【住宅ローンの繰り上げ返済VSローン控除還付金】お得なのはどっち?

住宅ローンを借り入れする時には、支払う利息をなるべく減らしたいものです。そんな時に有効な手段が「繰り上げ返済」でしょう。 一方、どうせ住宅ローンを組むなら、サラリーマンにとって最大の節税対策ともいえる「住宅ローン控除」も最大限活用したいところ。購入後10年間にわたり、納めた税金のうち年末ローン残高の1%相当額が最大で戻る仕組み(※)なので、「10年間は繰り上げ返済をしないで、なるべく多く還付金を受け取った方が得」と言う人もいます。実際のところ、ローン控除を考えた時に、繰り上げ返済するのとしないのとはどちらが得なのでしょうか。いくつかの事例で比較検証してみたいと思います。

繰り上げ返済事例[1] 半年後にドカンと500万円繰り上げ返済

まずは、購入してから半年後に約500万円(494万円)の繰り上げ返済をするケースです。繰り上げ返済をする時には「期間短縮型」と「返済額減額型」の2種類が選べますが、ここではより効果の高い「期間短縮型」を選択します。

【繰り上げ返済事例[1]:ドカンと500万円返済】 -繰り上げ返済効果-

<当初(住宅購入時)の借り入れ方法>
借入額 4,000万円
返済期間 35年
返済方法 元利均等返済
金利 35年固定金利1.4%
<繰り上げ返済の内容>
実施時期 当初借り入れから半年後
返済額 494万円(千円単位四捨五入)
種類 期間短縮型
<繰り上げ返済効果> 利息削減額:277万円(千円単位四捨五入)、期間短縮:64ヶ月(5年4ヶ月)短縮

繰り上げ返済によって本来支払うはずだった利息を277万円も減らすことができた上に、返済期間も5年4ヶ月短縮されるという2つの効果が得られました。

一方、繰り上げ返済をしたことによってローン控除還付金がいくら減るかを表したものが下の比較表です。

【繰り上げ返済事例[1]:ドカンと500万円返済】 -ローン控除還付金の比較-

   繰り上げ返済をしなかった場合  半年後に繰り上げ返済をした場合
 経過年数  年末残高  還付金額(残高×1%)  年末残高  還付金額(残高×1%)
 1年目  3,926万円  39万円  3,430万円  34万円
 2年目  3,836万円  38万円  3,332万円  33万円
 3年目  3,744万円  37万円  3,234万円  32万円
 4年目  3,651万円  37万円  3,134万円  31万円
 5年目  3,557万円  36万円  3,032万円  30万円
 6年目  3,462万円  35万円  2,929万円  29万円
 7年目  3,365万円  34万円  2,825万円  28万円
 8年目  3,267万円  33万円  2,719万円  27万円
 9年目  3,167万円  32万円  2,612万円  26万円
 10年目  3,066万円  31万円  2,503万円  25万円
 10年間累計額  -  352万円  -  295万円

(※千円単位四捨五入)

繰り上げ返済をした場合としなかった場合のローン控除還付金の差額はわずか57万円。繰り上げ返済によって得られる利息削減効果277万円の方がはるかに大きいことが分かります。

繰り上げ返済事例[2] ちょこちょこ30万円ずつ繰り上げ返済

次は、ボーナスが入るたびに30万円ずつちょこちょこ繰り上げ返済する事例です。夏と冬のボーナスで30万円ずつ年2回実施、5年間で計10回、累計約300万円(306万円)を繰り上げ返済します。

【繰り上げ返済事例[2]:ちょこちょこ30万円×10回返済】-繰り上げ返済効果-

<当初(住宅購入時)の借り入れ方法>
借入額 4,000万円
返済期間 35年
返済方法 元利均等返済
金利 35年固定金利1.4%
<繰り上げ返済の内容>
実施時期 半年後から年2回×5年間(累計10回)
返済額 1回約30万円×10回=累計約300万円(306万円(千円単位四捨五入))
種類 期間短縮型
<繰り上げ返済効果> 利息削減額:164万円(千円単位四捨五入)  期間短縮:ヶ月(3年3ヶ月)短縮

