共働き夫婦の住宅ローンはペアローンがいい? メリット・デメリット、注意点を解説

ペアローンとは夫婦がそれぞれ別に住宅ローンを組んで、一軒の家を購入する方法です。夫婦がそれぞれの収入を基にローンを組むので、借入可能額を最大にすることができます。とても便利な方法に思えるペアローンですが、デメリットはあるのでしょうか。ペアローンのメリット・デメリットの他、団体信用生命保険や住宅ローン控除の取扱いなどを確認して、ペアローンが本当にお得な借り入れ方法と言えるのか考えてみましょう。

そもそもペアローンとは?連帯債務とは何が違うの?

マイホームを購入したいけれど自分の収入だけでは足りない…。そんな場合、夫婦2人の収入で家を買う方法があります。その方法の1つに「ペアローン」があります。

ペアローンとは

では、ペアローンとはそもそもどのようなものなのでしょうか? それは、ご夫婦が別々に住宅ローンを組んで、それぞれ返済をしていくというものです。つまり、一軒の家を買うために2本の住宅ローンを購入することになります。

たとえば、4,000万円の住宅を全額借り入れで購入する場合、夫は2,400万円の住宅ローンを組み、妻は1,600万円の住宅ローンを組むといった方法です。この方法で購入した住宅は、夫婦の共有名義となり、持ち分はそれぞれの負担額に応じて決められます。この場合は、夫:6・妻:4という割合になります。

連帯債務とは

ペアローンと似た方法に「連帯債務」という方法もありますが、これは2人で1本の住宅ローンを組む方法です。これは「収入合算」といわれる方法の1つで、夫か妻のどちらかが「主たる債務者」として住宅ローンを組み、もう1人が「従たる債務者」として、それぞれが返済義務を負うという仕組みです。

なお、連帯債務の場合も、夫婦それぞれの持ち分を決め、その割合に応じて返済をしていくというのが原則です。

(関連記事:夫婦で収入合算「連帯債務」「連帯保証」「ペアローン」3つの違いは?

ペアローンのメリットは?

ペアローンの最大のメリットは、“夫婦2人の収入で家を購入できること”ですが、それ以外には、どのようなメリットがあるのでしょうか。 ひとつは、夫婦2人の収入を最大限に活かせるということです。夫婦それぞれがローンを組むので、借り入れ可能額がそれぞれの収入に応じて決まるため、借り入れ可能額が大きくなります。

一方、収入合算して2人で1本のローンを組む連帯債務の場合、金融機関ごとに取り扱いは異なりますが、夫婦の年収の全額を合算できるとしている金融機関もあれば、どちらか一方については年収の2分の1までしか合算できないとしている金融機関もあります。借り入れを検討している金融機関に必ず確認するようにしてください。

団体信用生命保険と住宅ローン控除の扱いは?

また、もう1つのメリットとして、“夫婦それぞれが団体信用生命保険(団信)に加入できる”という点があげられます。団信とは、住宅ローンの債務者が死亡した場合や、高度障害になった場合に保険金が支払われ、その保険金で住宅ローンの残債が返済される保険です。連帯債務の場合、団信に加入できるのは主たる債務者となる1人だけですから、これはペアローンを組む大きなメリットといえるでしょう。

ただし、【フラット35】であれば、連帯債務であっても夫婦で団信に加入できる「デュエット」という制度があります。連帯債務での借り入れを希望する場合は、【フラット35】を検討されることをおすすめします。なお、デュエットに加入する場合の金利は、新機構団信付き【フラット35】の借入金利+0.18%です。(※参考:住宅金融支援機構ホームページ

団信に加えてメリットとしてあげられるのが、夫婦それぞれで住宅ローン控除を受けることができる点です。ただし、住宅ローン控除を受けるためには、一定の要件を満たす必要があることは留意しておいてください。

【ペアローンと連帯債務を比較すると?】

   ペアローン  連帯債務
 借り入れの仕組み  夫婦それぞれが住宅ローンを組む  夫婦で1本の住宅ローンを組む
 借入可能額  それぞれの収入に応じて決まるので最大にできる  合算できる収入が制限される場合がある
 事務手数料などの諸費用  2本分かかる  1本分ですむ
 団体信用生命保険  夫と妻の両方が加入できる  どちらか1人だけが加入※【フラット35】では夫婦で加入ができる
 住宅ローン控除  夫と妻の両方が受けられる  夫と妻の両方が受けられる

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ペアローンにデメリットはある?

では、反対にペアローンのデメリットにはどんなものがあるのでしょうか。

それは“諸費用がかさんでしまうこと”です。夫婦で2本の住宅ローンを契約することになるので、住宅ローンの事務手数料などの諸費用が2本分かかってしまうのです。

また、これはペアローンだけでなく、連帯債務の場合も同じですが、“夫婦いずれかの収入が大きく減ってしまった場合には、毎月の返済が厳しくなる可能性が高い”といえるでしょう。夫婦2人の収入をもとに借り入れをするリスクを認識しておいていただきたいところです。

なお、夫婦それぞれが団信に加入できますが、どちらかに万一のことがあった場合、保険金で返済されるのは1人分の残債だけになることにも留意しておいてください。

(関連記事:夫婦で住宅ローンを組むための3つの方法。そのメリットデメリットは?

