住宅ローンを借り入れし住宅を取得すると、その後10年の間「住宅ローン減税」という優遇税制の適用を受けることができ、給与等から支払う税金を節約できます。会社員が適用期間中の異動で、単身赴任、あるいは家族揃って転居した場合や自宅を賃貸住宅にした場合、この制度の取り扱いはどうなるのでしょうか。
住宅ローン減税は、毎年の住宅ローン残高の1%を10年間、所得税から控除する仕組み
住宅ローンを借りて住宅を取得し、住宅ローン減税制度の適用を受けると、その後毎年、年末のローン残高の1%に相当する額が10年間に渡って所得税から控除されます。なお、所得税から控除しきれない場合は、住民税からも一部控除されます。
【住宅ローン減税の概要】(消費税率8%、10%の住宅を取得する場合)
住宅の種類 | 一般住宅 | 認定長期優良住宅/認定低炭素住宅 |
居住年 | 2014年1月1日から2021年12月31日まで | |
控除期間 | 10年 | |
住宅ローンの年末残高限度額 | 4,000万円 | 5,000万円 |
各年の控除額 | 年末ローン残高×1% | |
住民税からの控除限度額 | 1,365万円/年(前年課税所得×7%) | |
最大控除額(10年間合計) | 400万円 | 500万円 |
その他の主な要件 | ・床面積が50平米以上であること ・借入金の返済期間が10年以上であること等 |
控除額は10年間の合計で最大500万円にも及ぶ大きな税制優遇です。それだけに、住宅ローンを借りた人の多くは、翌年に確定申告をして住宅ローン減税制度の適用を受けます(会社員の場合、2年目以降は年末調整で対応)。
なお、この制度は2013年以前にもありました。ただ、居住年等によって控除期間や控除額の規模が異なります。また、現在でも消費税率0%の住宅を取得する場合(個人から中古住宅を購入する場合など)は、上表とは控除額が異なります。
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途中で単身赴任、家族揃って転居する場合はどうなる?
住宅を取得して住宅ローン減税の適用を受けていた人が、転勤の辞令を受けるなど、会社都合で転居をする場合は、引き続き減税を受けることができるのでしょうか。
住宅を取得して夫が住宅ローン減税の適用を受け、妻、子供と暮らしていた例でみてみましょう。
夫が転勤で単身赴任することになっても、家族が自宅にそのまま住み続けるのであれば、住宅ローン減税は引き続き適用されます。子供が中学生や高校生のときなどは、教育的な事情で単身赴任したほうがよいこともあるでしょう。その場合、減税は継続することになります。 しかし、夫の転勤に伴って家族全員が転居する場合は、住宅ローン減税の適用を受けられなくなります。住宅ローン減税は、自分や扶養親族が自宅に住むことが条件になっているのです。
家族全員が転居したあと、途中で家族だけが自宅に戻る場合や、夫の転勤が終わって家族全員で自宅に戻る場合は、残存期間について住宅ローン減税の適用を受けられます。たとえば、2016年に住宅を取得して入居し、2018年3月に転勤の辞令が出て家族全員で転居、3年後の2021年3月に自宅に戻ってきた場合、2016年と2017年の2年間は住宅ローン減税の適用を受け、2018年から2020年までの3年間は減税の適用を受けられず、2021年から2015年までの5年間(=10年-2年-3年)は再び住宅ローン減税の適用を受けることができます。
なお、転勤先は、国内の場合もあれば、海外の場合もあります。転勤先が海外の場合は、2016年4月1日以降に住宅を取得した方のみ、上記のルールがあてはまります。2016年3月31日までに住宅を取得した方については、夫が海外に単身赴任をして家族が自宅に住み続けても住宅ローン減税は適用されません。ただし、夫の単身赴任が終わって自宅に戻ると、残存期間について再適用されます。
元々、住宅ローン減税は、転勤先が海外の場合は適用されませんでしたが、国内に転勤する人と海外に転勤する人とで取り扱いが異なる点を解消するため、2016年から見直されました。
住宅ローン減税の再適用を受けるためには、転居する前と、自宅に戻ってから、一定の手続きをする必要があります。
転居をする前には、「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を最寄りの税務署長に提出する必要があります。そして、自宅に戻ってきて再適用を受けるときには、あらためて確定申告をしなければなりません。
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転勤中に自宅を賃貸住宅にした場合はどうなる?
転勤に伴って家族全員が転居をしても、自宅の住宅ローンの返済は続きます。しかし、住宅ローン控除を受けることはできなくなります。仕事の都合で自宅に戻れる可能性が低い場合には、思い切って自宅を売却して住宅ローンを一括返済することもできますが、戻る可能性がある場合には、自宅を賃貸住宅にして家賃収入を住宅ローンの返済に充当することを検討する方が多いでしょう。
自宅を賃貸住宅にする場合、家族全員で転居することになるため、住宅ローン減税の適用を受けることはできません。しかし、自宅に戻る場合は、残存期間について再適用を受けることができます。ただし、自宅に戻ってきた年に賃貸住宅していた場合は、翌年からの再適用になります。たとえば、2018年の6月まで賃貸住宅にしており、そのあと、4ヶ月後の2018年10月に自宅に戻ってきた場合、住宅ローン減税は、2019年から残存期間の終了まで再適用されます。
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会社員の方は異動や転勤によって、突然、自分や家族のライフプランに大きな見直し、変更を迫られる場合があります。住宅取得時には想定していなくても、その後、住宅ローン減税の適用期間である10年の間にはそのようなことが起こる可能性があるでしょう。
自分の場合はどうなるか、税金に関する不明点や疑問点などがあれば、税務署に連絡をして確認するとともに、いつどんな手続きをする必要があり、どんな書類を提出しなければならないかなども確認するようにしましょう。
(最終更新日:2023.07.24)