除 夫と妻の両方が、それぞれの持ち分に応じて受けられる
団体信用生命保険 主債務者のみ加入できる(【フラット35】では夫婦で加入できる)

ただし、夫婦の収入を合わせて住宅ローンを組むことにはリスクも伴います。そのため、私は、夫婦の収入を合わせて住宅ローンを組むことはあまりおすすめしていません。理由は後述しますが、もし資金が足りないのであれば購入する家を変更する、または購入時期をずらして、十分な貯蓄をしてから購入すればよいというのが私の基本的な考え方です。

子どもがいるならおすすめ、【フラット35】子育て支援型・地域活性化型

ここで、お子さんがいらっしゃる場合におすすめの住宅ローンをご紹介しておきましょう。地方公共団体と住宅金融支援機構が連携し、借り入れ当初の5年間に限り、借入金利を0.25%引き下げる【フラット35】子育て支援型・地域活性化型です(2019年3月31日申込受付分まで実施予定)。

この制度を利用するには、まず、購入予定の住宅がある自治体が、住宅金融支援機構と協定を結んで連携する地方公共団体に該当するかを確認する必要があります。連携する地方公共団体については、【フラット35】:住宅金融支援機構のサイトで確認することができます。 

その他、各地方公共団体から「【フラット35】「子育て支援型・地域活性化型利用対象証明書」の交付を受けることや、通常の【フラット35】で融資を受ける時と同様に、購入予定の住宅が、耐久性など【フラット35】の技術基準を満たしていることも必要です。

なお、要件を満たせば【フラット35】Sと併せて利用もできます。どのくらい通常の【フラット35】よりお得になるかなどの詳細は、【フラット35】:住宅金融支援機構のサイトに記載されていますので参考にしてください。

まとめ

世帯年収900万円の共働き夫婦であれば、返済比率20%で計算した場合でも、かなりの金額の住宅ローン融資を受けられることがおわかりいただけたでしょうか。

ただ、前述したように、夫婦の収入を合わせて住宅ローンを借りることにはリスクがあるため、慎重に判断するべきだと私は考えています。まず、住宅ローンを完済するまで、夫婦それぞれが今の収入を維持できるかというリスクがあります。もしどちらかが病気で働けなくなったり、子育てや介護のためにどちらかが仕事を辞めなければならなくなったりしたら、どうなるでしょうか。二人分の住宅ローンを一人の収入で返済していかなければなりません。返済が進んで、ローン残高が少なくなっていればまだいいですが、ローン残高がまだ大きい場合には、家計が破綻することにもなりかねません。

また、夫婦が資金を出し合って購入した住宅は、その負担割合に応じた持ち分での共同名義になります。これは仮定の話ですが、もしも離婚することになった場合、ローンが残った共有名義の家をどのように財産分与するか、揉める原因になりかねません。また、将来、相続を迎えた場合にも、共有名義ということで余分な手続きが必要となり、金銭的にも負担がかかるケースもありえるでしょう。このようなリスクがあるため、私は自分のクライアントには、できるだけ単独名義で住宅ローンを組むことをおすすめしています。

まだ年齢が若く、収入が少ない場合には、夫婦の収入を合わせて住宅を購入することにはメリットもあると思います。ただ、夫もしくは妻に十分な収入があるにもかかわらず、夫婦の収入を合わせなければ購入できないような高額の住宅を購入する必要があるのかどうかも検討していただきたい点です。私としては、そこまで住宅にお金を使うことはないのではないかと考えています。何よりも大切なことは、無理なく返済を続けていける額の住宅を購入することです。住宅ローン返済だけでなく、子どもの教育費や老後の生活資金、その他将来必要となる資金を、余裕を持って準備ができることが、共働き夫婦の魅力ではないでしょうか。

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(最終更新日:2019.10.05)
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