住宅ローンの契約書には印紙代が必要です。モデルルームを見学してから住宅ローンの試算をしてもらうと諸費用の欄に「印紙代」が必ず入っています。普段はなじみがない印紙代ですが、なぜ契約書に印紙を貼らなくてはいけないのか、金額はどう決まるのか、控除の対象になるのかなど、わかりやすく解説します。
住宅ローンで必要な印紙代とは?
印紙代は契約書や領収書など商取引に係る書類に対して課される税金です。印紙代が必要な書類と税額は、印紙税法という法律によって決まっています。印紙代が必要な文書を課税文書と呼び、課税文書を作成した人が定められた金額の収入印紙を貼り、消印(割印)を押して印紙税を支払います。住宅ローンの契約書は課税文書の一つであるため、契約の金額に応じた収入印紙を貼って割り印を押し、印紙税を支払わなくてはなりません。
住宅ローンだけでなく、住宅や土地を購入するための売買契約書や建築請負契約書にも金額に応じた収入印紙を貼って納税が必要です。法律で決められた印紙を貼らなかった、うっかり貼り忘れたという場合は、納付しなかった印紙税の3倍の過怠税を納めることになります。文書に印紙を貼ることを知らなかった場合でも本来の印紙税の1.1倍を支払うことになります。住宅ローンの金銭消費貸借契約書や売買契約書を取り交わしたら、正しい金額の印紙が貼ってあるか、消印(割印)はあるかをしっかり確認しておきましょう。消印(割り印)を忘れた場合も同額の過怠金が必要になりますので気を付けましょう。
印紙を間違って貼った場合は、間違って貼ったままの書類を税務署に持って行き、所定の手続きを行うと印紙税の還付を受けることができます。また、誤って購入した印紙を郵便局で他の金額の印紙に交換することはできますが、現金に換えることはできません。交換する場合は1枚につき5円の手数料がかかります。
印紙税が必要な課税文書については国税庁の資料※に一覧表がありますので、確認してみてください。
印紙代の金額はいくら?
住宅ローンの金銭貸借契約書や売買契約書にかかる印紙代は実際にはいくらでしょう? 印紙代は契約書に記載される「契約金額」に応じて契約書1通ごとに支払います。以下の表に契約金額ごとの印紙税額をまとめてみました。
文書の種類 | 記載された契約金額 | 印紙税額 |
不動産売買契約書 建築請負契約書 金銭消費貸借契約書など | 1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 | |
10万円超50万円以下 | 400円 | |
50万円超100万円以下 | 1,000円 | |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 | |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 | |
5,000万円超1億円以下 | 60,000円 | |
1億円超5億円以下 | 100,000円 |
たとえば5,000万円の住宅ローンを組む場合、単独のローンで契約すると印紙代は20,000円です。しかし、夫婦で3,000万円と2,000万円のペアローンを組んだ場合は契約書が2通になるため印紙代は20,000円×2通で40,000円となります。
同じ人が変動金利と固定金利などを組み合わせて3,000万円と2,000万円のミックスローンを組む場合も20,000円×2通で40,000円の印紙代がかかります。ただし、金融機関によっては申込日や借入日等が同じであれば、契約書を1通にまとめて20,000円の印紙代で済む場合もあります。金融機関ごとに、ローンの組み方に合わせた印紙代を、住宅ローンの試算の段階でしっかりと確認しておきましょう。
また、借り入れが5,000万円を超えると印紙代は一気に60,000円に上がります。たとえば6,000万円の住宅ローン借りる場合、単独のローンだと印紙代は60,000円です。ペアローンやミックスローンで3,000万円ずつ2本のローンを契約すれば、印紙代は20,000円×2通で40,000円です。この場合はミックスローンでも契約書を2通に分けたほうが印紙代は3分の2で済みます。印紙代に合わせてローンを選ぶ必要はありませんが、ローンの組み方によって印紙代が大きく変わる場合があることは覚えておきましょう。
印紙は郵便局やコンビニで購入することができますが、1万円、2万円といった高額な印紙はコンビニに置いていないことも多いので、郵便局で購入するのが確実でしょう。
さらに、最近では限られた金融機関ではありますが、書面ではなくインターネットで電子契約ができる住宅ローンもあります。電子契約の場合課税文書が存在しないため、印紙は不要となります。ネットバンクやWeb申し込みの住宅ローンを考えている方は、契約書が文書か電子契約かを確認しておくとよいでしょう。
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印紙代はだれが負担する?
印紙代は誰が払うかまでは法律で決められていませんが、一般的には契約書等課税文書を作成した人が負担します。金銭消費貸借契約書は買主と金融機関が、不動産売買契約書等は売主と買主が当事者です。実務ではだれがどのように印紙代を負担するのでしょうか。
金銭消費貸借契約書の場合、契約書の中に印紙税はローン契約者が負担する文言が入っているのが一般的です。この場合契約書は1通発行し、印紙の添付がある原本は貸主である金融機関が保管し、「写し」(コピー)を契約者が保管することが多いようです。それぞれが保管する契約書を1通ずつ発行すると印紙税が2倍になってしまいます。借主が「写し」で保管することで印紙代を1通分節約できます。ただし、印紙を貼り消印(割印)を押したのちの「写し」を保管しますので、印紙が貼っていない契約書のコピーしか金融機関からもらわなかった場合は、印紙と消印(割印)がある正式な「写し」を渡してもらいましょう。
売買契約書については契約書に特に定めがなければ2通作成し、売主、買主双方で出し合うのが一般的です。しかし、売買契約書に「買主がこれを保有し、売主はこの写しを保有する」等の文言があれば1通の発行で、印紙代も1通分となります。
印紙税に控除などの特典はある?
残念ながら印紙税には所得税の控除等の特典はありません。しかし不動産売買契約書や建築請負契約書に貼る印紙については、平成30年3月31日まで軽減税率が適用されます。具体的には下の表で確認してください。
不動産の譲渡に関する契約書の軽減税率
文書の種類 | 記載された契約金額 | 印紙税額 | 軽減税額 |
不動産売買契約書 工事請負契約書 | 1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 | 200円 | |
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 | |
50万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 | |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 | |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 | |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 | |
5,000万円超1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 | |
1億円超5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
ローン契約時に結ぶ金銭消費貸借契約書に貼る印紙について軽減税率はありませんのでご注意ください。
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まとめ
印紙税は印紙税法にのっとった法律で決められた納税です。ローンの契約書等や1万円以上の領収書等には必ず金額に応じた収入印紙が必要です。収入印紙を貼っていないと、契約書に書かれている契約自体は有効ですが、税務署からお伺いが来たり、将来売却する時などに買主や税務署などから指摘が入ると、その時点で過怠金を含めた納税が必要となります。
売買契約書やローンの契約書を「写し」で保管する場合は、その「写し」(コピー)に印紙と消印(割り印)があるかをよく確認してから受け取りましょう。印紙が貼ってあっても消印(割印)がないと契約自体は有効でも、納税は無効になってしまいます。
印紙は住宅購入の諸費用の中では小さなお金に感じるかもしれませんが、高額な取り引きになれば金額に応じて印紙代も高くなります。住宅購入時はローン以外にも諸費用や引っ越し代、新生活を立ち上げる費用など、たくさんの現金も必要になります。少額だからと侮ることなく、印紙代もしっかりと予算に入れて、購入後の生活に支障がないように準備しておきましょう。
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(最終更新日:2024.04.19)