つみたてNISAの対象商品が決定! 活用する上での留意点は?

「つみたてNISA」が2018年からスタートしました。この制度は、従来の一般NISAと同様に毎年の非課税投資枠からの収益に税金がかからない仕組みですが、非課税投資枠が年間40万円、非課税期間が最長20年という点で異なります。つみたてNISAと一般NISAは選択制になっているため、違いを理解して、上手に活用するようにしたいものです。

つみたてNISAは、若い人の長期的な財産形成に適した制度

2014年1月にスタートした一般NISAの口座数は、2016年6月末時点で1,090万2,286口座となっています。年代別の内訳は下の表の通りとなっており、50歳代以上が全体の70%以上を占めています。60歳代以上でも半数を超えており、金融資産をたくさん持っている年代に偏っていることがわかります。

【一般NISA口座数(2016年6月末時点)】

 年代  口座数  年代別比率
 20歳代  48万343口座  4.4%
 30歳代  111万8,606口座  10.3%
 40歳代  166万9,098口座  15.3%
 50歳代  184万87口座  16.9%
 60歳代  269万1,811口座  24.7%
 70歳代  212万2,351口座  19.5%
 80歳代以上  97万9,990口座  9.0%
 総数  1,090万2,286口座  100.0%

(金融庁「一般NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(平成29年6月末時点)」)

2018年1月にスタートした“つみたてNISA”は、主に20歳代から40歳代くらいまでの年齢層の活用を想定した仕組みです。一般NISAとつみたてNISAを併用することができないため、あらかじめ違いをよく理解し、自分の投資目的に合わせた制度選びをする必要があります。これまで一般NISAの口座を開設して投資をしている人も、今年からつみたてNISAを使いたい場合はあらかじめ金融機関に申請する必要があります。すでに今年に一般NISA口座内で投資をした人が、年の途中からつみたてNISAに変更することはできないため注意が必要です。

【つみたてNISAと一般NISAの主な違い】

   つみたてNISA  一般NISA
 対象者 日本に居住する20歳以上の方(口座開設する年の1/1現在)。つみたてNISAと一般NISAの併用は不可(ただし、年単位での変更は可能)
 非課税投資枠  40万円/年  120万円/年
 非課税期間  最長20年間  最長5年間
 売却した場合の非課税枠の再利用 不可
 未使用の場合の翌年への繰り越し 不可
 口座開設時期  2037年まで  2023年まで
 投資方法  積み立てによる定期・継続的な買い付けのみ  制限なし
 ロールオーバー(保有商品の移行)  不可  可
 対象商品

長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託

例)公募投資信託の場合
・販売手数料ゼロ
・信託報酬一定水準以下(国内株のインデックス投信の場合0.5%以下)に限定 など

 上場株式 ETF(上場投資信託)、公募投資信託 等

つみたてNISAは非課税投資枠が年40万円と一般NISAの年120万円の3分の1の水準ですが、非課税期間は最長20年と長くなっています。また、投資方法は積み立てによる定期・継続投資に限定されており、一般NISAのような一括投資はできません。これらのことから、つみたてNISAは、長期的に少額ずつ積立投資を行う場合に非課税の優遇を長く享受できる仕組みになっていることがわかります。また、対象商品が低コストの商品等に限定されていることで、効率的な資産運用ができるようにもなっています。

運用したい商品を取り扱っている金融機関を選択することがポイント

2018年1月の制度スタートに先立って、金融機関から金融庁へ要件を満たす対象商品の届出が行われ、2017年秋からその一覧が公表されています。

(参考:つみたてNISA対象商品届出一覧(対象資産別)平成29年12月13日 金融庁

対象商品は2017年12月13日時点で129本です。

銀行や郵便局、証券会社などの金融機関等を通して販売されているわが国の公募株式投資信託の数は2017年11月末で約6,000本(投資信託協会より)ですので、つみたてNISAの対象商品は、その約2%に過ぎません。

なお、この129本の対象商品すべてを個々の金融機関が取り扱っているわけではありません。金融機関によっては数本しか取り扱っていないところもあります。したがって、つみたてNISAをうまく活用するための最大のポイントは、運用したい商品を取り扱っている金融機関に口座を開設することです。どの商品を選べば良いかわからない場合は、商品の品揃えが多い金融機関を選択しておけば、途中で運用商品を変更したいときに選択肢が多くて便利でしょう。

現在、一般NISA口座を開設している金融機関で引き続きつみたてNISAを活用するのではなく、まずは取扱商品を確認し、場合によっては口座開設手続きが面倒でも、納得できる商品や商品数がある金融機関に切り替えるほうがいいでしょう。金融機関は年単位で変更することもできますが、一旦金融機関を決めて積み立てをスタートしたあとから途中で変更するのは面倒です。変更した金融機関に商品を移管することもできません。そのため、最初の段階で、非課税期間の最長20年間は変更しないつもりで、金融機関をしっかり検討して選んだほうがいいでしょう。

運用商品が決まらない場合は、バランス型投資信託を選ぶ!

つみたてNISAで運用する商品が決まらない場合は、バランス型投資信託を選択すればよいでしょう。

資産運用で収益を上げる確率を高めるコツは、一般的に以下の3つを組み合わせることだと言われています。

◯分散投資
◯長期投資
◯タイミング分散

このうちの「タイミング分散」は、少額ずつ投資タイミングを分散して積み立てながら投資をすることで、つみたてNISAを活用すれば自動的に実行できます。「長期投資」についても、非課税期間が最長20年に設定されていることが、長期投資のインセンティブになっています。

「分散投資」は、値動きの異なる複数の資産を組み合わせてリスクを抑えて運用することです。組み合わせる資産は、一般的には日本株式、日本債券、先進国外国株式、先進国外国債券の4資産を基本とし、より高いリターンを期待する場合は、4資産に加えて新興国株式、新興国債券、日本REIT(不動産)、外国REIT(不動産)なども組み合わせます。

つみたてNISA対象商品届出一覧」の中の商品で分散投資を実践するには、【指定インデックス投資信託】の中の「複数指数(バランス型)」・「海外型」・「4指数~8指数」の商品や、【指定インデックス投資信託以外の投資信託(アクティブ運用投資信託等)】の中の「海外型」・「株式及び公社債、REIT」の商品を活用することです。

長期間に亘って運用収益が非課税になるつみたてNISAは、効率的に資産運用ができる制度です。まとまった投資資金がない人も、無理のない範囲の金額を少しずつ積み立てながら、将来のライフイベント資金の準備ができます。運用期間がたっぷり確保できる若い方にこそメリットがある財産形成支援制度です。

(最終更新日:2019.10.05)
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