住宅ローンは20年、30年と長い期間返済が続きます。そのため、少しでも低い金利、有利な条件で借りたいと思うのは当然のことでしょう。
たとえば、家電製品を買う時、複数の製品や価格を比べて買うのは当たり前です。でも、家電製品よりずっと大きな買い物なのに、複数の住宅ローンを比べて選ぶ人は案外少ないです。
金利などの条件を少しでも有利に借りるために、複数の金融機関に同時に審査に出して比較することは可能なのでしょうか? 今回は住宅ローンの複数審査について考えてみたいと思います。
仮審査(事前審査)と本審査、一括審査の違いは?
売り手である不動産会社は、購入希望者が住宅ローンの審査に落ちてしまうと、資金を支払ってもらうことができません。そのため、「物件」が決定し、「売買契約書」を結ぶ前に「仮審査」(事前審査)に出し、審査に通ったのちに「契約書」を結ぶのが一般的な流れとなっています。
また、購入希望者も仮審査に出すことで「自分がいくらのローンをどのような条件で借りることができるか」の目安が分かります。
●仮審査(事前審査)とは
仮審査は、金融機関によって違いはあるものの“ローン契約者が希望の借入額を返済していける安定収入があるか”など、「返済力」に重点を置いた審査と言われています。
収入だけでなく、過去にローンやクレジットの返済で延滞がないかといった履歴を個人信用情報機関に照会して、その人の「信用力」も審査するようです。
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●本審査とは
本審査は、売買契約書を取り交わしてから、さらに詳しい収入や納税状況を確認し、“購入する物件が建築基準法上の基準を満たしているか”、“借入額に見合った担保価値があるか”など、「返済力」と「物件力」の両面から審査を行うと言われています。仮審査に通っているからといって、必ず本審査に通るわけではありません。
本審査は下の表にあるように仮審査より多くの書類の提出を求められ、納税や家族の状況、健康状態なども詳細に審査されるようです。仮審査より借入額が増えていたり、返済期間が短くなっていたりすると審査がやり直しになる場合があります。
また、物件の価格が上がり融資額を増やす場合や間取りなどの条件が変われば、物件の担保価値をもう一度審査し直すことになります。
●一括審査
最近では1回の申し込みで複数の金融機関の仮審査ができる「一括審査」も登場しました。WEBや不動産会社経由で申し込めるため、手軽に金利や総返済額、手数料・保証料といった諸費用を比較できるメリットがあります。
しかし、逆に一括審査のサービスに登録している金融機関は一部に限られるため、すべての金融機関から選べるわけではありません。メリットとデメリットを理解したうえで申し込みましょう。
<審査時の提出書類の例>
書類名 | 事前審査 | 本審査 | |
記載する書類 |
事前審査申込書 | ○ | |
借入申込書(保証委託申込書) | ○ | ||
個人情報の取り扱いに関する同意書 | ○ | ○ | |
団体信用生命保険申込書・告知書 | ○ | ||
本人確認書類 |
運転免許証と健康保険証またはパスポート | ○ | ○ |
印鑑証明書(発効後3ヶ月以内) | ○ | ||
住民票(家族全員の続柄があるもの) | ○ | ||
年収確認資料 |
給与所得者:直近の源泉徴収票 | ○ | ○ |
給与所得者:住民税決定通知書または課税証明書 | ○ | ||
個人事業主等:確定申告書と附表(直近3年分)(写) | ○ | ○ | |
個人事業主等:申告所得税その1、その2(3年分) | ○ | ||
個人事業主等:事業税納税証明書(3年分) | ○ | ||
法人代表者:法人の決算報告書3期分(写) | ○ | ○ | |
法人代表者:法人納税証明書その1その2(3年分) | ○ | ||
法人代表者:法人事業税納税証明書(3年分) | ○ | ||
物件資料(物件によって異なります) |
売買契約書(写) | ○ | |
重要事項説明書(写) | ○ | ||
パンフレット・チラシ・販売図面・物件概要書・価格表(写) | ○ | ○ | |
建築確認済証、間取り図・配置図(写) | ○ | ○ | |
検査済証(写) | ○ | ||
土地登記事項証明書 | ○ | ||
建物登記事項証明書 | ○ | ||
土地の公図・測量図・住宅地図(写) | ○ | ||
他の借り入れがある場合 | 返済予定表・残高証明書(写) | ○ | |
借り換えの場合 | 返済予定表・残高証明書・返済口座通帳1年分(写) | ○ |
銀行ローンも、【フラット35】も、「複数審査」は可能?
●複数の金融機関への仮審査は可能
WEBからの一括審査以外でも、複数審査は可能でしょうか? 結論から言うと「可能」です。特に新規借り入れの時には、不動産会社が確実に貸してくれる金融機関を確保するために、複数の金融機関に同時に仮審査に出すのが一般的です。
仮審査は購入希望者にとっても自分がいくらのローンをどのような条件で借りることができるかを知る大切な機会です。一つの金融機関で審査に通らなくても別の金融機関では審査に通ることもあります。
また、同じ人、同じ物件でも金利の優遇が金融機関によって異なることがあるため、複数審査に出すことで自分にとって一番いい条件が出る金融機関を選ぶことができます。
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●【フラット35】での複数審査
銀行のローンだけでなく、住宅金融支援機構が扱う全期間固定金利の【フラット35】も複数審査が可能です。
【フラット35】は住宅金融支援機構が定める基準を満たした物件に対し、提携している民間の金融機関が融資し、その債権を機構に譲渡する仕組みなどのローンです。多くの金融機関が扱っていますが、金融機関ごとに金利や手数料、返済力の審査の基準などが異なります。
銀行ローンと【フラット35】の比較だけでなく、【フラット35】の中でも複数審査を行い、手数料や金利の条件を比べてから選ぶことができます。
もし【フラット35】を申し込んでも利用しない場合は、金銭消費貸借契約書(ローンの契約書)を結ぶ前に辞退の手続きを行うことが必要です。
●本審査での複数審査もできる
また、仮審査だけでなく本審査も複数の金融機関に審査を出すことは可能です。金銭消費貸借契約書を結ばなければローンは融資されず、返済も発生しません。
しかし、個人信用情報照会機関に仮審査を申し込んだ履歴は残ります。多数の金融機関に一度に本審査の申し込みを行うことは、本当にその金融機関で借りる意思があるかどうかわからない客として、今後の審査上不利になる可能性もあります。
準備する書類も仮審査以上にたくさんあり、申し込む人も審査をする側も多くの手間がかかります。仮審査でしっかりとローンの条件を比較して、本審査はできれば融資を希望する金融機関に出すようにしましょう。