住居内の移動が楽で、家中どこからでも外に出やすい「平屋」の住宅。震災や火災の際も避難しやすく、階段の上り下りがないので子どもや高齢者の転倒事故の心配もありません。長く安心して暮らせると人気ですが、2階建てが主流の現在、高い建物に囲まれて採光が取りにくいのが悩みどころ。また、生活空間のすべてが1階で完結するため、外部からプライバシーを守りにくいのも難点です。そこで注目したいのが、“中庭”のある暮らし。そのメリット・デメリット、間取りや住宅設計のポイントなど、ARUHIマガジン編集部が調べてみました。
平屋で暮らすメリットとデメリット
まず、平屋暮らしのメリット・デメリットから整理してみます。
メリット | デメリット |
震災や火災の際も避難しやすい | 採光が取りにくい |
階段の上り下りがない(子どもや高齢者の転倒事故の心配がない) | 外部からプライバシーを守りにくい |
デメリットに挙げた点を解消できる暮らし方として、“中庭”を設ける間取りで設計することで、家の中に光と風を通し、外部からの目が届きにくい環境を作り上げられます。“中庭”のある平屋暮らしのメリット・デメリットについて、詳しく解説していきます。
“中庭”のある平屋で望める暮らし(メリット)
建物を庭で取り込むように建築することで、光と風を家の中に十分に取り込みながら、外からの視線はしっかり遮ることができます。庭にテーブルやイスを並べて軽食やおやつを楽しんだり、夏にはプールを出して水遊びをしたりなど、プライベートの時間を満喫できます。
また、内と外が緩やかにつながった一体感のある造りなので、自然を身近に感じながら、よりくつろげるリビングが実現できます。中庭に木を植えたり、ライティングにこだわったりすることで、家全体がオシャレで高級感のあるものになるのも魅力です。
“中庭”のある平屋で気を付けたいこと(デメリット)
中庭を建物で囲むため外壁面積が増えるので、建築コストがかかってしまいます。また、開口部が多くなるため外気からの影響も大きく、夏は暑く、冬は寒い家になりがちです。この点は高気密・高断熱の家にすることで解消できますが、性能のよさに比例して建物価格も高くなります。
また、間取りにもよりますが、建物が長めの長方形になる場合が多く、延床面積も広くなりがちなため、施工できる敷地も選ぶことになります。
平屋に“中庭”を作るメリットデメリット比較
【平屋住宅に中庭を作るメリット&デメリット】
メリット | デメリット |
家の中に光と風を十分に取り込める | 外壁面積が増えるため、建築コストがかかる |
建物で庭を囲むため、外からの視線を気にせずアウトリビングのある生活を楽しめる | 開口部が多くなるため外気の影響を受けやすく、夏は暑く、冬は寒い家になりやすい |
内と外が緩やかにつながった一体感のある造りのため、室内にいながら自然を身近に感じられる | 高気密・高断熱の場合、建物価格も高くなる |
植栽やライティングにこだわることで、家全体がオシャレで、高級感のあるものになる | 中庭を建物で取り囲むため、建物が長めの長方形になる場合が多く、施工できる土地が限られてくる |
“中庭”のある平屋の間取りプラン
ひと口に「中庭のある家」といっても、中庭をどのように配置するかによって、個性がまったく変わってきます。代表的な3タイプを紹介しますので、それぞれの特徴や注意点をチェックしてみましょう。
ロの字型
庭を四方から取り囲むように建てられるロの字型タイプの平屋。最もプライバシーが守られる間取りです。中庭を中心に家の中をぐるりと回遊できる動線を作ることができ、移動が楽になるのはもちろん、家の中をぐるぐる回りながら生活すること自体、とても楽しく魅力的な造りです。四方を囲まれているため、大雨が降り続くと水がたまりやすいのが難点ですが、大きめの排水管を通すなど、きちんと水はけに考慮して建築すれば問題ないでしょう。また、家の中心から採光や通風が可能な造りですが、中庭が狭いとそのメリットが十分に発揮できません。居住空間も狭くなりがちなので、郊外などの広い土地に建てる方におすすめのプランです。
コの字型
中庭が一面だけ外に開いているコの字型。ロの字型ほど土地面積を必要とせず、かつ、プライバシーを守ることのできる間取りです。ただし、唯一開いている面に2階建て以上の建物が近接すると、採光や通風が悪くなります。将来、建物が建つ可能性がある場合、庭を広めに確保しておくとよいでしょう。
L字型
L字型に間取りがレイアウトされており、開けた角の部分に中庭が配置されるタイプ。2面が開けているので、環境にもよりますが、南側に建物があっても採光や通風がしっかり確保できます。西側に建物がない場合は西日の影響が強くなるため、夏場の午後は暑くなってしまいます。また、風が強く入り込み過ぎる場合もあるので、大きな木を植えたり、パーゴラを設置したりするなどで日当たりや風当りの影響を弱める工夫も必要です。
まとめ
間取りに中庭を取り込むことで、自然の光や風、緑の美しさをより身近に感じながら、より快適な平屋の暮らしを叶えることができます。細部までしっかり造りこめる注文住宅ならば、よりオシャレで、暮らしを豊かにしてくれる中庭を実現できそうです。配置によってその恩恵は変わってきますので、叶えたい暮らしにあわせて、効果的に中庭を設けてみてはいかがでしょうか?
(最終更新日:2019.10.05)