【繰り上げ返済事例[2]:ちょこちょこ30万円×10回返済】-ローン控除還付金の比較-

   繰り上げ返済をしなかった場合  ちょこちょこ繰り上げ返済をした場合
 経過年数  年末残高  還付金額(残高×1%)  年末残高  還付金額(残高×1%)
 1年目  3,926万円  39万円  3,896万円  39万円
 2年目  3,836万円  38万円  3,744万円  37万円
 3年目  3,744万円  37万円  3,589万円  36万円
 4年目  3,651万円  37万円  3,438万円  34万円
 5年目  3,557万円  36万円  3,275万円  33万円
 6年目  3,462万円  35万円  3,142万円  31万円
 7年目  3,365万円  34万円  3,041万円  30万円
 8年目  3,267万円  33万円  2,938万円  29万円
 9年目  3,167万円  32万円  2,834万円  28万円
 10年目  3,066万円  31万円  2,728万円  27万円
 10年間累計額  -  352万円  -  324万円

(※千円単位四捨五入)

繰り上げ返済による利息削減効果は164万円、対して住宅ローン控除還付金が減る分はわずか28万円。事例[2]においても、繰り上げ返済をした方が得ということが判明しました。

繰り上げ返済事例[3] 変動0.625%・低金利で借り入れした場合

事例[1][2]ともに35年固定金利1.4%で借り入れした場合のシミュレーションでした。

住宅ローンの繰り上げ返済は、借入期間が長く、金利が高いほど効果が大きく出ます。そこで事例[3]では、返済期間は35年のまま、変動金利0.625%で借りた場合の検証をしてみましょう。実際の適用金利は半年毎に見直しされますが、ここでは5年間金利が変わらないものと仮定してシミュレーションをします。

ボーナスの度に約20万円ずつ年2回、5年間で計10回、累計約200万円を繰り上げ返済する想定です。

【繰り上げ返済事例[3]:変動0.625%で借りた時】-繰り上げ返済効果-

<当初(住宅購入時)の借り入れ方法>
借入額 4,000万円
返済期間 35年
返済方法 元利均等返済
金利 変動金利0.625%
<繰り上げ返済の内容>
実施時期 半年後から年2回×5年間(累計10回)
返済額 1回約20万円×10回=累計約200万円(201万円(千円単位四捨五入))
種類 期間短縮型
<繰り上げ返済効果> 利息削減額:43万円(千円単位四捨五入)、期間短縮:23ヶ月(1年11ヶ月)短縮

【繰り上げ返済事例[3]:変動0.625%で借りた時】-ローン控除還付金の比較-

   繰り上げ返済をしなかった場合  ちょこちょこ繰り上げ返済をした場合
 経過年数  年末残高  還付金額(残高×1%)  年末残高  還付金額(残高×1%)
 1年目  3,915万円  39万円  3,897万円  39万円
 2年目  3,811万円  38万円  3,751万円  38万円
 3年目  3,708万円  37万円  3,612万円  36万円
 4年目  3,603万円  36万円  3,463万円  35万円
 5年目  3,498万円  35万円  3,313万円  33万円
 6年目  3,393万円  34万円  3,188万円  32万円
 7年目  3,286万円  33万円  3,080万円  31万円
 8年目  3,179万円  32万円  2,972万円  30万円
 9年目  3,071万円  31万円  2,863万円  29万円
 10年目  2,963万円  30万円  2,753万円  28万円
 10年間累計額  -  345万円  -  331万円

(※千円単位四捨五入)

結果は、繰り上げ返済の利息削減効果が43万円なのに対して、ローン控除還付金の減額分はわずか14万円となりました。0.625%という低金利で借り入れするケースにおいても、ローン控除が適用中の早い時期に繰り上げ返済をした方が得という結果になりました。

まとめ・繰り上げ返済をした方が得

今回検証した3つの事例では、いずれもローン控除適用中の期間であっても、「繰り上げ返済をした方が得」という結果になりました。これは、住宅ローンの返済額が複利計算で算出されることや繰り上げ返済のからくりを考えると当然の結果のような気がします。

事例は、いずれも新築住宅を購入しローン控除の対象残高が上限4,000万、債務者は毎年40万円以上の税金を納めているという前提で比較しています。実際には、金利・返済期間・ローン控除対象額・納税額など前提条件は人それぞれなので、具体的なシミュレーションをしてみないとどちらが得か判断できません。

このところ「ローン控除適用中は繰り上げ返済しないほうが得」という言葉だけが先走りしているような印象をいだきますが、比較をする時には具体的に試算して比較するようにしてください。

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(最終更新日:2019.10.05)
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