ペアローンは本当にお得な借り入れ方法?

ペアローンのメリット・デメリットについてお伝えしてきましたが、ペアローンは事務手数料などの負担を考えても有利な借り入れ方法といえるのでしょうか? 連帯債務と比べながら考えてみしょう。

改めてお伝えしますが、ペアローンと連帯債務の最大の違いは何でしょうか?

それは、住宅ローン契約を夫婦それぞれが結んで、合計2本のローンを組むのが「ペアローン」であり、夫婦2人で1本の住宅ローンを組むのが「連帯債務」です。

比較のため、借入金額と返済期間を同じとすると、ペアローンであっても連帯債務であっても金利負担は同じです。差が出るのは、前述した通り、事務手数料などの諸費用になります。

では、具体的に2本のローンを組むことで諸費用の負担がどう変わるかを見てみましょう。

(試算条件)借入金額の合計は4,000万円で、夫が2,400万円、妻が1,600万円のローンをそれぞれ組んだものとして、諸費用の額はりそな銀行の手数料・諸費用を適用して考えてみます。

【ペアローンを組んだ場合の諸費用の負担】

 費用  1本のローンを組んだ場合  ペアローンの場合  負担額の変化
 印紙税  2万円(契約金額が1,000万円超5,000万円以下の場合)  4万円  あり
 保証会社事務手数料  3万2,400円  6万4,800円  あり
 登録免許税(抵当権設定登記に伴う費用)  1万6,000円(借入金額×0.4%)  1万6,000円(借入金額×0.4%)  なし
 司法書士へ支払う報酬(抵当権設定登記に伴う費用)  3〜5万円程度(司法書士により異なるのであくまでも目安です)  6〜10万円(単純に2倍にはならない可能性あり)  あり
 保証料(一括前払い型)  借入期間によって異なる  借入期間によって異なる  なし
 保証料(金利上乗せ型)  融資金利+0.2%  融資金利+0.2%  なし
 融資手数料  86万4,000円(借入金額×2.16%)  86万4,000円  なし

りそな銀行の住宅ローン手数料・諸費用をもとに作成

上の表の通り、ペアローンを組むことで負担が増える諸費用は、下記の3つです。

・印紙代
・保証会社事務手数料
・司法書士に支払う手数料

登録免許税は借り入れ金額の0.4%(軽減措置が適用されて0.1%になる場合があります)と決まっているのでペアローンであっても負担額は変わりません。また、保証料も借入金額と借入期間が変わらなければ、ペアローンであっても負担額は変わりません。

このように、ペアローンにすることで増える諸費用の額は、おおむね10万~20万円くらいにおさまると考えられます。この金額であれば、夫婦の収入がどれくらいなのかにもよりますが、住宅ローン控除を受ければ、1~2年分の還付金額でカバーできるケースが多いといえるでしょう。

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ペアローンを組んでもいい条件とは?

ペアローンは、“それぞれが住宅ローンを返済していくこと”が前提となります。このことを踏まえると、夫婦間で「今後も共働きを継続していく」という共通の意志を明確にもっていれば、ペアローンは向いているといえるでしょう。

反対に、子どもを出産して退職を考えているとか、転職や独立を考えているので収入が大きく変化する可能性があるような場合には、ペアローンを組むことはおすすめしません。

ペアローンは、夫婦の収入を合わせることで成り立つものですから、その収入が崩れてしまう可能性があるなら、返済を続けていくことがむずかしくなり、最悪の場合はせっかく購入したマイホームを手放さなければならないという事態も起こりえるからです。

ペアローンを組む時の注意点は?

前述した通り、夫婦の収入が継続する見込みがあるということが、ペアローンを組む必須条件といっても言い過ぎではないように思います。

そのため、マイホームの購入が視野に入った段階で、お互いの仕事に対しての考えや子育てのことなど、夫婦でしっかりと話し合い、共通認識を持っておくことが大切です。ペアローンを考えることは、夫婦で行う「お金の共同作業」だと言えるでしょう。

また、実際にペアローンを組んでマイホームを購入する際には、それぞれの住宅の持分をどうするかを考えなければなりません。持ち分は夫婦それぞれの出資額に応じて決めなければならず、もし「持ち分が適正ではない」と税務署が判断した場合には贈与税の課税対象になってしまいます。

また、持ち分は住宅ローン控除の還付をどれだけ受けられるかにも関わってきますので、「夫婦だから半分ずつ」などと安易に決めることはせず、お互いの収入や所得税の額を考慮して、住宅ローン控除の恩恵を十二分に活用できる割合を考えることをおすすめします。

どういった割合がいいのかわからない場合には、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談されてはいかがでしょうか。

住宅ローンは、30年とか35年といった長い期間で返済していくものです。返済が終わるまで、夫婦の共同作業が続くという側面もあると言えます。

返済計画だけでなく、仕事や子育てといったライフプランについても、ご夫婦でしっかり話し合い、共通の認識を持った上で借り入れを行うことを強くおすすめします。

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(最終更新日:2023.12.15)
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